What is your wish?③
◇ ◇ ◇
「お、おかえりー」
レトリバー応接室、リンコ達が妨害を終え戻ってきたカリオを労う。
「この船に入ったところは見られてねえはず」
「グッジョブだ、となると……」
妨害の成功を聞いたニッケルが顎を触る。
「残りで危ないのは途中の断崖地帯とヨシムラシティに近づいてからか」
「この船にミランダさんが乗ってることはわからないだろうし、また街中に入ってから襲い掛かってくるかな?
「自治組織になりすまして、捜査の名目で無差別に殴りこんでくるとかの可能性もある。念のためビッグスーツには乗り込んでおくぞ」
ニッケルとリンコがそうやり取りしている横で、ミランダは
「ミランダさん疲れたろ? ベッドに案内するから休んだらどうだ?」
「……お言葉に甘えようかしら、ごめんなさいね」
来客用の個室に案内しようと応接室を出ると、カリオの足に何かがぶつかる。応接室に入ろうとしたマヨだった。
「ぶぉっ、
「こんな時間にオメーは何やってんだ寝ろ寝ろ」
「私もお仕事手伝うですぅ!」
子供らしくはしゃぐマヨに対して、カリオはシッシッと手で払う。
「かわいい子ね」
「そうかなぁ……」
三人は廊下をゆっくり歩いていく。ヴヴヴと何かの
街中の追手から逃げ切り、静かになったところで、ミランダの脳裏にはアレックスとの思い出が流れていた。考える間もなく忙しく動いた後で、緊張から解かれた時にはいつも、疲れた心を癒すかのように流れてくる記憶。
「
唐突なミランダの質問に、マヨを
「半信半疑ってところかな」
マヨははしゃぐのをやめて、二人の大人を興味深げに見上げる。カリオは続けた。
「あるはずがないって思ってても、それでも死んだ人の墓に花を手向けたりする。もういねえのに」
「……私もよ」
ミランダは自分を見上げるマヨを撫でる。マヨはにっこりと笑った。
「今回の件なんだけど、味方してくれる人がいっぱいいてね、色々な事を言ってくれるの。アレックスは真実を暴いてほしいはずだとか、アレックスは
ミランダは少し
「でも彼って……死んでるのよ。もういないの。私も、誰も彼の声を聞けない」
カリオは黙って聞いていた。
「〝あなたの願いは何?〟、〝あなたのために何ができる?〟って聞いても、彼が返してくれることはない。彼の声が聞きたくても聞けないし、彼の願いを叶えたくても彼の願いはわからないの。私の
「彼の願いが知りたい。彼と話せるならどんなことだって……」
ミランダはそれ以上は言葉を続けなかった。カリオもそれ以上、彼女から言葉を引き出すような事はしなかった。
◇ ◇ ◇
来客用の個室に着くとマヨはカリオを見上げた。
「なんかミッションないですか!」
「ない、寝ろ」
二人のやり取りを見ていたミランダがクスッと笑った時だった。ミランダの携帯通信機が着信音を鳴らす。ミランダは通信機を手に取り通話を始めた。
通話しているミランダの顔が少しづつ緊張の色を帯びていく。視線を時々カリオと合わせてくる。二分程通話をすると、ミランダは通信機を耳から離した。
「何かあったか?」
ミランダにカリオが聞くと、ミランダは真剣な表情で答えた。
「セキグチシティのオフィスに通信記録を見せるよう圧力があったって。ごめんなさい、私がきちんと消しておけば……」
カリオはすぐに状況を把握し、頭を切り替える。
「いや、通信記録は個人でそう簡単には消せるもんじゃない……あんたのせいじゃないさ。ただ、この船にミランダさんが乗っていることはもう向こうに知られたはず」
真剣な空気を察知して大人しくしてるマヨの頭をカリオはわっしゃわっしゃと雑に撫でる。
「どこかで必ず戦闘になる。ミランダさんとマヨはなるべく部屋から出ないようにしてくれ、あと窓からは離れておくように。……大丈夫、俺たちがなんとかする」
カリオはそういうと早足で格納庫に向かっていった。
(What is your wish?④へ続く)
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