第48話 俺たちのギルド、大人気になる(前編)

「150万……再生?

 ウソだろ?」


「ふおお、すっごい!」


 動画投稿サイトのマイページを見た俺は唖然とする。


 ダンジョン攻略の様子を配信できないか?


 俺の思い付きを元にフェリナにプロモーションビデオを作ってもらい、動画投稿サイトにアップしたのだが……。


 わずか数日で再生数は150万を超え、有料会員である”サポーター”も1000人以上集まっている。

 寄せられたコメントも好意的なモノばかりだ。


「えっとその、どうやったんだ?」


 いくら今までにないダンジョンバスター配信ものとはいえ、俺たちのチャンネルは立ちあげたばかり。

 いきなりこんなに再生されるなんて、信じられない。


「ふふっ、ちょ~っと昔のつてを使いまして♪」


 にっこりと微笑むフェリナ。


「大学時代の友人に有名アイドルがいるんですけど。

 ほらあの……」


 フェリナから聞かされた名前は、俺でも知っている超有名芸能人。

 SNSのフォロワー数千万人を誇るインフルエンサーだ。


「わたし、サイン欲しい!!」


「ええ、いいわよ。

 あとは世界的IT企業でエンジニアをしている元ルームメイトに頼んで……」


 ウキウキと色んな名前を上げるフェリナ。

 彼女の通っていた大学は、セレブの子女御用達の全寮制女子校……色々と、あれやこれやがあったのだろう。

 フェリナは彼女の持つコネを最大限に活用してくれたようだ。


「そしてですね、悪意のあるコメントはフェリナ謹製のAIで……」


『ミアたんのお肌に俺のXXXを~』


 沢山の人間が見ると当然このような下劣なコメントや悪意のある荒らしも出現するわけだが……。


『オソウジシマショウ』


 ピコピコと、エルフ少女型のマスコットがアプリ内を巡回している。


 ぴっ


 下劣なコメントは一瞬で削除された。


「この子は、アクセス禁止とサイバー警察への通報もセットで行ってくれます♪」


「うはぁ」


 やべぇこのギルドマスター怖い。


 今朝も燃えるゴミの日にビンカンを出そうとしてリーサに正座されられていた子と同一人物には見えない。


「やるのう、フェリナよ!

 さしずめ電脳魔導士サイバーウィザードか?」


「うふふ、それほどでも♪」


「……やっぱり、フェリナお姉ちゃんはあんまり怒らせないようにしようね」


「だな」


「さあ、行きましょうか!」


 目指すは手ごろなCランクダンジョン。

 俺たちのギルド、生配信デビューである。



 ***  ***


「俺達の生活を脅かすダンジョンは、このような場所にも出現します」


 俺たちがやってきたのは、海の見える大型温浴施設。

 休日にはたくさんの人たちでにぎわう場所だが、昨日地下にCランクダンジョンが出現し、本日は臨時休館している。


「ええっ!? リーサ温泉楽しみにしてたのにっ! ひどいよぉ!」


 制服姿のリーサが泣きべそを浮かべる。

 もふもふの狐耳も尻尾もぺしゃりと垂れてしまった。


「それだけじゃないぞ?

 ダンジョンを放っておくと、ヤバいモンスターがあふれてくるんだ」


 ズモモモモ


 ゴブゴブゥ!


 黒い煙と共に、ゴブリンたちが地下から湧き出してくる。

 ……これはミアの魔法による演出だが。


「心配するなリーサ!

 こういう時の為に……」


「ダンジョンバスターがいるんだねっ!」


 ざんっ!


 俺は腰に下げたショートソードを抜き放つと、ゴブリンを一刀両断する。


「行くぞリーサ!」


「うんっ!」


 俺たちは温浴施設の地下に降りていき、温泉汲み上げポンプに浮かんでいる青白い魔法陣に触れる。


 ぱあああああっ!


 俺たちの全身が光に包まれ、ダンジョン内に転移する。

 合わせてステータスにスキルポイントをチャージし、冒険着に着替える。


 このシーンはフェリナの映像加工により、魔法少女風の変身シーンになっているはずだ。

 あ、もちろん変身シーンはリーサとミアだけな?


「えへっ☆

 みんなの平和を守る、カッコいいダンジョンバスター、ユウと」


「彼のパートナー、だいまどうしリーサちゃんと!」


「だいまおう、ミアだ」


 可愛い冒険着に着替え終え、ポーズを取るリーサとミア。


 ……魔王様がそのまま魔王って名乗るのはどうなんだろう?

 まあ誰も信用していないだろうが。


『同時接続数5万人を突破……順調ですね!』


「マジかよ」


 フェリナが共有してくれたログを見ると、次々と投げ銭が貰えている。


「リーサちゃんかわいい!」「ミアちゃんって新人ダンバス? 立ち振る舞いがヤバいんだが!」「……あの男性もちょっとカッコいいよね」


 好意的なコメントがどんどん書き込まれる。


「わたしたちは、スキルポイントを使ってモンスターさんをやっつけます。

 ユウ?」


 今日の配信は、ダンジョンバスターの紹介を兼ねている。

 俺はリーサの言葉にステータスを開く。

 スキルポイント獲得倍率など、センシティブな情報は隠している。


 ======

 ■個人情報

 明石 優(アカシ ユウ)

 年齢:25歳 性別:男

 所属:F・アカシアギルド

 ランク:B

 スキルポイント残高:32,200

 称号:ドラゴンスレイヤー

   災害迷宮撃破褒章


 ■ステータス

 HP  :500/500

 MP  :200/200

 攻撃力 :200(+200)

 防御力 :200(+200)

 素早さ :200

 魔力  :50

 運の良さ:50


 ■装備/スキル

 武器:ダマスカスブレード(200×5回)

 防具:ダマスカスメイル(200×5回)

 特殊スキル:ヒールLV4(200×5回)、攻撃強化技15%(200×3回)

      デバフ回復(100×5回)、マジックシールド(100×2回)

 固有装備:増幅の腕輪+

 ======

 ======

 ■個人情報

 アカシ リーサ・レンフィード

 年齢:11歳 性別:女

 所属:明石 優のパートナー

 ランク:H(ダンジョンバスター見習い)


 ■ステータス

 HP  :400/400

 MP  :300/300

 攻撃力 :100(+100)

 防御力 :200(+100)

 素早さ :100

 魔力  :200

 運の良さ:50

 武器:チタントンファー+(100×5回)

   チタンボウガン+(50×10回)

 防具:ファイバーブレザー3+(100×5回)

 特殊スキル:ファイアLV4(100×5回)、ブリザードLV4(100×5回)

      フレア・バースト(400×1回)

 固有装備:増幅の腕輪+

 ======

 ======

 ■個人情報

 アカシ ミア

 年齢:13歳 性別:女

 所属:F・アカシアギルド

 ランク:E

 スキルポイント残高:-

 称号:まおう


 ■ステータス

 HP  :400/400

 MP  :200/200

 攻撃力 :200(+100)

 防御力 :200(+100)

 素早さ :30

 魔力  :200

 運の良さ:50

 武器:ハンドファング+(100×5回)

 防具:ホワイトローブ+(100×5回)

 特殊スキル:ウインドカッターLV4(100×5回)、カーズLV4(100×5回)

      ダークバスター(400×1回)

 固有装備:シルバーオーブ

 ======


「ユウは頼れるパーティのリーダー!

 華麗な剣技でモンスターさんをぶった切ります!」


「ふんっ!」


 リーサの紹介に合わせ、ポーズを取る俺。

 ちょっと気持ちいい。


「リーサとミアちゃんはまほーつかい!

 ”オリジナル魔法”もあるから見逃さないでね☆」


「刮目して見るがよいのじゃ!

 ……飛ぶにゃん?」


 ポーズを取るリーサとミアのシーンになるとコメントが激増する。

 ……ふたりは可愛すぎるから仕方ない。

 お、俺にも女性ファンからの投げ銭があったからな!


「”オリジナルモンスター”の出現が予想される。

 気を引き締めていくぞ!」


「うんっ!」


「心得た!」


 新生F・アカシアギルド。

 渾身のダンジョン攻略配信が始まるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る