第12話
みただろう。
男は言う。恐ろしい道具は手から消えていた。
あれだってただの工具だ。
しかし。あの青年の頃。
繰り返し幼少期から見る夢と、爪の浮くような狂気に苛まれ。死を思い、彷徨いたどり着いた場所。あの場所でみた夥しい数の、悲しい、硬い、花びら達。想像はしない。
言う通りにしたか。
男は話を変える。
しました。
息子は、養子に出した。
二人目を妊娠した妻が、寝言を言った。
はっきりと。
逃げたいか。
楽譜から目を離し、自分は妻の問いかけに心から応えていた。
逃げたくない。助けたい。
怖くて体がガタガタ震えた。
男を手放せるか。
なんでだ、どうして!と親心が暴れながらできる、と即答していた。
妻の寝言は終わった。よく寝ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます