第4話 転生ヒロインの暗殺者は初めての授業で推しと手合わせをする
教室へ向かうとすでに授業が始まっていた。
見た感じ、授業というよりも朝のHRのような感じだった。
先生の顔を見てみるとなんと。さっき学園長室まで私たちを連れていったあの先生だった。
「遅れてしまってすみません。あの、俺たちの席はどこですか?」
ネオが尋ねると、早速、新しいクラスメイトから視線を集めた。
「あの二人が今朝先生が言っていた編入生ですの?・・・どちらも噂通り美しい姿をしているわ」
「ねぇ、なんでこんな中途半端な時期に編入生なんかが来るのかな?」
「私も知らないですよ。なんか事情があるんじゃ無いですかね?」
最後の会話は王子と側近の会話だろう。しかも、なかなか的を射ている。だがさすがに、潜入調査ということは王子もしらないだろう。
そもそも、暗殺部隊の存在自体、公にされていないのだ。知っているのは国王と学園長、その他主要な重鎮だけだろう。
「・・・みなさん静かに! 今日からこのクラスに入るネオとシャロンだ。仲良くね。二人の席は・・・。う〜ん。リンス殿下の後ろがちょうど二つ空いてるから、そこに座ろうか」
指示された席は、私が殿下の真後ろで、ネオが私の左隣だった。
座ると、目の前の殿下の綺麗な銀髪が教室の窓から入ってくる光に反射して輝いて見えた。
あれ。なんか既視感があるんだが。
「座ったね。じゃあ、2人には自己紹介してもらおう。ごめん、教壇の方に来てもらえる?」
「わかりました。・・・ネオ、どうする? どっちから話す?」
「うん? どっちでもいいぞ。シャロンからやるか?」
「そうしようかな」
「みなさん、ごきげんよう。私はシャロンですわ。このような言葉遣いですが、歴とした平民ですわ。そこは聞かないでくれると助かります。コースは淑女コースと魔術騎士コースに入ることになりましたの。好きなことは戦闘、魔術属性は闇と氷ですわ。戦闘では俊敏さを活かした短剣を使いますの。よろしくお願いしますわ」
「出た! シャロンのお嬢様言葉・・・」
私が淑女言葉を使うのにそんなに違和感があるのか、ネオは必ず、茶々を入れてくるのだ。私はそういう時は、睨みで黙らせている。
今回も茶々を入れてきたので、睨んで黙らせる。
「ははっ! 仲が良いのは良いことだ。次はネオかな?」
「あ、はい。俺はネオだ。コースは魔術騎士コース。俺も魔術が使えて、属性は闇と風だ。よろしくな」
そう。
この乙女ゲームの世界には、魔術というものがある。
異世界といえばやはり魔法か魔術だろ!と、転生して魔術が存在すると聞いた時にはとても興奮した。
この世界の魔術は、練習をすれば誰でもどの属性でも習得することができる。
暗殺者は職業柄、必ず闇魔術を一番最初に習得する。
そのあと、攻撃用で私は氷魔術、ネオは風魔術を習得した。
言い忘れていたが、この世界の知識として、魔術には7つ、属性が存在する。
炎、氷、水、風、土、光、闇だ。
とりわけ、闇魔術は習得するのが難しい。
なので、私たち暗殺者が初めに挫折するとしたら、この闇魔術を習得する時だろう。
炎、氷、水、風、土は、攻撃に特化した攻撃魔術で、光と闇はどちらかというと、攻撃には向かないため支援魔術に分類される。
そして魔術の使い方は、私たち人間には魔力というものがあり、魔力を消費して魔術を使用する。
そして、私たちには魔力の器のようなものがあり、その容量が大きい人ほど魔力が多い。
当然、魔力が多い人の方が様々な魔術が使える。
この魔力も訓練次第では、魔力器の容量を大きくでき、魔力も増える。
しかしこの訓練は時に命に危険が伴う。
魔力器を大きくし、魔力量を増やすには限界まで魔力を消費し魔術を使い続けなければならない。
これは、魔力を限界まで消費し続けると、体が魔力量が足りないと判断し、器を大きくして魔力が増えるという仕組みだ。
私たちは魔術を使いすぎると魔力不足で倒れてしまう。
最悪な場合だと、魔力不足が過ぎて、死に至ることもあるのだ。
しかし、鬼畜な暗殺部隊は、それを私たちにやらせたのだ。
そのお陰で、今は私とネオも魔力量は豊富だ。
「そんなわけで、これからはネオとシャロンとも仲良くするようにね。・・・じゃあこれで今日のHRは終わり! 各自授業に行くように」
授業というが、私たちは今日が初日なので、次が何の授業なのかわからない。
「ねえ、ネオは次何の授業かわかる? 多分コース別だよね」
「そうじゃないか? 聞いてみれば分かるんじゃないのか?」
「じゃあ聞いてみるか。・・・そこの君! 次の授業何か分かる?」
「え? 私も魔術騎士コースなのですが、たしか、あなたも同じですよね? それだったら一緒に行きましょう! 私たちのコースは授業は魔術と剣術の練習なので!」
どうやら自己紹介の内容を覚えていてくれたらしい。
「そうだよ。覚えていてくれたんだ。そうするとネオも一緒だよね? じゃあネオも一緒に行こう!」
「あれ? あなた、さっきと言葉違くない?」
なかなか遠慮のない子らしい。
「あ! ごめんね。こっちが素なんだ。ネオと話すとつい気が緩んでしまって口調が戻っちゃうんだよね」
「そうなんだ! でもそっちの方が親しみやすくて良いと思うよ? 淑女言葉で話されるとなんか近寄り難くなっちゃって」
「シャロンはもうそのままでいいんじゃね? どうせバレちゃったんだし」
またもやネオが余計なことをいってくる。
「もうネオは黙ってて! でもこれからはそうしようかな。ずっとあの口調だと疲れるし」
「いいね! 私も一応淑女らしく話すことはできるけど、学園ではずっと素のままで通してるからね!・・・あ、ごめんね。まだ自己紹介がまだだった! 私はキオルダ男爵家のルイニーだよ! 改めてよろしくね!」
「私は平民だけど、訳あって淑女言葉で話せるんだ。そこら辺はさっきも言った通り、聞かないでくれると嬉しい。名前はシャロンだよ。よろしくね」
「うん、よろしく! じゃあ、授業行きましょう!」
次の授業の教室は、とても広い部屋だった。
「では、みなさん。授業を始めましょうか。新しい2人がいると聞きましたが、その2人も頑張りましょう。
・・・まずは、それぞれの属性の魔術と自分の使いやすい剣を使って試合をしてみましょう。対戦相手は違う属性同士で組むように。前回いなかったネオさんとシャロンさんは、2人組みましょうか
魔術騎士コースの先生は女性だった。
しかも、結構内容が進んでいる。
私とネオとがまだいなかった、一学年と二学年の最初ですでに、かなり学んでいたのだろう。
「分かりました。ネオ、やろう。・・・手合わせするの、これが初めてじゃないよね。暗殺者同士、いい試合になるだろうね」
最後のは周りに聞かれないように、小さな声で言った。
この学園に来る前、ついこの間までは、ネオとはしょっちゅう、手合わせをしていたのだ。
私はネオと互角で戦えるくらいの実力は持っている。
なので、いい試合になるだろうと言ったのだ。
「そうだな。今まで通り、やろうぜ。でも今回は魔術の腕が加わるしな。魔術の腕前によっては、勝敗が変わるんじゃないか」
「そんな訳ないじゃん! 魔術もネオの方が絶対上でしょ。謙遜みたいに聞こえて嫌味っぽい!」
「別にそんな意図じゃないんだが・・・。とりあえず試合始めようぜ。じゃあ俺が風を起こしたら試合開始で」
そしてネオが風が起こす。
試合開始だ。
ネオから攻撃を仕掛けてくる。
私とネオは学園で渡される戦闘用の制服のズボンとスカートに短剣をいくつか挿している。
それを手に取り、素早く投げて来る。
私はそれを、足を蹴り上げて落とす。
と同時に、懐から私も短剣を取り出して、ネオの顔を目掛けて投げる。
それを顔を軽く傾けて避けたネオは、次に蹴りを私の顔面目掛けて繰り出してきた。
仕返しのつもりなのか。
女子の顔を狙うとは、ネオよ! 万死に値するぞ!
「女子の顔を狙うとはね。仕返しのつもり?」
「そんなんじゃないぞ?」
ネオはとぼけている。
仕返しではないなら、なんなのか。
会話をしながらも私たちは次から次へと攻撃を繰り出す。
しかしお互い、いつまで経っても魔術での攻撃はしない。
いつのまにか、周りが試合を止めてこちらを見ていた。
固唾を呑んで私たちのことを見ている?
なんだろうか。
私とネオは、いつも通り手合わせと同じ感覚でやっていたが、何かおかしかっただろうか・・・?
すみません、更新連続できませんでした( ´△`)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます