第4話 道のり
翌朝、リーファは名残惜しくもフレアに別れを告げて、馬車に乗って帰路についた。
リーファの住むバッタル村はアシナ村から半日以上かかる。楽しいのは一瞬で、揺れる馬車は永遠だった。
田舎道であまり整備はされていないため、凸凹な地面が続いている。
馬車の揺れに気分が悪くなったリーファは、目を閉じて横たわる。
「水飲むか?」
「ありがとう……」
父親に差し出された水筒に口をつけると、リーファは少し落ち着いた。
少女は馬の足音を聞きながら、物思いにふける。
楽しかった祭りのこと、フレアと語り明かした夜のこと、村に帰ってからのこと、将来のこと……。
リーファは目を閉じたまま、父親に問いかける。
「帰ったらまた畑仕事?」
「そうだな、天候も崩れなかったしよかった、家を空けてる間は隣の爺さんに見ててもらったから、礼を言わんとな」
「そっか…」
リーファはゴロンと寝返りをうつ。家に着いたら水浴びして汚れを落として、畑に出て泥だらけになって、また水浴びして…。
アシナ村での祭りとは打って変わって、なんの変哲もない日常がまた始まる。
この生活になんの不満もなかったが、リーファはつい、ため息をついてしまった。
刺激的な経験のあとの日常は、味気なさを感じることがある。
リーファは、大好きだったはずの地元に、少しだけ帰りたくなくなった。
田舎道とはいえ、領主により騎士が派遣されている地域であるため、盗賊に襲われることはなかった。また天候もよく、予定外に足を止めることもなかった。
長い道程では何も起こらず、リーファと父親は無事にバッタル村に辿り着いたのだった。
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