第4話 バレンタインイブ、昼休み
昼休み。
昼食を終えた美海、芳乃、菜々子は手紙の最終チェックをする為に屋上への階段を上がった。
先週末から今日にかけて寒波の影響で雪が予想される程の寒さの中で、屋上付近は人が少ないだろうと踏んだ菜々子が二人を誘ったのだ。
●
階段の端に座り、体を寄せ合って美海が書いた手紙を読む芳乃と菜々子。傍には、三人で温もりを分け合いながら様子を見まもる美海がいた。
芳乃と菜々子は真剣な表情で手紙の文面を追い続ける。
と。
しばらく経って。
芳乃が伏せていた瞳を上げた。
少し遅れて菜々子も顔を上げ、美海の方を向く。
手にした手紙を宝物のようにそっと畳んだ芳乃が、そろりそろり、と兎がプリントされた可愛い封筒の中に戻していく。
「ど、どうだった?字、間違えたり……きゃあ!」
「みうみう!『小学校から遠峰君の事が好きでした。今年は、勇気を出してみようと思います。私は遠峰君とお付き合いしたいです。でももし、他に好きな人がいたら無視してくれて結構です。大好きです。ずっと大好きです。もしよかったらお返事を下さい。 堀美海』……いいっ!むしろ私の嫁になってえええええ!」
「きゃあ!何で読み上げるのお?抱きつくのぉ?!」
顔を赤らめながら美海にしがみつく菜々子。
その頬に、芳乃の手が伸びた。
「こら菜々子、離れろ。美海がお前みたいになったらどうすんだよ」
「ふぎゅ?!は、
「び、びっくりした!」
引きはがされた菜々子に驚き、美海は胸を押さえる。
「でも、さ。美海」
「ん?」
両手で差し出された封筒を同じように受け取り、首を傾げる美海。
「あたしは、好きなんて手紙で言う柄じゃないけどさ。気持ちがたくさん、
「ね!ね!私もぞぞぞっ!て来てる!気持ち、届くよ!」
芳乃と菜々子が美海に顔を寄せた。
ヒンヤリとしていた三人の肌が、その体温で瞬く間に熱くなっていく。
「力の限り、応援する。うちらの天使のいちゃラブ、特等席でガン見させてくれ」
「頑張れみうみう!頑張れ、頑張れ!きっと、大丈夫!」
「芳乃……!菜々子……!うん、うん!頑張るっ!」
芳乃と菜々子のエールに、目を潤ませる美海。三人は互いの制服を握りしめて、きゅうっ!と体を寄せあって離れない。
「美海。まだ泣くな……ぐす。気持ちが届いた時のうれし泣きに取っておかないと」
「んだんだっ!ふぐぅ!」
「ふううっ!……う、うん!わかった!」
三人は慌ててハンカチを取り出し、涙を拭き合って泣き笑いをした。
●
「で、いつ下駄箱か机に入れるん?ま、本チャンは明日だから無理すんなよ?」
「今日か明日成功したらいいんだからね!」
そんな、親友達の言葉に。
「今日の帰りか明日の朝に、絶対……!」
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