第11話 方針
「大変お世話になりました」
深々と頭を下げるアレンにミハイル、クナ、サリアは笑顔で手を振る。
彼の気持ちを無下にすることなく、いつか自分の目標に決着を付けて仲間になってくれることを祈りながら見送った。
「それではまた――――」
そう話すアレンは両手を前に繰り出す。一体彼が何をするのか三人は興味深く見守っていた。そして、
「――――〖ワープ〗」
アレンの体が一瞬で魔素の粒子に包まれて、その場から姿を消した。
「「「……………………」」」
三人は目の前で何が起きたのか全力で脳を動かす。それでも答えが出ることはない。アレンは悲惨な過去を歩いてきたと聞いていた三人の頭には疑問符ばかりが浮かぶ。そして三人が出した結果は、
「「「まあ、アレンくんだし……」」」
三人は〖ワープ〗を
◆
一度奈落に帰って来た。
ロックゴーレムとの戦いで魔素を大半消費してしまって、そのまま狩りに出かけるメリットを感じなかったからだ。
気を失った時間はそれ程長くないようなので、一度ゆっくり休憩しながら
まず目標を一つに設定する。
サリアさんたちの優しさに触れてより仲間になりたい想いは強くなった。でもそれだけではない。僕が奈落からダンジョンに行けるようになってからずっと思い描いていたのは、逃げ回るだけではなくいつか英雄冒険者になれるようにしたい。
その始めとして、アンガルスたちに怯えなくてもいいくらい強くなりたい。
これで目標は決まった。次は目標に向かってどう頑張っていくべきか。
いたずらに狩りを繰り返してレベルを上げながら日々を生き抜くだけでは、目標に辿り着くまで時間がかかる。一番の理由は、向こうだって成長するからだ。僕が知っていた頃のアンガルスと今のアンガルスでは差があると考えるべきだ。となるとここまでの道のりで強くなった分よりも、より強くならないといけない。
そこで僕の才能を予想する。
【make progress】という不思議な文字の才能によって、装着したルーンが成長するようになった。レベル2の時には装着しているルーンを進化させられるようになり、レベル3の時は成長速度が二倍程早くなった。
そこで僕の才能はルーンに関する才能だというのは確定だ。
では次だ。僕自身のレベルがロックゴーレムを倒して40から42に上昇している。でも【スキル】は何一つ手に入れてない。というのも、普通ならば才能を授かると、本人のレベルに応じて新しいスキルを獲得するはずなのに、僕自身のレベルが42になっても新しいスキルは手に入らない。この結論から僕は僕自身のレベルアップで新しいスキルは手に入らないと考えるべきだ。
そんな中、ルーンだけでなく、授かった才能が成長するようになった。
これも僕が読んだ本の内容と大きく違う。才能が成長するとはどこにも書かれていなかった。となると僕自身が強くなるためには僕自身のレベルを上げるだけでなく、才能のレベルも上げないといけないことに繋がる。
才能【make progress】のレベルはルーンのレベルアップと同時にレベルアップした。となると【make progress】を成長させるためにはルーンを成長させないといけないのが分かる。
これで目標に向かってやるべきことが決定した。
今の僕がやるべきこと。それはただ一つ。ルーンを確保してルーンを成長させること。ルーンを成長させれば単純に強くなれる上に才能まで成長する。
今度は目の前の袋を開ける。そこには拳くらい大きさの紫の水晶が一つと土色をしたルーンが一つ入っていた。
これはミハイルさんたちが僕を助けてくれた時、ロックゴーレムの跡に残っていたドロップ品だったみたい。
実は僕がロックゴーレムに挑戦した一番の理由はこのドロップ品を狙ってのことだ。
紫の水晶は【魔石】と呼ばれていて、普段から魔物を倒して手に入れている【魔石の欠片】と同じ性質をしたものだ。ただし、この二つの間の差というのは名前から【魔石の欠片】だからといって、混ぜたりして【魔石】にはならないこと。【魔石の欠片】というのはあくまで錬金術の素材にしかならない。
では【魔石】というのはどうなのか。これは錬金術の素材ではなく、魔法の威力を上昇させてくれる装備品として売れる。そうさせるためには鍛冶師や装飾師によって、武器や防具を作ってもらう必要があるが、それだけでかなり需要が多く、値段的にも高いのだ。
土色のルーンに関しては、絶対に手に入るものではないので、たまたま手に入って本当に良かった。
では一度ルーンを一つ外して、新しいルーンを装着してルーンの性能や進化を確認しながら成長させていこうと思う。
その時、ふと一つ疑問が頭を過った。ルーン関係の才能なんだから、本来なら三つしか装着できないルーンをもっと装着できたりしない…………よな。たぶん。まあ、減るもんじゃないし、ルーンを右手の甲に運んだ。
すると、ルーンがその場から姿を消した。
「えええ!? ルーンが消えた!?」
消えるとは思わず、アタフタし始めてどこかに落としていないか周りを確認するが、土色に輝いていたルーンの姿は見えない。
(!? ま、まさか!)
恐る恐るステータス画面を開いた。
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名 前:アレン・ティグレンス
才 能:make progressLv.3
レベル:42
状 態:〖ブレッシングLv.5〗
【能力値】
筋 力:E 耐 久:C-
速 度:E+ 器 用:E
魔 力:B- 知 力:D
耐 性:D- 運 :C+
【ルーン】
・ワープのルーンLv.9
・フレイムバレットのルーンLv.9
・ブレッシングのルーンLv.5
★アースバレットのルーンLv.1
【魔法】
〖ワープ〗〖フレイムバレット〗
〖ブレッシング〗〖アースバレット〗
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ルーンの装着部分に枠が増えている!? 本来ならルーンは一人三つまでしか装着できないはず。それに表示され方が少し変わっている。通常の三枠とは違い、★枠として表示されている。もしかしたら何かペナルティがあるのか? それも込みで検証を続けてみよう。
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名 前:アースバレットのルーン
進化先:
【アースランスのルーン】
┗条件:Lv.5
【アースウォールのルーン】
┗条件:中級進化、Lv.10
【クエイクのルーン】
┗条件:上級進化、Lv.10
【耐久のルーン】
┗条件:なし
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進化も【フレイムバレットのルーン】と似てる。【耐久のルーン】も非常に魅力的だが、この進化先を見て一つ決めたことがある。
魔素の回復までまだ時間があるが、クナさんが作ってくれた食事を腹いっぱい食べたのも相まって、久しぶりに深い眠さを感じる。魔素が回復するまで眠りについた。
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