十七話【蛮族たる所以】

深夜、迷彩のポンチョを着た惣一郎とスワロが、蛮族の棲家に近付く。


棲家は森の岩山に出来た洞窟であった。


火を焚き、3匹のオークが肉を焼きながら見張りをしていた。


辺りには奪い集めたが要らない物だったのだろう、荷物が散乱していた。


近付くスワロが息を呑む。


焼いていた肉に白い指が見えたからだ。


音も無く苦無で頭を撃ち抜かれ、焚き火に頭を突っ込み倒れるオーク。


そのまま洞窟へと入って行く惣一郎。


スワロも覚悟を決める。




オークでは屈む広さの入り口を入ると、中は広く、先の尖った木でバリケードが出来ていた。


洞窟の中ではポンチョは意味を成さないだろうと、脱ぎ始める惣一郎。


懐中電灯を取り出して視界を確保すると、惣一郎はサーチを飛ばす。


結構な数がいた。


洞窟は広いし、他にも出口があった。


「スワロ、奥にも出入り口があるみたいだ。逃すと面倒だし、ここを塞いで向こうから攻めよう。二手に別れられないしな!」


「ああ、了解だ主人よ」


するとスワロが杖構え、洞窟の天井を光剣で破壊し始める!


惣一郎は洞窟を飛び出し、離れたもう一つの出入り口へと向かう!




瞬間移動で反対側の離れた出入り口に着くと、見張りのオークを瞬殺する惣一郎。


ゴゴゴゴゴーっと、崩れる音が遠くで聞こえると、首の紋様が魔法陣を描き、スワロが強制転移し現れる。


「向こうは塞いだぞ」


「じゃ、行くか」


このまま洞窟の中に火をつけ、燻り出す事も出来たが、惣一郎のサーチに、オーク以外の反応が見えた為、歩きながら倒して行くしか無かった。


捕らえられた被害者だろうか……


入口が崩れた音に、中は蜂の巣をつついた騒ぎだ。


外に出ようと向かい来るオークを、スワロの光剣が次々と刺し倒して行く。


狭い洞窟でスワロの光剣は、針の様な細い物だった。


無駄なく頭部に一本づつ刺さって行く光剣。


オークなどスワロの敵では無かった。


惣一郎も一応盾を2枚出し、前に浮かせた状態でスワロの後をついて行く。


坂を下る洞窟が徐々に広くなって行く。


惣一郎が持つLEDの懐中電灯は、先を明るく広範囲に照らし、現れるオークの目を潰して行く。


叫び眼を塞ぐオークに、次々と光剣が刺さり倒れて行く。


ただの懐中電灯もここでは、強力な武器になっていた。


大きな広間に着くと、壁に掘られた穴から次々とオークが出てくる。


やっと敵襲に気づいたのだろう。


武器を持っていたが、現れた途端に目を押さえ、頭に光る針が刺さって行く。


明かりを抑える惣一郎。


「あの穴にオーク以外がいる。攫われた人かも知れない」


杖を振り回し倒して行くスワロが「了解した!」っと答える。


その穴から出てきた一際大きなオーク。


王だろうオークは裸だった。


いきり立つナニを隠しもせず、立てかけてあった剣を握るオークの王。


惣一郎の顔色が変わる。


スワロも……


剣を掴んだ肘に鉄球が食い込み、鈍い音を立てる。


ヨダレを撒き散らし叫ぶ王に、次々と鉄球が食い込み、離れてはまた勢い良く食い込む。


空気が漏れる音しか出さなくなった王が、どんどん小さくうずくまり、地面に頭を抱えたまま丸くなる。


血を吐き、緑色の巨体は歪に色と形を変えて行く。


周りに居たオークはもう、一匹も立っていない。


ピク、ピクっと動く肉の塊に、光剣が深く刺さると、スワロが穴に走り出す。


「行くな!」


惣一郎の声が洞窟に響くと、スワロが目を見開き穴の入り口で立ち竦む……


惣一郎はスワロの顔を「見るな」っと抱え込み、瞬間移動を繰り返し、洞窟を出る。


生存者だろう生き残りにまだ微かに息はあった。


あったが……


外に出た惣一郎はツリーハウスを出し、スワロを中に入れる。


「ドリー、ミネア! スワロを頼む。俺は…… 埋葬してくる……」


返事を待たず、洞窟に戻って行く惣一郎。


戻った時には洞窟に、生きてる者はいなかった。


惣一郎はクリーンを何度も何度もかけ、3人の遺体を収納して洞窟を出た……






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