第2話 フレアとリーファ
リーファが住んでるバッタル村は、アシナ村から馬で1日かかる。
父親に連れられてやってきた彼女は、この日を楽しみにしていた。
「ふふっフレアと会うのも一年振りだね、背大きくなったねぇ」
リーファは、人混みを先行して歩いてくれてるフレアの頭を撫でた。
「んー?そうかぁ?そういうリーファはあんま変わんねーな」
ふたりは年に一度、この夏至の祭りに毎年会っていた。互いに10歳の同い年のため、会うたびに身長の話になるのは恒例だった。
リーファはぷぅと頬を膨らませる。
「いつか追い越すもんっバッタル村のごはんたくさん食べれば大きくなるってパパも言ってた!」
「ふぅん、それなら私だって運動毎日してるから健康に育つぜ?村の冒険者のひとにたまに剣教わってるんだ」
フレアは振り返って、か細い腕を折り曲げて小さなちからこぶを作ってみせた。
そんなふうに仲良く張り合っていたら、飴屋の屋台についた。
子供たちの列ができており、ふたりはそこに並ぶ。
リーファはその列を感心して眺める。
「子ども多いねぇ」
リーファの住むバッタル村は小さな農村であり、人口が少ない。特に子どもはそれほど多くなかった。
対してアシナ村は、人の集まる村であるため子どもが多い。さらに今日は大きな祭りなので、周辺地域からも子どもが集まっていた。
フレアは鼻高々に問うた。
「ああ、人で溢れてるのも楽しいだろ?」
「うんっ」
リーファはそれに笑顔で答える。
ほどなくして列が進み、銅貨数枚と飴を交換してもらう。
「はいよっお二人さん、お祭り楽しんでね」
「ありがとうおっちゃん!」
フレアは屋台の男に礼を言って飴を受け取った。
「フレア、あそこで食べようよ」
リーファは広場の端にある木の方を指した。
木の下で、ふたりはぺろぺろと交互に一本の飴を舐める。屋台の飴はこれでもかと言うほど砂糖が使われていて、甘すぎたが、それがどこかくせになる味だった。
透明な飴に、地に沈もうとする夕陽の光が届き、煌めく。
あたりは賑やかでそこらかしこから幸せそうな声が響いていた。
フレアはぽつりとつぶやく。
「ずっとこんな楽しかったらいいな」
リーファは目を丸くする。フレアがこんな感傷的なことを言うのをはじめて聞いたからだ。
しかし、いまこの瞬間に漂う雰囲気の心地よさは何事にも変えがたく、リーファも同感だったので、からかうことなく、頷いた。
「うんっそうだね…!大人になってもずっと、また……」
ジリジリと虫の鳴き声が頭上から聞こえる。
やがて夕焼けの空は、静かに薄暗くなっていった
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