第十三話 ~二人の妻に対して全身全霊、全生涯を賭けて幸せにする。と決意を話した~
第十三話
「それで、詳しく話を聞かせてもらうわよベル」
「まぁ、リーファにも話す予定だったからな」
家の中にリーファを招き入れたあと、俺と彼女は居間へと向かった。
ツキは台所に向かい、お茶の準備をしていた。
『ふふふ。私の良妻スキルをお見せするチャンスですからね』
そんなことを言っていたので、リーファの機嫌がものすごいことになってるのは想像に難しくないな……
「お待たせしました。本国特産の紅茶がありましたので、そちらを入れてきました」
「ありがとう、ツキ」
「…………こんなことも出来るのね」
ツキはテーブルの上に三人分の紅茶を置いたあと、椅子に座った。
「では、ベルフォード。リーフレットさんに私の事を紹介して貰えますか?貴方の『妻』として」
ミシッ……
という音が部屋に響く。
リーファが握るカップの取っ手が軋んでいた……
そう簡単に壊れないように合成樹脂を使っているんだけどな……今にも壊れそうな気配がした……
「その……最初から説明すると、今のツキは俺の愛刀の月光が人になったんだよ」
「……なるほどね。貴方の刀に意思があるのは知っていたわ。それに、エルフの里でも同じようなことが過去にあったと文献で読んだことがあるわ。まさか目の当たりにするとは思いもしなかったわね」
どうやら俺が知らなかっただけで、隣国だけでなくエルフの里でも同じようなことがあったようだ。
世界的に見ればそこまで稀有な例では無いのかもしれないな。
「その、ツキとは『
「……なんでそんな馬鹿な約束をしたのよ」
「馬鹿な約束とは何ですか!!私とベルフォードが交わしたとても尊い約束ですよ!!」
リーファの言葉にツキが目を吊り上げて怒りを露にしていた。
「それで『自称妻』のツキさん?」
「自称とはなんですか!!撤回を求めます!!」
「まだ役場に婚姻届を出てないんだから、ベルとは結婚出来てないわよ?それに国籍だってまだよね?それなら自称妻ってのは間違ってないわよ」
「むむむ……やはり貴女は私の『敵』です……」
テーブルを挟んで睨み合ってる美女二人。
この二人が俺の『妻』になる人なんだよな……
どう考えても円満な結婚生活が見えない……
「そ、その……とりあえずツキの国籍に関しては、リーベルト国王から手筈を整えて貰えることになった。だから頃合を見て婚姻届を出しに役場には行こうとは思ってる」
「ベルフォード!!ありがとうございます」
歓喜あまって涙ぐむツキ。そんな彼女に対してリーファは不機嫌そうにテーブルを指で叩いていた。
「それで、ベル。私のことはどうするつもりよ」
「リーファとも結婚するつもりだよ。本当なら色々と準備をした上で俺から君に婚姻を申し込もうと思ってた」
「……そ、そうなのね。キチンと考えてくれてたのね」
少しだけ頬を染めながら視線を逸らすリーファに、俺は言葉を続ける。
「西の大陸に龍の
「冒険者を引退して時間だけはある男だからな。ひと月ほどかけて採取と指輪の精製を済ませてこようと思ってたんだよな」
「まぁ、そんなことを考えてたらツキがこうして人の姿になって俺の前に現れたわけだ」
俺はそこまで言ったあと、リーファとツキに視線を送り頭を下げる。
「ハーレムを目指してる。とかそんなつもりは微塵も無い。でも俺にとってはリーファもツキもとても大切な存在だ。どちらかを手放すとかは考えたくない」
「……ベルフォード」
「……ベル」
「俺の全身全霊。全生涯を賭けて二人を幸せにする!!だからリーファとツキ、俺と結婚してくれないか!!」
俺が全身全霊を込めてそう言うと、まずはリーファが答えてくれた。
「まぁ最初はすごく驚いたけど、私は構わないわよ。私の望みはベルの隣を歩くこと。そこに『刀』が居ても構わないわよ」
「……リーファ。その、ありがとう」
ツキのことを『刀』と呼んでるあたり、棘を感じるけど許してくれるなら今はそれで構わない。
「私も今日の朝ベルフォードに話をしましたからね。『契約』を遵守して頂けるのでしたら『女狐』とも結婚して構わないですよ」
「あ、ありがとう。ツキ」
ツキからの了承も再度貰えてよかった。
リーファ同様に、相手の呼び名がかなり不穏だけど、これからだろう……
とりあえず。この場は落ち着けることが出来て本当に良かった……
そう思っていると、リーファが俺に向かって一つの提案をしてきた。
「ねぇ、ベル。悪いけど少し外してくれないかしら?」
「……え?な、何かあるのか?」
俺がそう言葉を返すと、リーファは少しだけ笑みを浮かべながら返事をする。
「少しこのツキさんとお話をしたいのよ。今後のことも含めてね」
「ふふふ。良いですよ、リーフレットさん。私としても貴女と話をすることは歓迎です。ベルフォードを外してと言うのも私としては異論もありません」
「……そ、そうか。じゃあ邪魔者は自室で本でも読んでるよ」
二人の女性から追い出され、俺は居間を後にして自室へと向かうことにした。
「話が終わったら呼びに行くわ」
「私は話が終わったら夕飯の支度をしますね」
「わ、わかった。じゃあ終わったら呼んでくれ」
こうして俺は、二人の妻を居間に残して自室へと向かった。
「ぜ、絶対に穏便には済まない気がする……」
自室に戻った俺は、読みかけだった本を手にしながら戦々恐々とした思いに身体を震わせた。
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