第40話 ここから先は……
状況は最悪だ。
あのモンスターが出てきてから数刻が経ったがいまだに避難は完了していない。
探索型と連絡型魔法を使える奴らが連携して進んで入るが被害規模の大きさに対して、助けられる人材の少なさが影響し、終わりが見えて来ない。
テヴァット達も全力で戦えないせいか、攻撃を防ぎ、行動を縛る事に尽力している。
あの図体では一歩でも動けば人が死ぬ。
「俺の背に乗せろ、そいつを運ぶ!」
「無理するなよ」
「問題ない」
ドッグの両腕は火傷で痙攣するほどの重症。
本来ならすぐに治療を受けなくてはならない。
ジッジ---!
頭の中で弾けるような音。
連絡型魔法で頭に声が響く。
『緊急連絡!
巨大モンスター、スカル・キメラが開けた穴よりモンスターが出現。
遭遇した場合、戦えるものは即刻被害を抑えるために撃退してください!!』
「マジかよ! ただでさえ、人助けに手が足りないってのに!」
次々に脅威が迫ってくる。
それに、あのモンスターは何階層から来た?
少なくとも十三層より遥かに下。
最初は雑魚が押し寄せるがその後がやばい。
避難場所を守っている防御結界型の魔法を穴にリソースを割かなければならないことになる。
「……ッ!」
瓦礫を取り除くダラスに影が迫る。
大地を踏み抜き、ナイフでシャドウ種の魔石を破壊する。
「助かった!」
「早く、その人を連れて行け!
ここに来るモンスターは俺が抑える」
戦場はダンジョンではないひらけた場所。
視界は広く持て。
今回は守るべき人達が多すぎる。
穴の方向から荒々しい足音をたて、モンスターの大群が目の前に現れる。
「ここから先に行かせるな」
そのためには後先考えて戦う選択肢なんてない。全てが終わるまで全力で乗り切る。
魔力量の限界が来ようとも戦う。
「行ってくる」
「頼んだ」
持てる全ての魔力で身体能力を引き上げる。
ダラスとドッグ、他の人たちがこの一帯の被害者を助け終わるまで、ここは俺の戦場だ。
他の奴に何をも譲らない。
第一波は十層までのモンスターの群。
軒並み、速さに自信がある奴らが先陣を切って来ている。
数は数えるだけで面倒だ。
ただ、目の前の敵を倒す!
「ぉおおおお!!」
ナイフのリーチでは一体一体、倒し切っていては時間がかかる。
足と狙えるなら急所で一撃必殺。
毒牙なら五層程度のモンスターなら瞬時に毒殺できるはず。
やれる手札は多い。
後はただ、死ぬ気で身体を動かせ。
「「「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」」」
動かせるのは四肢と頭と目。
倒す標的は即断即決で決めろ。
目の前モンスターだけじゃなく、視界は広く、奥まで一瞬で情報を頭に叩き込め。
優先順位を決めろ。
「奥四、右一、左五」
足に魔力を集中させて、速度を上げる。
魔力の切り替えは速く。
足から上半身、腕にかけて瞬間的に魔力を切り替えろ。
「うぉおおおおおお!!!」
コボルトを一撃で殺す。
だが、追いつかない。
ナイフでは無理か。
いや、違う。答えは単純だ。
一太刀で多くのモンスターを倒せばいい。
リーチ内に多くのモンスターを誘い込め。
そして、いつもより一歩大きく踏み出せ。
「ふっ!」
頭の中で組み上げたもの動作に移す。
何かを掴むように連続して、同じ動作を繰り返し、モンスターを薙ぎ倒す。
もっと自由に形にこだわるな。
これまでやって来たことを捻り出せ。
視界の隅に群を抜けようとするモンスター達が数体。
そこの先頭に向けて、ノアを投げ、頭を撃ち抜く。
そして、俺は地面を蹴りその群の先頭に躍り出た。
「行かせるかよ」
先頭にいたモンスターの頭部からノアを引き抜き、目の前のモンスターを一閃。
「はぁー……」
呼吸は一回で整え切るしかない。
モンスターはまだ、群をなして来る。
ガラッと音を立てて、瓦礫の中からシャドウが襲って来たのを毒牙で魔石を砕く。
シャドウ種の上位種達が戦場に紛れ込み始めている。
第二波が刻一刻と近づいてきていた。
それが来る前に第一波目は片しておきたい。
魔力も気力もすり減り続けているが弱音を吐いている暇などない。
他の場所でも戦闘音が響いている。
戦える冒険者達が皆総出で守るために踏ん張ってるんだ。
俺が一番に倒れるなんて恥でしかない。
人手が足りないなんてどの戦場も同じ。
「ツッ!?」
不意を疲れ、頭に当たる一撃。
自分の血が目に入るが気にせず、背後にいたコボルトを殺す。
視界が狭まってる。
気を入れ直せ!
ジッジ……!
『防衛している冒険者、全員感知完了
補助魔法を送ります!
どうか、踏ん張ってください!!』
空から光が降り注ぐ。
探索魔法と補助魔法との連動による戦場への的確な援護による活性化。
さすが、テヴァットの補助部隊。
傷が治り、身体に力が戻るだけでなく、さっきよりも身体が軽い。
「はぁあああああ!!」
戻った力を全て出し切るつもりで第一波のモンスターを全て倒し切る。
だが、すぐに第二波が来てしまう。
その前に一人でも多くの人たちを瓦礫の中から助け出さなければならない。
「歩けるか?」
「ああ、足は大丈夫だ」
「なら一人で避難してくれ」
全員を最後まで見届けることはできない。
一人でも多く助けるためには仕方がないことだった。
『第二波と思われるモンスターが穴より出現!! 対処をお願いします!!』
「クソッ……」
時間が足りない。
何もかもが。
『現在の救助進行度は約八十完了!!』
だが、終わりは見えて来ている。
この場をなんとしても乗り切ってみせる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます