ツキside ①
ツキside ①
夕食を食べ終わったあと、私は女狐……リーファと共に用意された部屋へと向かいました。
ベルフォードの実家は広く作られている。とは言えども、流石に四人に個室を用意するのは無理でした。
『話し合い』の結果。
ベルフォードとミルクで一部屋。
私とリーファで一部屋。
そういう割り振りになりました。
まぁ、今夜だけはベルフォードをミルクに貸し出す。
と言う話になっていたので、部屋割りに関しては文句がありません。
私が納得行かなかったのは……
「何故ベルフォードとお風呂を共に出来ないんですか!!私は納得行きません!!」
「まぁ、仕方ないわよね。流石に四人で入れる広さでは無かったし。二人で入るってなると何があるかわからないわよ?」
私の言葉にリーファがそう答えました。
まぁ、そうですね。ベルフォードからは『初めて』を全ていただける契約になっています。
ですが彼も男性です。
何かの拍子に理性が本能に負けてしまうことも……あるかもしれません。
「……まぁ、そうですね。リーファの言うことには一理ありますね」
私がそう言ったあと、リーファは用意された椅子に座ってから私に対して言いました。
「私としては貴女がミルクを嫁として認めたことの方が意外だったわよ。ハーレムは認めない!!って言ってたのにどういう心境の変化かしら?」
「別に、私はベルフォードのハーレムを認めた訳ではありません。ただ、ミルクに関して言えば『私と似ている部分があるから』ですよ」
私はリーファにそう言葉を返したあと、彼女の正面に座りました。
「私はこの姿になる前までは、刀でしたからね。どれだけベルフォードに愛を向けても報われることはありませんでした。リーファにどれほど憎しみを向けてきたか……」
「まぁそうでしょうね。だからこそ驚いたわよ」
「ミルクも同じだったと思いますよ。ベルフォードに対して『狂おしい程に愛情を持っていても、相手からは返ってこない』一方通行の愛情を持ち続けることは苦痛でもあるんです。だからこそ、彼女にはその苦痛に耐えてきた時間の分だけは報われて欲しいと思っているんですよ」
二十年は短く無いです。
私はリーファにそう言いました。
「なるほどね。貴女の気持ちは理解したわ。案外『人間味』のある女だったのね」
「それに、ベルフォードはとても素敵な男性です。たくさんの異性から好意を寄せられるのは当然ですからね。まぁ私が彼の『一番』であるならば二番三番が増えても構わないとは思ってますよ。『二番目』のリーファさん?」
「ふん。二番目は貴女の方よ、ツキ」
私のその言葉に、リーファは不機嫌そうにそう答えました。
まぁ、ベルフォードの実質的な『初めて』を奪われているのはとても悔しいです。
やはり彼女は私の最大の敵です。
ですが、彼女に『感謝』している部分もあります。
リーファが居なければベルフォードが死んでいた場面も少なくありません。
彼がこうして五体満足でいられるのは彼女の力のおかげでもありますからね。
その一点だけ!!は認めてあげても良いと思っています。
さて、そろそろお風呂に入る時間ですかね。
時計を見ると、ベルフォードがお風呂に入ってから三十分程が経っていました。
一番風呂はベルフォードに譲りました。
その後は自由にして良い。と言われています。
刀の時にはわかりませんでしたが、お湯に浸かると気持ちが良いんですよね。
そんなことを思っていると、リーファが私に向かって言ってきました。
「それじゃあツキ。一緒にお風呂に入るわよ」
「は?」
何で私が貴女と一緒にお風呂に入らないといけないんですか?
「今日はたくさん汗もかいたし、大型のサーペントのぬめぬめもあるでしょ?刀の状態ではベルにお手入れしてもらったでしょうけど、人の身体では手の届かないところもあるでしょ?私が綺麗にしてあげるわよ」
「なるほど。そうですか。たまにはリーファも良いことを言いますね」
「たまにはって何よ。たまにはって……」
そんなやり取りをしてから、私とリーファはお風呂場へと向かうことにしました。
……そう。私は気が付かなかったのです。
その時のリーファの目が『怪しく』光っていることを……
『お風呂場』
『や、辞め下さい!!なんでそんな所を!!』
『ダメよツキ。しっかり洗わないと汚れが落ちないわよ?』
『そこは手が届く場所ですよ!!……ひゃん!!……り、リーファ!!もしかして貴女はそっちの気が……』
『ふふふ……ツキの身体を見た時から思っていたのよ……この娘……良い身体してるわね……って』
『ダメです!!ダメです!!ダメです!!!!私にそういうことをして良いのはベルフォードだけです!!!!』
『ふふふ……可愛いわよ、ツキ』
『ひいいいいい!!!!!!そ、それ以上近寄らないでくださいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!』
も、もう二度とリーファと二人きりでお風呂に入ることはしないです!!
私はそう決意をして、彼女の『魔の手』から逃げながらお風呂を済ませました。
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