4品目 猪カツのフレッシュトマトソースがけ

 暫くチビ虎と遊んでいると大分辺りが暗くなってきていた。そろそろ砂浜戻らないと暗くなってしまうから帰ろうとすると、大分親虎の体調も良くなってきたらしく、スッと立ち上がりチビ虎の首を優しく噛んで持ち上げた。


 そのまま後ろに振り向いて歩いて行った。俺も親虎達が見えなくなったら砂浜に戻ろうとしていたら、急に親虎が振り向いて片手を挙げてクイッとされた。


 多分だけど付いて来いってことかな?そう思った俺はタライ二つを担ぎながら親虎に近づいていくと待っていてくれて、そのまま親虎の後を付いて行くことにする。


 向かってる方向からして、どうやら島の中心部に進んでいるみたいで、親虎の後を暫く着いていくとかなり開けた場所に着いた。そこには小さいながらも山の湧き水が溜まって出来た池があった。


「おぉ!こんな場所があったんだな。ここがお前らの住処って事なのか?」


 当たり前だけど親虎から返事が返ってくるはずもなくて、池の近くにチビ虎を離して自分は地面に寝転んで俺の方を見て、アゴをクイッと動かした。多分だけどここで夜を過ごせといわれてるみたいだった。


 佐藤も日記に書いていた、絶対に夜は森に入るなという警告もあったけど、親虎が住処にしてるんならここは安全なのだろう。お言葉はもらってないけどありがたくここに今日は泊まる事にするか。


 もうすっかりと辺りが暗くなっていたけど、この池だけは蛍のような虫が池の周りを飛んでいて意外と明るかった。俺は生まれてからずっと都会から出た事もなかったから蛍を見たことは初めてでその光景が幻想的でただただ見とれていた。


 俺は池の周りでチビ虎が光っている蛍を捕まえようとしているのを見ながら、今日の夜は何も食料を持っていないから、魔石を使って食料を調達する事にした。


「フライパンとか持ってきてないからな。この島に数日しか居ないのにもう米が恋しくなってしまってるわ。という事で今日は牛丼でいいか」


 魔石を使って牛丼を調達した俺は、久しぶりの米という事もあっていつもよりかつ丼が美味しく感じた。やっぱり日本人は米を食わないとなんか落ち着かないよな。そんな事を考えているといつの間にか目の前に親虎の顔がある。


「うわっ!ビックリした。なんだお前も腹が減ったのか?しょうがないな。さっき食べたキャットフードでいいか?」


 そう聞くと首をフルフルと横に振って俺がさっき食い終わった空になった牛丼の皿を口で咥えて俺に押し付けてきた。明らかに俺の言葉に反応したかのような仕草をしてきたからかなりビビった。


「え‥‥‥?お前言葉分かるのか?」そう聞く俺への答えだと言うように舌で俺の顔をひとなめしてくる。


「‥‥‥。まぁ魔法もある世界みたいだし言葉を理解する魔物が居てもおかしくないのか?しょうがないな。お前は身体が大きいから牛丼特盛3つを食べさせてやろう」


 再度魔石を使って特盛牛丼を三つ調達して親虎の目の前に持っていくと食べづらそうにしていたから、タライに牛丼を三つ分入れてあげて、もう一つのタライには池から水を掬って入れてあげた。


「なんかキャットフードの時より食うの早くないか?しかし、いつまでも親虎とかチビ虎じゃ呼びづらいよな。なぁ名前つけてもいいか?」


 美味しそうに食べながらも俺の話を聞いてくれてるみたいで、俺の事をまた舌でベロンと舐めてきたんだけど舌がザラザラしてて結構痛い。


 親虎から了承?をもらった俺はこの2匹の黒虎に似合う名前を考える事にした。


「親虎はそうだな‥‥‥クロ、ノワール、【ノワル】でいいか?それとチビ虎は性別はどっちなんだ?んー良く分からんからお前はどっちでもいけそうな名前で【ゴマ】だな」


 ノワルも俺が付けた名前に特に文句はないようで、名残惜しそうに牛丼が無くなったタライをまだ舐めていて、ゴマはノワルのおっぱいをフニフニしながら寝ている。


 俺もノワル達から少し離れた地面で寝ていたら、ノワルに手でグイッと引っ張られて傍に寄せられた。どうやら自分の傍で寝ろって事らしいから、遠慮なくフッカフカの毛並みを枕にして寝る事にした。



 ◇





 膝の重みで目が覚めた俺は、足元に目を向けるとゴマが俺の膝の上で丸くなって寝ていた。その姿がなんか可愛くて朝から俺は癒された。いつの間にかノワルは居なくなっていてキョロキョロと探していると、森の木々の隙間からは朝日が零れていて池を照らしていて、まるで光のカーテンのような幻想的な光景に俺は見とれていた。


 寝ているゴマをモフモフしていると、寝ていたゴマも大きく欠伸をしながら起きてきて、尻尾を振りながら俺の顔をベロベロ舐めてきて暫くゴマと遊ぶことにする。


 後ろからガサガサと草を掻き分ける音がして振り向くと、ノワルが口に猪を咥えながらこちらに歩いてきている。


「おはよう。もう狩りもできるくらい元気になって良かったな。これからノワルは朝食か?」


 ノワルは狩りをしに行ってたみたいで、俺の近くに来ると口に咥えていた猪を俺の近くに置いてくる。


「まさか俺に朝飯の準備をしろと?」ノワルはそうだといわんばかりにベロンッと顔を舐めてきた。


「朝飯を作るのはいいんだけど、ここには調理器具なんて持ってきてないから、少し歩くけど俺の拠点に行って朝飯でも食べるか?」


 尻尾をユラユラとしながら俺の顔を再度舐めてきたから、それで良いって事なんだろうな。しかし、舐められすぎて顔がヒリヒリするんだが。


 ノワルには猪を口に咥えてもらって、俺はゴマを抱っこして砂浜の拠点に向かった。道中では他の動物にも会う事はなくてすんなりと砂浜の拠点に着いた。


 昨日一日留守にしたから、テントとか動物に荒らされていないか心配だったけど、昨日の状態のままになっていたから大丈夫そうだった。


 ノワルに手伝ってもらいながら猪を木にぶら下げて血抜きをしていると、ゴマは初めての砂浜と海のようで砂浜で走り回ったり、波を追いかけてずぶぬれになったりしていて楽しそうにしている。


 さて、朝食のメニューはどうしようか。朝だしなるべくさっぱりとした感じの方がいいかな?


「ノワルはトマトって食べれるか?」魔石からトマトを調達してノワルの目の前に持っていくと少し、匂いを嗅いでから一口でバクンッと美味しそうに食べていた。


「野菜も食べれるんだな。じゃあ今日は【猪カツのフレッシュトマトソースがけ】にするか」


 そう決めた俺は、その他の材料を魔石から調達して準備を始める。


 血抜きが終わった猪を手早く解体して調理にかかる。まずは、地球の猪なんかは血抜きの具合とかにもよるけど、結構匂いが臭かったりするから一センチくらいにそぎ切りにした少し酒につけておく。


 十分くらいつけたら水気を軽く取ってから塩コショウで下味を軽くつけて、小麦粉、卵液、パン粉の順に肉をつけていく。この時は好みにもよるだろうけど、俺はしっかりパン粉をまぶす派だから衣を厚めにする。


 そんで百八十℃になった油に入れて二~三分、きつね色になるくらいまで揚げていく。猪は体内に寄生虫がほぼいるからそういうのが不安な人はしっかりと中まで火を通した方がいいぞ。


 油で揚げている間にトマトソースでも作るか。このトマトソースは結構揚げ物にも合うし、サラダなんかにかけてもイケるから是非試してみてくれ。


 トマトとピクルスを粗くみじん切りにして、塩コショウを味見をしながら自分の好みになるまで入れる。後はオリーブオイルを一回しして混ぜ合わせればトマトソースの完成だ。


 これをきつね色になった猪カツにかければ完成だ。


 俺が調理している間、後ろで涎を垂らしながら待っているノワルのプレッシャーは凄かったけど、なんとか完成することができたな。


「熱いからゆっくり食べるんだぞ?」そう言いながらも俺は料理をする手を止めない。今出しただけじゃノワルの腹は満たせないだろうし、まだまだ猪の肉が大量にあるからだ。


 ノワルが勢いよく猪カツを食べるから俺の料理が間に合わず、その度に俺の方に顔を向けてくるのはやめて頂きたいんだが・・・プレッシャーが半端じゃねぇ・・・。


 そうしてノワルの腹を満たすまで料理をし続けた俺が朝食を食べれたのは昼になってからだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

今日の晩御飯は豚カツにしよう!!

スーパーにダッシュッ!!

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