第12話 最後にお風呂に入ったら

セミスさんとメリルさんがお風呂に入っている間に屋台に寄る事にした、カテル兄貴はテントの見張り。

 「スゴーイ、どうなってるの?温泉よ温泉!」

 「はい、さすが旦那様です」

 「このテントの明るさと言い何がなにやら」

 「あ此処からも明かりが漏れてますよ」

 「気持ちいいですねー町のお風呂より断然良いです」

 「普通庶民のお風呂って汚れを落とせれば良いって感じでいい物じゃ無いですもの」

 「此の間のお風呂は足元がヌルヌルしてたもんね」


 夕方から夜中まで源泉掛け流しですからね。

 さて屋台の中ではリオナさんがマミルちゃんを抱いてお話をしていてライカさんがシャサちゃんの相手をしていて、自分のカットの確認をするように宝石を回して見ていたパンテさんが此方に気付いた。


 「旦那様、声を掛けて頂ければ伺いましたのに」

 「お土産も有ってね、これトランプって言うんだけれどね」

 超拡大鉄で作ると不思議と手を切ったりしない良い物が出来たので夜のお楽しみに出来ればと持ってきた、子供がいると大人も暇つぶしに困ることもあるから。


 取り敢えず婆抜きと戦争、七並べを説明した、やはり全員数字は理解していてマミルちゃんもばば抜きは出来た、遊んでいれば直ぐに覚えると思う。


 ちなみにカブとポーカーと一人用にフリーセ○のルールを書いたカードも一枚ずつ入れてある。


 あと大人だけの時のリバーシも持ってきた、興味深そうに見ていたからルールは直ぐ解ったようでお礼を言って一番奥の棚に片付けた、下でマミルちゃんがトランプを広げていたから。


 シャサちゃんの様子を確認した、糸の拒絶反応も無く明日は歩いても良さそうなのでギプス仕様のコルセットを外すととても喜んだ。この世界の人は本当に丈夫だね。


 宝石はどれも素人目には納得できるものだ、満足して見ているとライカさんが小さな紙包みを三つ持ってきた。

 「此れはカットしたり削ったときに出た欠片です一応種類ごとに分けたんですけど」


 普通こういうものは職人のお小遣に成る、彫金師などわざと大きく切り飛ばしたりは前世でも良くあった、多分私が子供だから解らないだろうと気を使ったんだろう。


 「解りました、チョッと待ってて下さい」


 袋を受け取ってテーブルに戻った私はリバーシに興ずるフィアンセ二人の横で鉄塊を転がしてアクセサリを作った、リオナさん用に風呂上りに使う大きな髪留めをライカさんには凶器にもなるブレスレット、パンテさんには手を守る意味も含めて小盾二つハンドルを握れば小刀が三本生える素敵仕様。


 後誰でも使える小振りな髪留めやブローチ、全部を気泡鉄で作り宝石の粉を混ぜた縮小鉄でコーティングして所々に大き目の欠片をあしらった、デザインは蝶や唐草模様にしたり宝石の周りに精密なバラの花を飾ったり、生前の記憶を総動員して作ってみた。


 「此れは駄目だよ、お礼に作ったんだから」

 何時からかじっと此方を見ている擬似姉妹に牽制を入れるも目を離さないので出来は良いんだろう、腕ではなく記憶力の賜物だけど。


 慌てて掻き集めて屋台に向かう、いやヌードを見せて貰ったからじゃないよマミルちゃんも狙ってないからね。


 不穏なジト目をする二人に心の中でちゃんと言っといた。


 最初受け取りを拒否されたが、申し訳ないが今はお金が必要なので此れを変わりに何とか、と言う私の懇願に根負けして受け取って貰えた、自分にしたら全てただなので心苦しい限りなのだが。


 テーブルに戻ると彼女たちの勝負も着いたのかカタズケを始めていた。リサは冷蔵庫のチェックだ。オセロ駒を内側に直して蓋をするように閉じてリリカが聞いてきた。


 「明日は迎えに行くの?」

 「行かない、馬車を置いておくので乗せてきてってお願いした」

 「遠話をしてあの馬車を詰め所に?」

 「うん?」

 「其れは又・・・今晩寝れるかしら?」

 

 リサが心配そうに言うが物自体はどこかの発明好きが作りそうなものばかりだ。


 イメージは少し横に広い箱型軽四、縦三列の横二列先頭のみ横三列のリクライニングシートにして最後尾真ん中には蛇口付き水樽が付けられている、車輪は五つ、外からは四つに見えて馬車中央にもう一つ付いている為車輪ハウスが真ん中に出っ張るので其の上にテーブルを置いている、車輪はその中心、車で言うホイールはない、車輪と車軸の直径の比率よるベアリングに掛かる負荷を減らす為だ。

 テコと同じ理屈だな。


 ただ重たくなると本末転倒なので車輪を支えるY字の部品の先にベアリングを付け鉄のリング車輪を効率よく回す、重さの少ない時は効果が無いが重くなるほど感謝する仕掛けだ。勿論サスペンションつき、ただ上下動ではなく後方スイング型にして車輪を大きくしたのと同じ効果を期待する。前輪は左右にカシムようにして舵を取り易くした。


 馬は一頭立て、例によって拡大鉄のダンボール構造で隙間に気泡鉄を基本建材にして同サイズの普通の馬車よりズット軽量だ。


 そして御者台の前にはサドルとペダルが着いている。

 

 四輪車の弱点に、揃った方の車輪が二つ同時に抵抗物に当たると負荷が極端に上がると言うのがある、特に前二輪が同時に躓くとなかなか進まなくなる。


 こんな時にサドルに座ると梃子の原理で三倍の体重に成って、馬車中央に有る第五の車輪が最大効果を出す、大人が乗れば百五十キロ以上で持ち上げることになる大抵の凹凸は此れだけでカバーできる。


 加えて上り坂で補助として使えるペダルも付いている、筋肉強化した男なら十分役に立つ、御者台にはフットブレーキも着けて下り坂での馬の負担も軽減できる。


 前にも横の窓にも網戸は標準設置、因みに最後尾座席はフラットまでリクライニングし夜番の仮眠も出来る、前から二列目と三列目座席は対面座席に設定可能にしている。


 以上を二台とスチリス子爵家に贈り物としてティーセットと手紙を添えて騎士団詰め所の前に置いといたんだが今見るとえらいことになってる。


 「明日迎えに行かないと駄目かな」


 独り言を言いながら風呂場で服を脱いでいると気配を感じて後ろを見ればメリルさんが俯いて立っている、パンツを下ろしていい物か悩んでいてもしょうがないので声を掛ける。


 「明日早いと言っていませんでしたか?」

 「何かどきどきして眠れないの」


 リサと接触したかな?。


 「セミス譲から聞きました、この魔術を使えたのは西都に一人だけでその人も一昨年亡くなったと、私そのどうしたら良いか・・」

 「はは成る程、そう言う事なら大丈夫ですよコミネ村にも一人いますし明日にはもう一人増える予定です」


 「でも私が魔術を使うとあのお肉みたいに・・・」

 少し涙目になってる、流石に頭が吹き飛ぶのを見たくは無いだろう。


 「座って」

 私が慰めてやろうとしたら顔を真っ赤にした彼女が膝を付いて目を瞑ったから完全に勘違いをされたと気付いた、のでキスをして抱きしめた。


 間違いなら罵られればいい、話の持って行き様はある、そう思ったけれど彼女の腕は私の胴に確りと回っている。


 「大丈夫です、この場所に心臓という部分が有るから此処だけを狙えば酷い事にはならないと思いますよ」


 そう良いながら彼女のインナーだけになっている左胸をやさしく押して柔らかさを堪能する、これは上物である、思わず何度も揉んでしまった、柔らかいホントに。


 「あ・ん・・あっすみません、あの私」


 嫌がっている様子は無いという事は、この娘もか、リサにしろリリカにしろ私のことをオッパイ好きではなく乳離れしていない男子的な目で見ている節がある、どう違うか聞かれても困るが。




 一言呟くと一時先端を愛撫した後含んでくれたが何か違うまあ征服欲は満たされたので良しとして彼女も服を脱いで貰うと再び跪かせて柔らかい乳房を存分に揉みしだく、甘い声が聞こえるが時折苦しそうな声が混じる、そう膝は石のように硬い洗い場に私が足で押し付けている。


 「こういうのも好きなの?」

 「旦那様、そんな事は、あっ」


 風が木の葉を揺らし音を立てる、この後のことを思い音に敏感に成るのはしょうがないと思う、女史と兄貴が武器や防具のためし運動をしている声が聞こえる。



 インナーを剥ぎ取ると白い乳房が良く揺れる、此の大きさで此処まで揺れるとは水蜜桃の肌とはこの事だな。


 乳首を吸いながら軽く噛んでみると割りと淡白な反応、と思って顔を見るとかなり硬い、なるほど経験はそれなりと。


 まあ兄と一緒に護衛なんてしてる子だからそう簡単に男も見つからないだろうし、たぶんスキルは精神感応系、狂戦士化とか、私にも何か仕掛けていたんだろう釣り橋効果で魅力が倍増したと見るべきか。



 「あ、あん、ん・・・」


 乳房から少し下に舌を這わせていくと甘い声をだしてくれる。

 パンツに手を掛けるとビクッとした、想定していなかったのか上半身を軽く上げて此方を見る気配が有った。


 「やめないよ?僕のだ、家に来るって言ったよね」


 もちろん殆ど言いがかりだけれど、入れたい、入れたい、出したい、犯したい、半分は君の計算のはずだ責任は取って貰う。


 「・・・はい、旦那様」

 そう言って再び横たわった彼女は腰を僅かに浮かせたのでパンツを脱がすと薄い草原が奥を隠すように纏っている穏やかな丘陵が見えた。


 奥付きなのかお尻を格好良く見せるために腰を引いているのか骨格は大きめだけどツンツンと出るところは出ていて愛らしい。


 年甲斐も無く慌てて彼女の足を割ったところで意外な抵抗にあった。

 「あ、あの旦那様、その正直あの、この流れはその」

 「何かお願いがあったんでしょ、なに?」


 あせりを隠しながらながら先を促した。

 「は、はい、あの・あ、、うん、町に着いたらぁ、武器か防具をいくつか現金にし、ぃても、、いいです・・か」


 "あ"と"い"の発音が色っぽいな、彼女の矜持か関係を持つ前に了承を貰いたかったんだね。

 「もちろん良いよっ!!」


 答えながら力任せに足を広げさせた。


        ★



 お風呂に向かい合って二人で入っている、気まずそうにしていたメリルが俯き加減で謝ってきた。


 「御免なさい旦那様、私、その」

 「スキル使ったこと?」

 「あの、」

 「気にしてないよ、知らずに使っちゃう人もいるし」


 もう寝息を立てているだろう子達なんか24時間使用してるんじゃないか?。


 「同じスキルもちに使うと打ち消されるか、過剰な効果があるか、と言われていたのに何も考えずに、その」


 私の精神面の心配をしているのか?。

 私の場合生前の修行で身に付けたもので、火事場の馬鹿力を意図的に使えるが其のことか?。


 「ああ、婚約者と経験はありますよ」

 「そ、そうなんですねっ」


 ほっとした顔をしてメリルさんが答えたので此方が正解だったのだろうと思い話を進める。


 「纏まったお金が必要なんですか?」

 「まあ、話す許可は出てますから言いますけど今の遠征はお嬢さんの考査を兼ねてまして」


 暖簾分けなどで資金援助を申し出た人の可否を決めるあれか?この世界にもあるんだ。


 「このタイミングでは決してやらない初めての商品を買い付けてしまって・・・・」

 「結構残ったの?」

 「七割がたまだ馬車にあります」

 「本音が出てるよ、あせりすぎ」

 「あ、すみません、やはり私には無理ですか」

 私こそごめん、爺の頃の説教ぐせはなかなか抜けない。


 「何を仕入れたの?」

 少し興味がわいたので聞いてみた。


 「はい、盛り麦と言う小さな種でそのままでも食べれるし炊いたりしても食せるんですが何かこう歯に纏いつくようなのが気になるようで、、日持ちはするし一食あたりの量も少なく、軽く、色んな需要が有ると私も思ったのですが」


 それを聞いたときに体に電撃がはしった。そして思い出した、水田じゃなくても稲は育つ、さんざんウィンドウで大陸中見て回ったが水田を探していた、もしかして。


 「見、せて貰える?」


 はやる気持ちを何とか抑えて言葉を吐いた。


 「はい、もちろんです」


 私の言葉は彼女にとって満点だったらしくとても明るい声が聞こえた。


               ★



 馬車の前で動いている長持ちサイズの笊籠を見ている。


 結果的には私の思っていたのとは違った、がOK全部買う、笊籠が二十個、内十九個を買ってあげた、情報料ということで。


 日本の相場なら三十万ぐらいか、しかし此処では穀物は高い、金貨二十枚で取引が成立した。一箱は研究用だとか、なら明日の朝に食べさせてあげよう。


 「朝食を用意するから出発前に此方に来てよ」

 「はい、よろこんで!!」


 メリルさんの僅かに有った遠慮が霧散している。


 「旦さん、あの、一つだけいいですか?」


 セミス女史にパトロン枠にされたか。

 金貨を二重の皮袋に入れて此方を伺いながら小声で語りかける女史に返事をする。


 「この武具防具ですけれど、あまり安かったりしませんよね?」

 「はい?流通価格は決まっていませんけど・・」

 少し不機嫌な声になってしまった。


 「違います、そうじゃないです。その、この鉄製品を持つと体調が良くなったり私などは風もずっとよく操れるようで、本当ですよ、色々試しましたから。」


 少し眇めになっていたのか恐縮したように私から見ても上目遣いで此方を見ているセミス女史の言うことを考えてみた。


 たとえば拡大鉄、原子の大きさを大きくするとつながりの張力みたいなものも大きくなるとすると当然目には見えないが隙間も増える。


 あ、孫が通う学校の実験室にある原子模型、何かに似てると思ったらラノベに出てくる魔法陣だ。


 「・・・そう言う事ですか」

 「何か解りましたか?」

 「ええまあ、色々と合点がいきました確かに安く大量に出回ったら大変ですね」


 やはりというか、何か有ったなと言うか、自重しておいて良かった。私のピーピングウインドウの拡大率は無限、縮小も無限、何ならウインドウ越しなら時間も止めれる。


 去年悪戯で毒草を食べた女の子を治療するのに水使いの奥さんに赤血球に取り付いた毒の元を確認して貰い一箇所に集めて注射器で吸い取ったことがあった。止めないと見えるわけ無い。


 「鉄を中心にした経済が立ち行かなくなります」


 何人もが出来ればいいが、暇に飽かして留め人のローデルさんとこの大陸のことはずいぶん調べたが私しかいなかった。これから売る分はダンボール鉄、気泡鉄メインにしよう、倍くらいなら拡大してもいいかな?錆びにくいし。


  縮小は魔法陣の数が増えるので体調が良くなると、実際筋力も上がっているのかもね。


 カテルの兄貴が笊籠を隅に出したリヤカーに移し変えて元の位置に押していたのでお礼を言って私は穀物を一升ほど蒸し器に掛けた。


 「其れは何です?」

 目敏くセミス女史が聞いてきた。


 「蒸し器、、蒸気で調理する鍋です」

 「鉄じゃないと?」

 「鍋は当然そうですが材料を載せる籠は竹なんかの籠で出来ますよ」


 そう此れはもち米だ、白米の次に夢に見たもちが食えると思うと眠いのも気にならない。


 「明日の朝食に出しますのでお休みなさいな」

 「はい、旦さんもご無理なさらないように」

 「おやすみなさい」

 「旦那様おやすみなさい」

 「おやすみ」


 チョッと気安めに返事をすると嬉しそうに去っていったメリルさんを見ながら (なって何だよ、なって)自分に突っ込んでいた。


 さて蒸しあがるまで小麦粉を、そうだあと一つやることがあったなさっさと練ってから覗こう。


 とある貴族の寝室を覗いて確認、別の貴族に接触する、かなりびくついている、昨日からいろんな声を聴かせていてまいってるな、今日はいいものを見せてあげよう。

 その貴族の目の前に先の貴族の寝室を映す。

 「お前の尻は俺の物だ、そうだな?」

 「はい、旦那様の物です」

 「こう出来るのは俺だけだな?」

 「ああ、そうです旦那様あ」

 ベッドに手を縛られお尻をくねらせながら受け入れて波打つ女体。

 「今日はお前の好きな新作だぞ」

 「あぁ、いや、いやですああ」

 カラフルな木の棒に紐が沢山ついているのをお尻に近づける。

 「許して、お願いします旦那様ぁ」

 そう言いながらたかくお尻を上げる女性。

 

 「そんな、もう何年も関係ないって」

 歓喜に泣き叫ぶ女性の声を聴きながら泣き出した。


              ★


 未だ暗いうちに目が覚めた、歳を取ってもイベントのある日は早起きのタイプだったが今世もそうらしい。別々に分かれたベットから起き抜けたのに二人に気付かれた。


 「はよ。」

 「おはよう、早いですね」

 「普通トイレとか思わない?」

 「ズボンはいてる」

 「あ、そう、朝食作るからゆっくりでいいよ」

 「あい」

 「いいえ手伝います」

 「うん、ありがと」

 「あたしも、薪が少なかった」

 「ありがとう」


 何か素直にお礼が言えた、夕べの事が有ったから・・・だろうね。


 外に出て火を起こして薪をくべる。

 ずいぶん此処も物が増えた、薪ストーブが三台一つはオーブン用、小テーブル二つに大テーブル一つミキサーに蒸し器、梃子で力を入れる餅つき器、遊具二つに線路に載った二階建て車、お風呂もある。

 一人で旅してたときは手ぶらだったけど、やはり賑やかなほうがいいな。


 そう言えば昼間に覗いたときに峠を越えてきた人達にずいぶん睨まれてたな。


 「其れは何です?」


 いつの間にか後ろに来ていたリサがテーブルに置いた大きな盆に広がった粉まみれの物を見つけて聞いてきた。


 「お餅って言うんだ其処に此れ轢いて焼いて貰える」

 こびりつき防止エンボス加工の鉄板を渡しながらたのんだ。

 「はい」


 リリカは既に背負子を持って木々の中に消えていった、まあ彼女が熊と鉢合わせなんて有り得ないか、この辺りにラプトルは居ないし。


 少し日が差し始めた空を見て、なんか、ばれてる?

 覚悟はしとこう。


 餅を入れて鍋を沸かしている間に冷蔵庫から昨日こねておいた小麦粉の塊を出して伸ばしてうどんにする、力うどんだ。


 鰹節なんて無いから其れらしい魚を自作高枝切りバサミでウインドウから直接刈る、頭を飛ばせば物扱いのようで引き寄せられる、たまに間違って頭のほうが残るけど。


 それを例の星に突っ込んで強制乾燥、ちなみにウインドウの移動は瞬間移動だが意図すれば物理移動になる、ただし火掻き棒などを出したまま動かすと光の粒子になって消し飛んでしまう、してはいけないことは確認できた。


 うどんを焚き火に掛けた鍋に投入して、煮ているまに、ねぎやかまぼこモドキ、旨く出来なかったがちゃんと食えるので適当に切って、夕べの油に残ったパンくずを上げておいたものを小皿に入れておく、私はいらないので此れでいいか。


 あと一味を用意して、そうだ夕べ作っておいた砂糖醤油用意しないと、砂糖醤油は砂糖が溶けてなじむのに時間が掛かるので前に作っておいた割り下を使う、みりんと煮たりいろいろあるらしいが火に掛けた醤油は風味が減る気がして私はしない、うまく空気に晒して二週間も置けばそれだけで団子のたれになる。


 ちなみに料理屋などの煮込み料理は醤油を入れた後は沸騰させない、味をしみさせるには冷ますほうが効果的なんだとか。


 「ええーこれえーオムル君、どうしましょう」


 出汁を作っていると声を掛けられたので見ると御餅が随分膨らんでいる。


 「大丈夫ですよトングで摘んで潰してください、で、此れを満遍なく塗ってください」


 私は胸を弾ませながら砂糖醤油と刷毛を渡した、久しぶりだ、本気で夢に見たんだ。


 ジュウウゥウゥ。


 「キャァ、すっごく良いにおいがする」

 「二回塗ってくださいね」


 やがて漂う芳醇で香ばしいアノ香りが漂い始める、目頭が熱くなるのを止められない、そうだった此のにおいの事を忘れていた、大好きなにおい、正月三日の朝は先ず此れと決まっていた。


 「凄く食欲を誘う香りですね」

 「これは、凄いです」

 「ああこれほどの胃を刺激する匂いに出会ったことが無い」


 いつの間にかトラポス商会の皆さんも集まってきていたし、リリカがものすごい勢いで走ってきた。


 しゅばっ、がらんがらん、ガー、どすん!!。


 「此れは何?此れは何?何?」


 指定席に着くなりまくし立てるリリカを宥めてセミスさん達を別のテーブル席に案内する。


 「此方は例の穀物を蒸して熱いうちに叩き潰して丸めたもので、御餅とでも呼びましょうか?此れにこの醤油と言うコミネ村の調味料との相性が良かったので掛けてみました」


 実際私の醤油をベースに生産に成功している、菌はいない筈だが環境で繁殖し易い例も有るしそんなものか。


 「この御餅ですけど重さは少し重くなりますが日持ちがしますし調理に水がいりませんし結構腹持ちもいいです、さあどうぞ召し上がってください」


 丁度リサがテーブルに御餅を入れた皿をくっつき防止フォークとナイフを添えて並べだしたので私もさっそく。


 「美味しいデース旦那様っ」

 「ホントにこれは幾らでも食べれる、うまい」

 「何でしょう、これは、お菓子といわれても納得します」

 「ほう、う、そうですね、薄く切って油で揚げて塩を少し掛けるとさくさくして茶請けにも良いですよ」


 リリカががっつくので焼くのが間に合わない中で一つは確保したのかリサが頬を押さえてウットリしている、肉なんかの暴力的なにおいと違って醤油の匂いってやさしいよな。


 さて第一陣を平らげたのでうどんを作ろう、うどんをざるで掬って器に盛って出しを御餅と一緒に掬ってうどんに掛ける、天かすモドキと一味を一緒に出して。


 「酷が欲しいときはこっちを、辛味が欲しいときはこっちを掛けてください」

 

 うどんを先に食べたのはセミス女史だ、食べるのが少し上品で最後の追い上げで負けたのが勝因だ。


 「はぁ、何てやさしいスープでしょうか、お塩ベースのような違うような」


 塩で味を決めて醤油を香りだし程度に使う関西風だしね。


 「海の魚を乾燥させて臭みを抜いて昆布と一緒に煮て塩、醤油、砂糖、で味付けをして越したスープですよ」

 「まさか此処で魚ですか」


 うーん、海までは200キロくらいか、まあ生じゃないし。一つ見せるか。


 「こんな状態なんで腐らないんですよ」


 手渡した乾燥魚を見ながらなるほどと匂いをかいでいる。


 「これを香り付けの為だけに使っていると?」

 「コミネ村の調味料と相性が良いんですよ」


 ずーずずずるー


 はっとした様にセミス女史が周りを見ると皆一心にうどんを食べている。慌てて食べだした。


 皆フォークではあるが旨く啜っている、外人は顔をしかめると聞くが日本には昔、食事中に歯を見せるのは獣の所業と言う躾が有ったせいか皆が旨く啜る。

 いくらか纏めて口に入れると火傷をする位のほうが旨いので良く出来た食事法だと思う。歳を取って下手になって随分悔しい思いをした。


 因みに其の躾だが私でも二三度言われた記憶があるぐらいで一家団欒なんて言葉がはやった頃には聞かなくなった。


 「美味しい、落ち着いて食べるとさらに旨みがまします」

 「そうね、この御餅が溶け出してるのをお葱に絡めると、んんー」

 「これは力も付きそうだ」

 「あちあち、ふーふー、あつつつ、はふ、」

 「はふ、はふ、ん、・・・次の御餅が焼けましたよー」


 は、と気付いて屋台を見るとパンテさん一家がどうしようという感じで佇んでいる。


 醤油の焦げる匂いに我を忘れていた。


 「パンテさんも一緒に取りに来て」


 声を掛けると三人で一緒に此方に来たのでうどんを入れた鍋を出すとパンテさんが取ろうとしたので此れじゃないとライカさんに手渡し、お餅や醤油、一味、どんぶり、小皿、刷毛の入った籠をリオナさんにわたす。


 「「ありがとうございます」」

 「パンテさんはこれを持って行って」

 「火桶ですか?」

 「七輪を中に入れた火鉢ですこれに網を載せて御餅を焼いてください、下の燃焼調節口の開け閉めで火力が変わりますから旨く焼いてください」


 私の知る限り最古の二次燃焼コンロだ、少し設計は変えているけれど効果は解らない、が煙は激減する。

 まあ炭を使っているので元から煙は出ないだろうが。


 「自由に使って貰っていいけど閉じた部屋では使っちゃだめだよ」

 「はい、解りました、火を使うときは風通しを、ですね」


 炭は煙が出ないが一酸化炭素が出るのか?、ので注意が必要だ、うん、たしかドアや窓開放では大量の炭による一酸化炭素には効果が無いはずだ。


 「うん、それじゃ僕達も朝の修練が終わったら昼過ぎまで町に行くから」

 「では、宝石のほうもだいぶ出来そうです」

 「うん、よろしく」

 「はい、では」


 頭を下げていそいそとパンテさんが屋台車に戻っていく、おや、シャサちゃんも居て此方に向いてぺこりとお辞儀をしているので軽く手を振って挨拶しておいた。


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