第24話 説明を請求され話し合ってみたら
「おやぁ」
マリンカさんが三つ編みを解いた緩いウエーブが掛かった髪を右に流して思案顔をする。
馬車組が宿車から普通に降りてくる、思わず見つめると何かという顔をされた、血の付いたマントとか紋章みたいなものをテーブルに並べいるのに気にしてないな。
ちょっと前に、結局無かったことには出来なくなってしまい死体は外に箱馬車を作り安置した、生きていたのは手足が折れた奴で同じ霊柩馬車に棺桶みたいなのを作って入れている、意識は無い。
夕食を作るかと部屋から出て下に行くと団長たちが反省会ポイことをしていた。
半分溶けた鎧を出してちょうど私の話をしていたらしく一斉にこちらを見てきた。
「なにっ?、ビックリするから一斉に見ないで」
「お願いがある」
この間からよく聞くな。
リサがパンテさんのところでトランプをしている、こちらをちらっと見てシャサちゃんのトランプを一枚引く、斜めったかなぁ。
「少しすり合わせというか、想定外なことを理解したい、話せる範囲でいい、この先の状況判断がしにくいから。」
団長に真顔でお願いされた、この空気を維持したいなんて思ってしまった。
「はい」
「たとえば此の鎧をどこで目にしたんだい?」
「目にしたのは母が襲われている時です」
「理由はわかるかい」
「サラミドル邸を襲撃した関係者と話を付けると言っていました。逆に聞きたいんですけど、盗賊レベルでどうして襲えるんです?」
「そうか我慢できなかったらここに座ってくれるかい。」
膝を叩きながらセリちゃんが言う、無理だったか、取り敢えず頷いておく。
「十年前ローランド卿には五人の奥さんが居たんだ、第一夫人が君のお母さんラスメリア様だ。」
ガラリアさんが続ける。
「他四名はもういない」
死んだや殺されたではなく、いない。
「みんながですか」
「第五夫人のサトウミレアさんが行方不明になってね何処かの令嬢だったらしくて大騒ぎをしている最中だったらしい。」
「その人は」
「屋敷の裏庭に死体があったらしいよ」
「まだ足りないですね」
「君は時々怖くなるね」
クリームさんが呟くので膝に座ってやった。
「あ、おい」
「まあまあ」
クリームさん御満悦、懐柔成功。
「サソウス領とジーニアス領の間にソウラ山脈があるんだけど当時ジーニアスの伯爵が勝手に道を作っててね」
「それを監視したり威嚇したり小競り合いまであってね」
「他の領地なら拗れたりしなかったろうがあそこは色々不足しててな」
「もう民族的に好戦的だと言われている」
「そう女の子も選定してスキル確認してるらしいよ」
団長、テミス、ジョイ、ガラリア、マリナさんが連携して話してくれる。
「で、次だ君の体術、あれは何だい?」
ですよねぇ。嘘にならないようにと。
「生まれつき力の流れが分かるんです、記憶がある限り鍛錬はしてましたよ。」
「俺でも一太刀も当たらんのだぞ」
「ガラリアさんのは未だ初見殺しですね」
「なに、いや師匠も言ってた、わかるのか」
あったかい太ももから降りて私は剣を持って少し離れる。
「ガラリアさんの流派はたぶん剣の重さを加味した体幹を重視しています、なので上体の動きに剣や下半身も逆に動いたりします、そこに強弱をつけて剣戟を出します」
そう言って二度三度剣を振る。
「うーわ、そっくりだ」
「ぬう、じゃあ流派的にここ止まりなのか?」
「えーと、これを見てください」
そう言って薪の中から鉛筆ぐらいの枝を取り出して三分の一くらいを摘まんで上下に動かす。
「これが初見の人が見たガラリアさんの動きです」
「あーあー、何か分かるぞ、剣速がしょっちゅう変わるんだ」
「変わってないですよそう見えるんです」
「見慣れるとだめってこと?」
「いえ、もっと根本的な欠点があります」
「そうそれだ俺が知りたいのは師匠の鍛錬は感覚ばっかりでな」
「ここは逆に止まって見えるんです」
皆が私の指先をしばらく見て言う。
「「「「ああ!!っホントだぁ」」」」
指でつまんだ中心、そこは動きが遅くなりはっきりと枝の節が見える。
「なのでこれからは一歩を大きくしたり体幹の中心を剣の先迄移動できるように鍛錬ですね」
「歩幅ってどうすんだ」
「錯覚させることは直ぐできます、例えば裾の大きなズボンをはいて少し屈んで措いて踏み出すだけでも効果があります、重心を支え足において踏み足を前に出しておいて一気に二歩分進んだり」
「もっと簡単にするなら踏み出した足を捻って最後の十センチを稼ぐことも有りです」
実際にしながら説明するとジョイさんやデバスさんがキラキラした目で見てくる、見たくない。
ガラリアさんは一寸不満そうだまあそうだろうな。
「ガラリアさん、」
「ん」
「又割りって知ってます?」
「なんでそんな嬉しそうなんだ?」
「ぎぃぃやああああ!!」
「デバスさん一気にやりましょう力を籠めて」
「まぁ待て待てし、いきが、だめぇぇぇ」
「あははははははは」
クリームさんが本当にうれしそうだ。
「それで私も有るんだけど」
「はい何でしょう」
「ん」
ぺちぺち。
「ん」
ぺち。
わかりましたあったかいしね。
膝に乗ると軽く抱きしめるように手を前に回してきた。
「あの時、君が抱き着いてきたときだよ」
「いや語弊が、いえ、はい」
「いつもよりはるかに風の力が増してたんだ、秘密かな?」
「まあ、もう直ぐ売りに出すつもりなんですけど僕の白い方の鉄があるでしょう」
「うん軽い方だね」
「はい、あれマナの調整、貯蓄ができるみたいなんです」
「え?」
「あの時背中に背負っていたでしょう」
「盾か?」
「そう」
「なんとまあ」
「本気でお願いしたいよ」
「はい?」
「ぎぃぃぃやぁぁぁむりむりぐりぃい」
「あははははははははははは」
ごきっ!!
「「「「「「え?」」」」」」
クリームさんの笑い声が止まった時に宿車から皆が降りてきた
「この紋章?見覚えがありますわね」
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