追跡

山光 海闇

第1話 自堕落な男


    【自堕落な男】


… ドラッグをキメてやるセックスは格別だ…特に女はキメセクを1度覚えると止められないらしい、この女も完全にハマっている …



あぁんっ


アァ~~!! いい~ !



… 彼女は上京したての頃に興味本意で友達と僕の働くホストグラブにやって来た…意外と真面目な子ほど酒が入るとハジけてしまうのだろう…

閉店後に流れでホテルに行って関係を持った …


… 薬物に対して最初はMさえ拒んでいたが1度覚えると快楽だけで害が無いと分かり警戒心が解ける、結果ドラッグに寛容になる…

 Mでもセックスは通常より五感が研ぎ澄まされるぶん興奮も倍増する。快楽が好きな人間と言う生き物は、その結果ドラッグに興味を示す様になっていく …


「何してるの?」


「Sを炙って吸ってるんだよ」


ドラッグに警戒心を無くした女の前でわざとSを吸って見せる…案の定、彼女は興味を示した。


「それも体に害が無いの?」


「どうかなぁ…人によるし、Mと比べたらヤバいよ」


「もしかしてS?」


「そう…まぁ常用しなければ特に問題ないけどね」


… 嘘をついた…Sは間違い無く人体に悪影響があるドラッグだ …


「あたしも、ちょっとだけやろうかな…」


「駄目だよ、これは女がやるとセックスに依存するから止められなくなるよ」


「…そうなんだ」


「それだけ気持ちいいんだけどね」


「…なんか自分だけズルい」


… 完全におねだりの顔になっている…狙い通りだ …



「わかったよ… 吸っても良いけど、絶対に打たないと約束出来る?」



… 絶対に打たないと言う約束で、Sをやらせた…

 Sは注射でやるイメージがあるが吸引でやるのがベストだ。    

 注射で打つと本当に廃人になるまで止められない可能性が高い、だから吸引式しかやらせない、流石に廃人になられたら寝覚めが悪い。もちろん僕も吸引専門だ…でもキメセクの効き目が抜群なのは変わらない …



… ドラッグで僕の虜にした女はこれで3人…正確にはクスリの虜だけど女として、そうは思いたくないのだろう皆僕を愛してると思っている…



… だがこんなヒモ生活いつまで続けられるか分からない、早くまともに働かないと駄目だと思うが出来る事なら楽して金が欲しい …



… そこで僕が何時もクスリを買っているドラッグマンと言うフィリピン人に売買の仕事をさせてくれと頼んだところ、けつ持ちは出来ないがディーラーに話してやるから個人販売してはどうかと言われた …


… ドラッグマンは他人と組まない個人のプッシャーらしい…人数の分だけ捕まるリスクが増えるから一人が良いと言う事だが、本当は僕が信用出来ないだけかも知れない …


… 考えたら当然だ。自分に置き換えたら分かる、僕からクスリを買ってる客に売買の仕事を一緒にやらせてくれと言われたら僕はきっと断る…

クスリで遊ぶ奴など信用出来なくて当然だ …



… 彼が言うには直接ディーラーから買うのはまとめ買いで1000万から下ろせると言う事だ…もちろんそんな金は無い …


「そうか…幾らなら出せる?」


… ドラッグマンの幾らなら出せるかと言う問い掛けに僕の警戒心が恐怖を感じた…探られてる気がしたからだ… 相手は外人でプッシャー、元締めはきっとヤバい奴らに決まってる。

するとドラッグマンは僕が警戒してるのに気付いたのか客層の話をしてきた …


「…まぁいいか、売りたいと言う事は捌けるルートがあるのか?」


「普段はホストやってるから、客の風俗嬢やホスト仲間でそれなりに捌けると…」


「なるほど、それも良いが…知り合いに捌くのはリスクが高い…もし…俺の言うやり方で捌くなら少額でも売ってやるよ」


… ドラッグマンは日本語が上手い…留学生として日本に来た彼は日本語学校に通い8年になると言っていた…だから日本人の小さなリアクションにも日本人の様に気が付くのだろう …


「少額…」


「そうだ」


… 少額で騙したりする事は無いはずだ、小銭で大事な顧客を潰したら損するのは自分だ…そう思った僕は安心して彼の言うやり方を訊ねた …


「でも…そのやり方ってどんな?僕に出来るかどうか…」


「飛ばし用のスマホでネット販売、客とは顔を合わせないで話もしないやり方だ…警戒心のある君なら出来る」


… 性格を見透かされた感はあるが僕の捌き方よりその方が安全そうだ…


… それにドラッグは短期間でデカく稼げる、リスクは高いがこれを乗りきって稼いでやる…そう決めた僕は500万で彼と取引する事にした …





… 3人の女に金を作らせた…たぶん全て借金だろう…いや、あの女は違うか…だが僕には借用書も無いし無関係な話だ、その金がなんだろうと大した重みも感じないで受け取った…


… 女達にはそれぞれ200万作ってくれと頼んだ…みんな一応に何に使うか問い詰めて来たがクスリとセックスに酔ってる女達は僕の奴隷だ…

理由は、言えないけど必要なんだで全員押しきった。惚れた弱味だろう哀れなもんだ結局は言いなりになるだけだった…

そんな分けアリの金を持って僕は約束の時間に本牧埠頭にやって来た …



… ドラマや映画の様に海を眺めて見た…ハッハハァ

笑いが込み上げた麻薬の取引をまさか本当にこんな所でやるとは、確かに人目に付かないけどこんな場所でやる意味がいまいち分からない…犯罪者にも雰囲気は大事なのかもね …




… しばらくするとドラッグマンがやって来た、大量のSが入ったバッグを持って。

 ドラッグマンはバッグを上げて見せる…持って来たぞと言う合図だろう僕もそれに合わせて金を入れた紙袋を上げて見せた …



「今後の事もあるから取引の手順を行うよ」


「分かりました」


「まず金の確認を相手にさせる、そして物の確認をする」


「物の確認…」


「そうだよ。ちゃんとやらないとデカイ取引の時に騙されるよ…」


「…でも相手の素性が分かってるのに、そんな事するかな…」


「そんな奴等の集まりなんだ…だから相手の言う通りに動いたら駄目なんだ 」


闇の商売は相手を信用してはいけない仕事だ…


「悪いな…要するにお前には無理だ…」


ドラッグマンはそう言って男にナイフを突き刺した。



“ドスッ”


「……!? なぁ…なんで…」


予想もしてない出来事に困惑する男…


「大人しく客でいればよかったのに、俺は用心深いんだ…お前なんかと仕事が出来るわけ無いだろ…」


「それだ…けで…ころっ?」


… うそっ…信用出来ないから殺す?何でよ…なんで殺す…取り引きしなければ良いだけだろ…殺すなんてリスクを…なぜ……


「クスリに酔い金に目が眩んだ奴はダメだ…」



あまちゃんな日本人が売人なんて事すればすぐに捕まる、警察に調べられてドラッグマンまで警察の手が伸びるかも知れない…なら金を頂いて死んでもらうと言う事だ。


… やだぁ…死にたくない、なんで僕がこんな目に…



「内臓まで刺してるからもうすぐ死ぬよ……」



男が倒れると辺りを気にする素振りもなくそのまま海に捨てた、ナイフにも男にもドラッグマンの指紋は当然ついて無い、それどころか男の帰り血すら着いてないナイフを刺したままだからだ…

 男の身元はすぐに分かるだろう。だがドラッグマンには、警察が自分にたどり着けないと言う確信があるからゴミの様に男を捨てた。




この非情な男、ドラッグマンは日本語学校の留学生だったが、今は学校で日本語の教師をしている。



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