第29話 ハク
町からとても離れた場所まで来た。ハクはとても早く移動ができる、しがみついていないと振り落とされてしまいそうなぐらいだ。
「ハク疲れいないか?」
「クン!」
まだまだ余裕と言わんばかりにハクは返事をした。
そういえばコンがお弁当を持たせてくれたな、何が入っているか開けてみよう。
「ハク止まってくれ、ご飯にしよう。」
ハクから降りて近くの岩に座った。お弁当の蓋をあけると綺麗に並んだおいなりさんがびっしりと入っていた。さっき旅に出たばかりなのに、このおいなりさんを見ると少しホームシックになりそうになった。
一つ手にもってみた。すごく綺麗に作られているな、コン最初は全然作れなかったのに知らない間にこれも練習していたんだろうな。帰って抱きしめたい気持ちになった。いかんいか。こんな幸せを守るためにぼくは旅に出たんだった。
一口食べるとそれは、普段ぼくが作る甘めでゴマが入っているおいなりさんだった。ああ、いつの間にか味を盗まれていたんだな。
「ハクもおいなりさん食べる?」
「クン!!」
今日一番嬉しそうな顔をしている気がする。勢いよくたべてお満悦そうな顔をしている。
ぼくは有ることが急に気になってしまった。しばらく人里を離れた場所を旅するが、その間の食事はどうしよう。ぼくとしたことが失念していた。食べ物のことを考えていなかった、このおいなりさんが最後の食事になるかもしれない。
「ハクすまない、君の主は食事の事を忘れる愚か者だ。」
冗談半分でハクにそういうとハクが少し考えて、どこかに走って行ってしまった。
「ハクどこに行くんだ!!」
食事の事を忘れるような愚かな主の元にはいられないということなのだろうか。そんなことを考えているとハクは口に何かくわえてすぐに戻ってきた。
口にはウサギ型の魔獣をくわえていた。その魔獣をぼくの前にそっとおいて、はくは頬ずりをしてきた。その後にハクの顔をみるとこれで大丈夫でしょ?というような表情をしていた。
そうか、魔獣を食べればいいのか!
早速焼いてみた。
その味は・・・うまい!
生きていける!
ありがとうハク。
ハクは賢くて、ぼくを励ましてくれるような行動をすることがある。
ウサギ型の魔獣を食べた後に、ちかくにキノコ型の魔獣がいたのでついでに食べてやろうと思い倒した。料理をしようとするとハクが邪魔をしてくる。
「ハク大人しくしてて。」
ハクが邪魔をしてきた理由がすぐに分かった。キノコを口に入れた瞬間に激しいしびれを感じた。
「やばい。」
すぐに吐き出した。
ハクの方をみると、だから言ったのに。と言いたげな表情をしている。
「すまない、ハクの忠告をきくべきだった。」
そう伝えるとハクは頬ずりをしてくれた。
ドンマイ。と言われた気がした。
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