第10話:ゴリさんの彼氏にしたい条件を聞いてみる

「いやそれゲームの話ですやん!」


 良い事言ってる風だけど、それはゲーム中にゴリさんが良く言うただの口癖だった。


『あ、バレちゃった?w』

「いやそりゃバレるでしょ、ほぼ毎日それ言ってんだから」

『あはは、確かにねw』


 ゴリさんは笑いながらそう言ってきたけど、すぐに口調を戻して話を続けてきた。


『まぁでもさ、さっきクロちゃん“天上人だから告白するのもおこがましい”って言ったけどさー、別にそんな事は無いんじゃない?』

「……え?」

『だってさ、少なくともアタシだったら、男の子が誠心誠意を込めて告白してくれたらめっちゃ嬉しいよ? そんな風に告白をしてくれたらさ、アタシもその告白に対する返事をどうしようか一生懸命考えるもん』

「え、そうなんですか?」


 意外にもゴリさんから建設的な意見を貰えてビックリした。 でも、七種先輩はどうなのかな? あの人は告白され慣れてるだろうから、今更告白なんてされても別に嬉しいなんて思わないか。


『うんうん、そんなもんよ。 あ、もちろん全く知らない人からの告白とかはマジで怖いから嫌だけど』

「はは、それはそうっすよね」

『あははー、あとは超軽い告白なんかしてきたら流石のアタシでも無視しちゃうけどね。 でもさー、クロちゃんはそんなしょーもない男じゃないっしょ?』

「そ、それはまぁ、多分そんな事はしないと思うっすけど」

『うん、それなら大丈夫だ! それならクロちゃんも頑張ってみなよ!』

「そ、それは、その、」

『ま、どうせ振られるだろうけどさw』

「おいこら」

『あはは、でも別にいいじゃん振られてもさーw それも高校生活の良い思い出になるっしょ!』

「ちぇー、ゴリさん他人事だからそんな簡単に言うんだもんなー」

『仕方ないじゃんー、実際に他人事なわけだしw あ、でもさー』

「え? でもって?」


 俺はゴリさんに聞き返すと、ゴリさんはもう一度大きく笑ってからその続きを喋り始めた。


『もしさ、全力で挑戦して振られたとしてもアタシら(ネトゲ仲間)がいるじゃん! だから大丈夫だよ、クロちゃんが振られたとしてもアタシらが全力で慰めてやっからさー! “オメェら、無謀な勇者が帰ってきたぞー!!”って皆で勇者を受け入れてやっから安心しなよw』

「ぷはっ、なんすかそれw 全然嬉しくないんすけどw ……まぁでもそっすね、その、なんというか……まぁもし俺が全力で挑戦する時が来るようなら、そん時は色々とアドバイスお願いしますわ」

『おー、いいよいいよ! 困ったらいつでもお姉さんを頼りな! 女心をちっともわからないクロちゃんのために何でも協力してあげっからさ!』

「一言余計っすよ! まぁでも頼りにしてますよ。 ……あ、そうだ。 ちなみになんすけど」

『んー? どうしたん?』

「えっと、ゴリさんは彼氏にするとしたらどんな男の人がいいとかあります? 好みというか条件というか」


 七種先輩に彼氏にしたい人の条件と聞いたら“趣味が合う人が良い”と言っていた。 やっぱり他の女の人も同じような条件なのかな? 俺は少し気になったのでゴリさんにも条件を聞いてみる事にした。


『彼氏にしたい条件だぁ? そんなの一つしかないでしょ! アタシより強ぇ奴だよっ!』

「ハードル高すぎわろた」


 確かにこれも広い意味で捉えるなら“趣味が合う人”って事になるのかな? いや微妙に違うか。


『あははー、だからいつも言ってんじゃん。 アタシに10先で勝てたらいつでもクロちゃんの彼女になってあげるってさー』

「いやー、俺は先輩一筋なんで遠慮しときますわ」

『ちぇっ、また振られちゃったなー。 いやぁ、でもさー、クロちゃんだけだよ? アタシみたいな超絶美人なJKを振る男の子なんてさ』

「ははっ、それは光栄な事っすね」

『何でやねん、あははー』


 そう言って俺とゴリさんはお互いに笑い合った。


『まぁさっきの“アタシより強い奴”ってのは冗談としてさ、やっぱり彼氏にするなら、一緒に楽しくお喋り出来たり、笑い合えるような人がいいよね。 逆にあまり会話が続かないような人はちょっと厳しいよねー』

「な、なるほど、それはそうっすよね」

『んーでもさ、これってごく普通な一般回答の気がするんだけど? クロちゃん、これ何かの参考になるん?』

「い、いやもう痛い程に参考になってるっす……」

『は、はぁ? どゆことよ?』


 俺が参考になったと言うと、ゴリさんは怪訝そうな声でそう尋ねてきた。


「……ぶっちゃけその先輩と話す時いつも緊張しちゃって、俺上手く喋れてる気が全くしないんすよね。 頑張ろうとしても空回りしてる時もあるし」


 先日も調子に乗ってゲームで友達ボコったって嘘吐いて、さらに友人はボコるものじゃないって怒られたばっかりだしね。


『え、何それ? つまりその先輩があまりにも美人すぎて毎回会うと緊張するってこと?』

「まぁ、恥ずかしながらそうです……その先輩去年のミスコンでぶっちぎりの1位を取るくらいには美人なんですよ」

『へぇ、そりゃあ凄いね。 でもさぁ、美人相手に緊張して上手く喋れなくなるってクロちゃん小学生じゃないだからさぁ……』

「グ、グゥの音も出ないっす……」

『はぁ、そんなんじゃあ先が思いやられるよ……ふふっ。 でもさぁ、そんな感じだとクロちゃんがアタシの顔見ちゃったらきっと緊張して何も喋れなくなっちゃうねー、くすくす』

「ははは寝言は寝て言ってほしいっす♪」

『ははは殺すぞタコ助♪』


 そして今日もお互いに煽り散らかす時間が唐突に始まった。


『いやあのさぁ、クロちゃん? これ前々から言ってるけど、アタシもそれなりに顔良いJKだからね?』

「例えゴリさんが超絶美人な女性だったとしても内面が圧倒的にひど」

『あ゛ぁ゛ん゛!?』

「い、いえ何でもナイデス……」


 ヘッドセット越しからわかるくらいにゴリさんの圧が半端なかったので途中で言うのをやめた。


「で、でも美人とか綺麗とかの誉め言葉って、そういうのは自分で言う事じゃないっすよ?」

『それはそう』

「でしょ? それなのにゴリさんは自分で自分の事を綺麗だとか美人だって自画自賛してるからちっとも信じれないんすわ」

『それも確かにそうw』

「え、ですよね!? やっぱりそう思うのが自然っすよね!? ってか今更なんですけど、なんでそこまで自分に自信を持てるんすか?」


 凄い今更なんだけど、いつもゴリさんが言うこの冗談の自信は一体何処から来てるのか気になってしまった。 だから俺は軽い気持ちで聞いてみたのだけど……その答えは至極単純な物だった。


『え? だって、アタシも取った事あるもん』

「取ったって? 何を?」



『高校で開催されたミスコンの1位』



「……え゛っ゛?」



 あまりにもビックリしすぎて俺は一瞬意識が飛んでしまった。 おまけに変な声で返事をしてしまった。

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