第131話~勉強の合間の休憩~
カノンが原さんに、勉強メニューやすごろく式の勉強法を渡して、二週間後の中間テスト前日の放課後。
中間テストは全三日間の日程で、テスト前日からテスト二日目までは全部活動がテスト休みに入り、カノンが所属している空手部ももちろん休みだ。
そのテスト前日の放課後、カノンと原さんは教室で勉強をしており、今は小休憩中だ。
ちなみに峰岸君は、習い事が外せず、今日はこの場にいない。
「いのりちゃん、明日はいよいよテストですが、意気込みや調子はどうですか?」
「ふっふっふ。カノンさんの勉強メニューと、すごろくのおかげでいい感じだよ。これなら、いっぱい点取れるかも!!
カノンさんが考えたこの勉強メニュー、ちゃんと休憩も睡眠もあって、無理なく出来て、本当にこんなペースで大丈夫かなと思ってたんだけど、全然いい!断然いい!本当、ありがとう!」
「ふふっ。無理は禁物ですからね。適度な休息は大事ですわ。」
「うん!それに、この、すごろく勉強法も、すごく楽しい!!ゴールした後のプレゼントも嬉しかった!!カノンさんの手作りお菓子!!一週間経たないうちにもう全教科分のマスが色塗り終わっちゃって…。」
「さすがにそのペースはわたくしも驚きました。第二弾を作ってお渡しする事になるとは…。その後の復讐のまとめテストも満点でしたし、中間テストも満点取れるのではないですか?」
「えへへ~。それほどでも~。」
「ふふっ。でも…勉強メニューや、すごろくだけではない、テストへの楽しみがあるように感じますわ。」
「うーん…テストの楽しみというか、テスト後…かな?楽しみなのは。」
原さんの「テスト後の楽しみ」という言葉を聞いて、何かあったかなと考えたカノンは、一週間前のホームルームで知らされた内容に心当たりがある事を思い出した。
その知らせとは、テスト後の平日の授業で特別授業をするとの事だ。
内容は、三年生にもなった事もあり、女子はお化粧の仕方を、男子は髪のセットの仕方を、その他にも男女の身だしなみに関する事を外部から講師を招き、行うというものだった。
原さんはその授業をとても楽しみにしており、テストを頑張れるモチベーションの一つにしていた。
「そういえば、カノンさんの勉強、中間テストの範囲もやっているけど、その他にも参考書?を開いているよね。これに関しては医学だし…。こっちは…漢方?それに…なにこれ…全部英語で書かれた紙。」
「英語の方は医学に関する論文ですわ。全然読めません…ですが、おそらく美桜さんが以前、英語を猛勉強をしたと思うのです。感覚的な問題なので、言語化が難しいのですが、所々読める部分もあるのですよ。それをつなぎ合わせて解読していますの。」
「すごい…英語の論文を…解読…。でも、どうして医学や漢方を?」
「この間の生物の授業を受けている時に、生物学は医学に通ずるのではと思いましたの。わたくしの国で、医学の発展に繋がればと思いまして。わたくしの記憶に叩き込んでいるのです。漢方は、わたくしの国に似た植物がありますの。それを活用できればと思いまして。」
「なるほどなぁ。カノンさん、私達と数か月しか誕生日が変わらない同い年なのに、自分の国の為に何事にも取り組む姿勢、感心するなぁ…。」
「公爵家ですもの。地位と権利が与えられている以上、国の為に、民の為に、出来る事を全力で行う所存ですわ。その為には知識が必要ですの。それがなければ何も始まりません。」
「そっか…知識の蓄え…。カノンさん、
カノンの机の上には、参考書だけではなく、ルーズリーフいっぱいに書き込まれた勉強をした跡であろう書類が数十枚と積み重なっていた。
その光景を見た原さんは呆れつつも、心配の表情を見せた。
「けん…なんですの?」
「けんしょうえん。文字を書き過ぎて、手首を痛める症状の事だよ。」
「…なるほど…手首を痛めたら、勉強が出来なくなりますわね。ありがとうございます、気を付けますわ。あとで、けんしょうえんについても勉強します。」
「う、うん…。カノンさん…本当に…ハイスペック女子になりつつあるね…。勉強が出来て、空手が強くて、料理が出来て、面倒見がいい…もはや欠点が見えない。」
「……え、それ、どなたの事ですの…。わたくし、そんな超人ではありませんわ。勉強や空手も全然時間が足りませんのに…。一日が24時間だと言うのが憎いくらいですわ。お料理もまだまだですし、まさに今、技術向上のために特訓中ですのよ。おもにお菓子作りですが…。」
「カノンさん…無自覚…。ふふっ…でも、カノンさんらしい。よっし、休憩もこの辺で、明日のテストの為にもう一息頑張るぞ!」
「はい!わたくしも満点目指しますわ!!いのりちゃんにも負けませんわよ。」
「え~どう見ても負けるのは私なのに、敵意向けられた~。」
「ふふっ。テストを受ける生徒の皆さん、全員がライバルですもの。」
「出た!カノンさんの負けず嫌い!」
二人は顔を見合わせ、お互いに吹き出し笑った。
原さんの宣言通り、休憩もそこそこにして、また勉強を再開した二人だった。
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