第127話~学校生活再び~

カノンが大事をとって学校を休んだ翌日。


カノンは少し早めに起き、ルームウェアからスポーツウェアに着替え、ストレッチを少しして、下におり顔を洗って、家の周辺を軽くランニングした。


「(今日から学校生活ですわ。空手も始まります。………自分を磨いて高みを目指す…悪くないですわ。)」


カノンは数十分の軽いランニングを終え、帰宅しシャワーを浴び、制服に袖を通し学校へ行く準備をしてダイニングテーブルに向かった。


ダイニングテーブルに着くと、すでに皆が揃っており、朝食の用意も済んでいた。

カノンが席に着くと、とおるが声を掛けた。


「おはよう、カノンさん。今日から学校だけど…あまり、無茶はしないでね。」


「おはようございます、とおるお父様。ご飯、ありがとうございます。大丈夫ですわ!無茶はしません!美桜さんの体ですもの!」


カノンの言葉に、皆は不安が拭いきれていないような表情を浮かべた。


「?…わたくし…何かおかしな事…言いましたでしょうか。」


「あ~…いや…その…。俺らが口酸っぱく無茶するなと言っているのはだな…その美桜の体と関係しているんだ。」


かなめが言いにくそうに、美桜がオーバーワークで倒れた事を説明した。


「そんな事が…。美桜さん…わたくしが空手を始めたから…しなくてもいい無茶を…。」


「……少なくとも、お前のせいじゃないから気にすんな。あいつはあいつで、楽しそうにしてたよ。」


かなめの説明に表情が曇ったカノン。

その様子を見たかなめは、カノンに言葉をかけ、カノンは少しだけ表情が戻った。


朝食を済ませ食器も片し、家を出る準備が出来たカノンは皆に声を掛けて家を出た。


「(久しぶりの教室でのお勉強…楽しみですわ。そういえば、美桜さんの日記に雅君とお付き合いを始めたと書いてありましたわ。聖夜の奇跡でお話していた片思いが実ってよかったです。…ですが、体は美桜さんで、中身はカノンなので、振る舞いには気を付けなければ…。)」


カノンが一人、考え事をしながら歩いていると、いつの間にか学校に着き、美桜の日記と、この世界に来た時の前回の記憶を頼りに、美桜のクラスへと向かった。


「美桜ちゃん!おはよう!もう体は平気?」


「おはようございます、いのりちゃん。もう大丈夫ですわ。ご心配お掛けしました。」


カノンがクラスに入り、声を掛けてきたのは原さんだった。

原さんは小声でカノンに美桜の席を教えてくれた。


カノンが席に着き、原さんがカノンの前の席に座り、体を半分カノンに向けた。


「二人きりの時は、カノンさんって呼ぶけど、クラスメイトがいる前では美桜ちゃんって呼ぶね!クラス内でもよろしくお願いします。」


「お気遣いありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」


「そういえば、口調はそのままでいくの?」


「はい、前回みたいにお嬢様なりきりスタイルを通しますわ!」


「ふふっ…わかった!いろいろサポートはするね!あ!勉強以外で!」


「はい!頼りにしてます。」


「おはよう。原さん、美桜ちゃん。」


「あ!峰岸君、おはよう。」


「おはようございます、雅君。」


原さんとカノンが周りを気にしながら小声で話していると、峰岸君も登校し、カノン達の話に加わった。


「……あの、雅君…わたくし…先ほどまで考えていた事がありますの。美桜さんとの事は知っています。それを踏まえて提案があります。雅君の事、今後クラスメイトがいない所では峰岸君とお呼びしてもいいでしょうか。」


「んー…。もしかして…気を遣ってたりする?気にしないで大丈夫だよ。」


「気を遣う…。そうですわね…大切なお友達の殿方に馴れ馴れしい呼び方…あまり好みませんの。お二人の邪魔になるような事…これ以上したくないですわ。ですから…。」


「……ふっ…あの時から優しい所は変わらないね。わかった、好きなように呼んで。僕も好きに呼ぶから。」


「ふふっ…名前呼びの件は、一件落着だね。あっ…丁度チャイムなった!それじゃ、また後で!」


原さんの言葉と同時にホームルームの予鈴が鳴り、二人は自分の席に戻って行った。


ホームルームが終わり、午前中の授業が始まり、一時間目は古文だった。


「(この世界…いえ、日本の言葉は相変わらず難しいですわ…。時が経つにつれて、言葉が変わるだなんて…。けど…それがまた面白いところですが…。わたくしの国も…時が経って、発展したら言葉が変わってくるのかしら。


例えば、おとうさまと呼んでいますが、その呼び方も変わるのでしょうか。…パパうえ様…おとんうえ様…ちちうえ様…おと様…。ダメですわ…どういう風に変わるかまったく想像がつきません。「変わるなら、無難に変わって、国言葉」はっ…なんだかいい感じの語句が並んだのでは?!)」


カノンは授業を受けながら、一人、悶々と授業内容を聞いたり、自分の国の事を考えたりしていた。

ようは……授業を思いっきり楽しんでいるのであった。

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