第十四話 ~自室へとやって来たリーファと俺は初めてのキスを交わした~
第十四話
コンコンという音が、俺の自室に響いた。
「この気配は……リーファだな」
彼女とツキを居間に残して時計の針が一周した頃だった。
どうやら二人の『妻』の話し合いは終わりを告げたようだった。
「今開けるから待っててくれ」
俺は扉に向けてそう言うと、読みかけの本を机の上に置いてから立ち上がる。
読んでいたのは『えっちな本』なんかでは無い。
著名な剣豪が書いている指南書だ。
扉の前まで行き、掛けていた鍵を開けると俺が扉を開けるよりも早くに外から開かれた。
「ど、どうしたんだよリーファ。ずいぶんと……っ!!??」
扉を開け放ち、俺の部屋の中へとやって来たリーファは、やや……いや、とても乱暴に俺と唇を重ね合わせた。
いや……ちょっと待ってくれ!!
どうしてこんな事態になってるのか理解が出来ない!!
『ベルフォードの一つ目の『初めて』は貰いました』
『これでリーファとキスをしても構いませんよ?私とした行為でしたら彼女としても構いませんから』
そんな話はツキからされていた。
だからこの行為は『ツキ公認』と言える。
「……ん……好きよ、ベル」
「り、リーファ……」
俺の身体を強く抱き締めながら、彼女は自分の舌を俺の中へと入れてきた。
こ、ここまではツキとはしてないんだけどな……
だが、受け入れないのは失礼だと思うし、俺も彼女を拒みたくは無い。
キス……とは言っても身体の中に互の一部分を入れる行為は、最早性行為と変わらないかもしれない……
そんなことを思いながら、リーファとのキスをした。
「……あの女とは色々と話をしてきたわ」
「そ、そうか……」
彼女とのキスを終えると、俺とリーファとの間で唾液が糸を引いた。こ、こんなのを見せられて……俺の本能の部分がとても刺激されて大変なことになっている。
正直な話。こんな姿はあまり見られたくは無いと思ってる……
「とりあえず、貴方が彼女と交した『契約』についても理解したわ。その上で言わせてもらうわね」
「あ、あぁ……」
「別に構わないわよ。ツキとした行為を私とする。そんな順番でね」
「い、良いのか……?」
二番目の女。とかいう言葉をツキは使っていた。
そんな扱いをリーファが受け入れるとは到底思えなかったからだ。
「良いか悪いかで言えば不服よ。でもね貴方から私を求めてくれるのなら話は別よ。その話はツキともしてきたわ」
「そ、そうなのか……」
俺がそう言葉を返すと、リーファは俺の身体を抱きしめてきた。
彼女の女性らしい柔らかい部分が触れて、理性が限界に近くなってきているのを感じる。
「ほら、そこにベッドがあるわね。私はしても構わないわよ?」
リーファはそう言うと、俺の事を蠱惑的な視線で見やる。
『魅了』なんて魔法があるが、そんなものを使わなくても今の彼女はとても魅力的な存在だった。
階下にツキが居なければ、今この場で彼女と一線を超えていただろう。
だが、俺はあと一歩を踏み留まってリーファの身体を自分から離した。
「あら?女に恥をかかせるつもりかしら、ベル」
「すまない。リーファのことも凄く大事だし、この場で君を抱きたい欲求に負けそうになる。でも俺にとっては同じくらいツキのことも大切なんだ」
だからこの場で彼女との『契約』を反故にすることは出来ない。
俺がそんな意志を持って彼女にそう話しをすると、リーファはわかっていたかのような感じで言葉を返してきた。
「まぁ、そう言われるとは思ってたわよ。何だかんだ言って貴方はツキのことも大切に思ってるのは知ってるわよ」
「そう言ってくれると助かるよ」
俺が少しだけ安堵の気持ちを持ちながらそう言うと、リーファはイタズラっぽく微笑みながら俺に言ってきた。
「でもね、ベル。ツキとした行為ならしても構わないということよ。ほら貴方の方から私にキスをしなさい」
「ははは……そう来るか……」
ツンと唇を差し出しながら、リーファは目を閉じる。
全く。ほんの一週間前はグリフォン討伐の為に森の中を駆けずり回っていたというのに、冒険者を引退した途端にこんなことになるなんてな。
俺はリーファの身体を抱き寄せて、彼女の耳元で囁く。
「好きだよ、リーファ。君を幸せにするという気持ちは微塵も変わってない。こんな俺だけど見捨てないでくれると嬉しい」
「……ばかね。私が貴方に愛想を尽かすときを教えてあげるわ」
貴方がツキのことも幸せにすることを諦めた時よ。
リーファ。本当に君は『良い女』だよ。
「わかった。君だけじゃなくてツキのこともしっかりも幸せにするからな」
「ふふふ。期待してるわよ、ベル」
そして、俺とリーファは自室で二回目のキスを交わした。
本当に、こんな美女二人を妻に迎え入れることが出来るなんてな。彼女達から愛想を尽かされないように精進しないと。
まずは西の大陸に向かってリーファのための指輪を手に入れよう。
ドラゴンの
実力が落ちてないことを示す必要があるけど、今の自分なら大丈夫だろう。
そんなことを考えながら、俺はリーファの身体を強く抱き締めた。
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