第2話~少女たちの夢~

 彼女たちは同じ夢を見た。

 真っ白な世界。


 あたりを見回すと一人の少女がいた。


「(誰でしょう、この子。

背は私と同じくらいで年も同じくらいでしょうか。


明るめの茶髪にふわふわカール、大人びてて美人で気が強そうで、お嬢様って感じの身なりです。


どこかの令嬢? この時代に? となるとコスプレ?)」


 一人で悶々と考えていると目の前の少女は話しかけてきた。


「あなたはどなたですの? ここがどこかわかるかしら?


あ、先に名乗らないのは失礼よね。

わたくしはカノン・グレイス・フローライトと申します」


 ドレスの裾を軽く持ち片足を少し後ろに引きお辞儀をし姿勢を整える。

 顔を上げた彼女はふわっと優しく微笑む。

 挨拶をする彼女の振る舞いはとても上品だ。


「(すごい、本物の令嬢みたいです。

それに気が強そうなのに話し方はやわらかくて笑顔も優しくて、顔が整っててその笑みはずるい気がします。

あ!私も挨拶しなきゃですね)」


 カノンと名乗る少女の挨拶にまたしても考え込んでしまった彼女は、自分がまだ名乗っていないのを思い出し慌てて挨拶を返す。


「わわ、私は、一ノ瀬 美桜と言います! ええっと、ここがどこかはわからないです! ですの!」


 美桜と名乗る少女は勢いよく頭を下げた。

 慌てたこともあり語尾がおかしくなってしまったようだ。


「ふふっ。

そんなに慌てなくても大丈夫ですよ?

どうぞお顔を上げてくださいな。


美桜さんとおっしゃるのね。

わたくしのことはカノンと呼んでくださいな」


 慌てる美桜を落ち着かせようと優しく声をかけるカノン。


 その声の柔らかさに次第に落ち着きを取り戻し、ゆっくり顔を上げる美桜。

 少し落ち着きを戻した美桜を、今度はカノンがまじまじと見て少し考え込む。


「(みおさんとおっしゃるのね。

背や歳はわたくしと同じくらいかしら。

性格はあわてんぼさん?

おとなしそうにも見えるわ。


暗めの茶髪で肩までの長さのストレート。

きれいな髪質だわ。

顔立ちは整っているのに丸く大きな眼鏡をかけているのがもったいないわね。

少しお化粧をしたら、、、化けるわね)」


 美桜を見ながら何かを企んでいるような、何やら楽しそうにしているカノン。

 そんなカノンとカノンを不思議そうに見る美桜。


 二人は目が合うとなんだかおかしくなり笑顔がこぼれる。


「ここがどこかはわからないけど、きっと夢を見ているのね。

嫌なことが長く続いて、らしくないことをしたの。

でもそのおかげで久々に楽しい気持ちになれたわ。

ありがとう、美桜さん」


「私もです!

私も、嫌な事が多くて普段ならしない事をしました。

けど、そのらしくない事をした事で憧れのご令嬢が夢に出てきて、それにお話もできてすごく楽しいです!

こちらこそ、ありがとうございます。

そのらしくないことなのですが、本に関係することで、、、聞いてくれますか?」


「ぜひ、聞かせてください」


 カノンは美桜の言葉に小さく頷いた。


 美桜はカノンにお礼を伝え、憧れである令嬢の姿の彼女ともう少し話をしたくて『らしくない事』の話しを始めた。


 美桜の話を聞いているカノンも思い当る本を持っていると話し、二人は同時にらしくない事は何かを同時にいった。


「「おまじない」」

二人はまたしても笑いあった。


「二人とも同じおまじないをしていたなんてびっくりです。

私たち、気が合いそうですね」


 本当に楽しそうに笑う美桜を見てカノンも同感という様に笑顔を向けた。


「ええ、本当にそうですわね。

美桜さんがお友達ならよかったですわ。

そうだ! 今からでも遅くはないわ! わたくしとお友達になってくださらない?

夢の中で一夜限りだとは思いますが……」


 カノンは少し寂しそうに美桜に手を差し出した。


 美桜も差し出されたカノンの手を優しく取った。


「はい!ぜひ!私とお友達になってください」


「「たとえ夢の中でもあなたに逢えてよかった」」


 二人はお互いに微笑み合い、同時に伝えた。


 あたりの風景がぼんやりし始め二人は次第に現実の世界へと戻っていくのだった。

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