第6話 怪しさ全開の人

 ちり取りをひっくり返したまま、私は呆然と入り口に立つ人物を見た。

 浅黒い肌に、大きな花の柄が入ったシャツ。ハーフパンツにサンダル。顔には色眼鏡がかかっていて、髪型は……なんて言うの?葉巻みたいにくるくるした髪の束がいっぱい……変な頭。表情は笑顔なんだけど……全体的に怪しすぎる。

 私はその人にニッコリと愛想笑いを送ると、くるりと背中を向けて店の奥へと駆け出した。



「敵襲!敵襲ーーーーーー!!」



 店とはドア一枚で隣接している住居部分に飛び込むと、ダイニングで私の作った朝ごはんを食べていたアヅマさんが盛大に噎せた。

「げほっ、ごっほ……な、何なんだいきなり!?」

「大変ですアヅマさん!なんか変な人が来てます!!」

「…………あァ?」

 やだ、また変なこと言い出しやがったコイツっていう目で見てくる。いやでも本当なんだって!怪しさ大爆発の人が来てるんだって!

「きっとどこぞのモンスターに違いありません!早く倒さないと!!」

「日本にモンスターなんぞいねぇよ」

 朝ごはんは、何でもいいってアヅマさんが言ったので、私の世界にもあるパンを焼いて、タマゴを目玉焼きにして、野菜を適当にサラダにした。よく分からない食材もあったんだけど、それはまたおいおい調理法を勉強しようと思う。

 ……じゃなくって!

「とにかくすぐに来て下さいって!お店荒らされたら困るでしょっ!?」

「あっ、ちょっ、まだ食ってんのに…!」

 ブツブツ言うアヅマさんの首根っこを掴んで、私は店へとずるずる引き摺っていった。


「……なんでぇ、御手洗じゃねぇか」

「あっ、おはよーござっス、先生」


「知り合い!?」

「従業員だ」

「はーーーーーーー!?」

「先生、そこのギャルはなんスかYO?」

「YOはいらねぇ、YOは」

 ミタライさんとかいう人がこっちに目を向ける。正直怪しすぎるのでこっち見ないでもらえませんかね。

「従業員って……アヅマさん」

「おぅ御手洗、コイツは新しい従業員だ。

 名前は……えぇっと何つったかな、ユ、ユ……あぁ、ユミとかいったっけな」

「ルを忘れてます。ユミルです」

「あー、そうだっけか。

 もう面倒臭ぇからユミでいいだろ」

「HO!ユミちゃんスか。

 自分、御手洗っていうっス。

 仲間からはミタって呼ばれてるっス」

 なんかミタライさんから握手を求められてるんだけど、応じていいんだろうか?

 迷ってると、焦れたアヅマさんが私とミタライさんの手を掴んで無理やり握手させてきた。

「おぅ、これから一緒に働く従業員なんだから仲良くしな」

「えぇぇぇ!?コレとですかぁぁ!?」

「HA!辛辣ゥ」

 思わずしかめっ面でミタライさんを指差して、後で考えるとだいぶ酷いこと言ってしまったんだけど、ミタライさんは特に気にせず軽く肩を竦めるだけだった。

「ヨロシクっス、ユミっち。

 分からないことはなんでも聞いてくれYO!

 仲良くやろうZE!」


 あれー?おかしいなー?

 不安しかないぞ??

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