愛されなかった妻の逆行復讐物語

仲村 嘉高

第0話:プロローグ




 世間では、お飾りの妻として正妻と白い結婚をする貴族が居るそうです。

 なんて優しい方なのでしょう。


 巷では、第二夫人や愛妾が正妻より先に子供を産み、正妻がないがしろにされる事が有るそうです。

 自分で子供を産むなんて、なんて素直な方達なのでしょう。



 暗くて狭い使用人部屋を宛てがわれるなど、なんて羨ましいのでしょう。


 敷地内に在る別館に追いやられるなど、まるで天国ですわね。


 だって、そこには自由があるから。



 あぁ、予定より早くなってしまった。

 あれから5年。

 命が尽きる前に、彼女を呼ばなくては。

 私は綺麗な石を握り、5年ぶりに声を出す。


「────」


 音にはならなかったけれど、彼女には聞こえたようだわ。

 彼女が私の横たわるベッドの横に立っている。

「耐えた分だけ遡れるとは言ったけど、無理しろって意味じゃなかったのに」

 彼女が私の骨と皮だけになった手を握る。


「さぁ、復讐を始めましょう」


 彼女が満足そうに笑った。



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