第6話 臆病なほど慎重に
高校に入学してからは、誉川芽衣子に近づき隙を窺っていた。運がよかったのか、なにかしらの根回しがあったのか、彼女とは同じクラスになれた。陽気で遠慮がない彼女はクラス内でも友人が多く、近づくのは容易だった。
ただ、この女……時々、まるですべてを見透かしているような鋭い目で見つめてくることがある。俺は何度か、居眠りしている生徒に憑依して殺しの隙を窺った。だが、憑依した生徒ではなく、まるで中に俺がいることを知っているかのように彼女は話しかけてくるのだ。
「テルくんは、たしかスポーツテストで敏捷性が満点だったんですよ! 今の山田くんはテルくんもびっくりの素早い動きでしたね! つまり『満点』の動きですよ!」
山田という生徒に乗り移って、彼女に忍び寄った時の一コマだ。なぜ山田に対して「テル」という俺を例にした話をするのか。危機を察して俺は自分の体に意識を戻した。
山田はその場で倒れた後に、なにが起こったのか理解できない顔で目覚めていた。当然だ。山田の記憶では、彼は机で寝ていたはずなのだから……。
これと似たようなことが何度かあり、俺は誉川への警戒心を強めた。女子高生で殺しの依頼が入るのだ。
この女、只者ではないのだろう。安易な方法で仕掛ければ逆にこちらに危険が及ぶ可能性がある。慎重に、そして確実に仕留める必要がありそうだ。
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