番外編
第七十一話「安倍晴明物語☆夢幻の月」番外編「ある昼下がりに」
登場人物紹介
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「安倍晴明物語☆夢幻の月」の主人公、都の陰陽師。人と
◇
物語のヒロイン、晴明を慕っている。人と鬼の化生。
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ここは平安時代の京の都、日中、陽が良く差し込む、
美夕は炊事場で、洗い物を済ませると、晴明の仕事部屋へ
小柄で、肩までの黒髪、大きな金色の瞳。蒼の布地で白い菊の紋様の着物で可憐な姿。
「晴明様、美夕です。入ってもよろしいですか?」
彼女は、ふすま越しに晴明に声を掛ける。
「ああ、入って良い」
晴明の声が聴こえて、美夕はふすまを開けて彼の部屋へと静かに入る。
「白湯を持って参りましたよ」
「ああ、すまぬな。そこの文机に置いてくれ」
黒髪に薄紫色の瞳、白の
美夕は、文机の上に白湯を置くと「では、戻りますね」と部屋を出ようとした。
その時、晴明は美夕の名を呼んで引き留めた。
「美夕、もう少し話しをしていかないか?」
「何かご用ですか?晴明様、縫い物がありますので、少しでしたら良いですけど」
「最近は、仕事続きでゆっくり、話すことがなかったからな。今日は少し、話そう」
「はいっ」
美夕は、晴明のその言葉を聴いて、嬉しくて胸が温かくなった。
晴明と美夕は、軽い世間話からお互いの近況報告等、話しに花を咲かせた。
「お前とこうして、話せると私も嬉しい。たまにで良い、こうして話せるか?」
「はい、私も晴明様とお話し出来てとても、嬉しいです!」
お互い穏やかな雰囲気に包まれる。
晴明はすくと立つと、引き出しの中から、藤色の布に包まれた物を持ってきた。
「これをお前に渡そうと思ってな」
美夕が見ていると晴明は、布を彼女の前で開いて見せた。
そこには、陽の光に照らされ、キラキラと輝く銀の鈴が乗っていた。
鈴には、朱色の紐が付けられている。
「わあ、綺麗ですね。これを私にくださるのですか?」
「ああ、私の母上が持っていた魔除けの鈴だ」
「えっ、そんな、大切なお母様の形見を私なんかが、頂いてもよろしいのでしょうか」
美夕は、戸惑いながら、少し遠慮がちに晴明をみやった。
「私は、お前に持っていて欲しいのだ。母上がこれからも、お前の身を守ってくださるように」
「それでは貴方の形見がなくなってしまうのではありませんか」
美夕が聴くと、晴明は優しく微笑んで言った。
「私はもう、充分守って貰った。これからはお前が守って貰うと良い」
「晴明様、ありがとうございます」
「ああ……」
彼女は、晴明の母の形見の銀の鈴を、大切に懐にしまうと美夕と晴明は微笑み合った。
「安倍晴明物語☆夢幻の月」番外編「ある昼下がりに」終わり
こちらに本編の入門編としてこちらに載せた同じ話を投稿しました。
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