第4話【剣…】

 目の前に男が倒れ込んできた。腹に剣が刺さっているため、完全にうつ伏せになれず、上半身が捩れている状態だ。


「う、うわぁ、あああ…!」


 俺は半パニック状態だったが、剣だけは手放してはならずと、慌ててバルムから剣を引き抜く。手こずるかと思ったが、『スッ』とあっさり抜けた。


 剣を片手に尻餅をついた状態のまま後ずさる。くそっ、腰が抜けたのか、立ち上がれない! まだ、少し離れた場所には、あの小太りの男が惚けて立っているのに!


「え……バルムさん、死んじゃったのか?」


 激怒して襲い掛かってくるかと思っていたが、小太りの男ガバルは突然大声で笑い始めた、大爆笑といった感じだ。


「ヒャーッハッハッハッ!! マジか! バルムのやつガキに殺されやがった!! ヒーッ! マジかよ!! ヒーッ! ざ、ざまぁねーな!! アーハッハッハ!!」


 予想外の状況に俺は唖然としながら、の後、部下たちに冷たく笑われていた苦々しい日々の記憶が脳裏を掠める。皮肉な共感が少し冷静さを取り戻す。


『ここがどこか知らんが、どこの世界も同じだな……』


 剣を片手に立ち上がり、未だ爆笑しているガバルに声をかける。


「……よっぽど嫌いだったんだな、コイツのこと」


「うおっ、急にびっくりするじゃねぇか! おお、コイツは本当にクズでよぉ、うまい話は独り占め、悪りぃことは手下のせい、ちょっと剣の腕がたつからって調子に乗りやがって! そのくせ、口では上手いこと言って、下のもんから慕われて、自分の勢力をデカくしようなんて考えてるんだから、始末に負えねぇ! ま、誰もこんな奴の口から出まかせなんか信じちゃいないがな! それによぉ…」


 悪口が止まらない……な、なんか、さっきから俺の心にグサグサと突き刺さってくるんだけど……同族嫌悪、間違ってなかったな……

 と、人知れず心にダメージを負っていると、


「……にしても、ようやく俺にも運が向いてきたなぁ~」


 ガバスは俺を舐め回すかのように睨め付けた後、腰に下げていた剣抜き、ニヤニヤしながら近寄って来る。


「やめときなよ、嬢ちゃん。剣なんて持ったの初めてだろう? 俺もバルムほどじゃないが、剣は使える。なんせ、人を殺して奪って、飯食ってるからなぁ……」


 俺が剣を持っているからか、剣を構え、多少慎重な足取りで近づいて来る。


 先ほどの半パニック状態からは回復した、というか、もはや感覚が麻痺してるのだろう。もちろん剣など持つのは初めてだが、とりあえず、中学の時、体育剣道で習った中段の構えをとる。


 落ち着いてかまえをとると、不思議と初めて剣を握ったようには思えなかった。妙に―—手に馴染む。


「てめぇっ!」


 俺が剣を構えたことにイラついたのか、ガバスは急に打ち掛かってきた。咄嗟に漆黒の剣を掲げて防ぐが、衝撃が手に響き、骨まで軋みそうだ。


『うぐっ…重い…そりゃそうか、鉄の塊で撃ち合ってんだもんな!』


 必死にガバスの剣撃を凌ぐ。身体は不思議と自然に反応しているが……頭が全く追いつかない。どう動いていいか、脳が命令を出せない感じだ。幸いなことに、奴は俺を斬ろうというより、明らかに俺の剣を弾き飛ばそうとしている。そんなに俺を無傷で手に入れたいのか! 気持ち悪い!!


『くそっ! どうすりゃいい? このままではジリ貧だ… くそっ、剣を…剣……』


 頭の片隅に浮かぶ木片にまた【剣…】の文字が……とっさにその【剣…】という文字に意識を集中する。


「てめぇ、いいかげん!!」


 ガバスは焦れたのか、大雑把に剣を大振りしてくる。俺は一度その剣を受け止め、すぐに片足を引いてガバスの剣を受け流す……やつは体勢を崩し、多々良たたらを踏んだ。


「てめぇっ」


「語彙力ねぇな!!」


 奴が踏みとどまり、こちらを向いた瞬間、俺は軸足を中心に半回転し、奴の脇腹を滑らかに薙ぎ払った。


 スパンッ!!


「…………は??」


 ガバルは……真っ二つに割れた……





――――――――――――――――――――

【あとがき】

 古き良き異世界転生ものが好きで、書き始めちゃいました。お暇なときにでもフォローや『★★★』いただけると書き続けるモチベが爆上がりします! よろしくお願いします!

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