第5話 お風呂入るね

「そっか……モデルだもんね」

「ごめんね。コータと一緒に食べられなくて」


アイちゃんはファッション誌のモデルだ。

有名ギャル系ファッション誌「ロイヤル・バニー」の専属モデル。

何度も雑誌の表紙を飾っていて、Twitterでトレンドになったこともあるし、アイちゃんを真似するJKたちがInstagramにたくさんいる。


「大変なんだな。モデルって」

「たまにちょっと辛いけど、もっともっと頑張らないといけないから」


昔のアイちゃんは、泣き虫だった。 

ちょっと転んだだけで泣いていた。

俺と神楽で、よくアイちゃんを慰めてたな……

それを考えると、アイちゃんはすごく変わった。


「だからコータ、たくさん食べて。コータが食べてるところ見るの大好きなの」

「ありがとな」


◇◇◇


もう午後8時だ。

久しぶりにアイちゃんと再会できたから、思い出話をたくさんした。

懐かしい幼馴染と話せて、俺は楽しかった。


「もうこんな時間だね」

「うん。コータ」

「そろそろ帰らないと、おばさんたちが心配するんじゃない?送っていくよ」

「コータ。何言ってるの?あたしはコータの妻なんだよ。だからここがあたしの家だよ」


許嫁——アイちゃんは本気なのか……?

あの爺さんが勝手に決めたことだ。

だけど、本当にそれでいいのか?


「コータの妻だから、お風呂いただくね」

「お、お風呂⁉︎」


突然のお風呂に入る宣言に、俺は驚く。


「……ダメかな?」


アイちゃんは上目遣いで、かわいくおねだりしてくる。

うっ……かわいすぎる。


「わかったよ……でもここの風呂は狭いし汚いぞ」

「いいよ♡コータの使ってたお風呂なら幸せ♡」

「おいおい……」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る