第7話 俺の命は串焼きより安いのかな?
ヤケクソになった男は横なぎを繰り出してくるが。
ガラ空きの腹を強化した拳で殴りつけると骨が折れた感触が伝わった。
「ぐあっ!! ありえねぇ、俺がこんなガキに……」
「あ、兄貴ぃ!!! うあぁぁぁああああ!!!!!!」
戦闘不能にしようと男に歩み寄るが三下の男が剣を振り回し半狂乱になりながら切り掛かってきたので避ける。
すると振り回していた剣は俺の後方にいた男に突き刺さり血が溢れ出す。
「テ、テメェ……!!!!」
「ああ、あ、兄貴……ヒッ!!」
三下の男が後ずさると当たりどころが悪かったのか上級冒険者の男は地面に倒れ込み動かなくなった。
俺……何もしてないんだが?。
「あ、そ、そこまで!!!」
「ノエル!! 怪我はないか? 痛いところは? 串焼きは?」
「ない!」
決闘が終わったのを見計らってセレナがバタバタと駆け寄って心配の一つぐらいすると思ったら……ダメだ、コイツの頭の中は串焼きのことしかねぇ!。
「見事だ!! 久しぶりに面白いものを見せて貰った」
もう今日はセレナとパーティー契約を結んでから宿屋を探そう思っていると、拍手をしながら歩み寄ってくる男がいた。
「初めまして、私はこのギルドを統括している者だ、ギルドマスターとも呼ばれている」
ギルドマスター!? よりにもよってめんどくさい奴に見られてしまったな、とりあえず挨拶だけして帰る……訳にもいかないか……。
「先日、冒険者になったノエル・ハーヴィンです」
ここは悪い印象を与えて目を付けられないようにしないと……。
「おいノエルなに急にかしこまっているんだ? 誰だこのおっさん?」
俺が間違っていた、先にこの口の悪い幼女を黙らせないといけないようだ。
「セレナ、この人はこの国のお偉いさんだ、大人の話があるからあっちで遊んでてくれ」
「ふーん、早くしろよ?」
なにを思ったのかセレナは受付嬢の元に駆け寄り、ギルドの制服で強調された胸を叩き出した。
羨ましいことしやがって……たゆんたゆん揺れる胸を見ながら思った。
子供には優しくしないとな後で串焼きをたらふく食わせてやろうと。
俺は揺れる胸に夢中になっていた、やっぱりおっさんより美少女だよな。
ギルドマスターから完全に視線を外し、セレナを応援していると。
「君達、変わってるね……」
セレナだけではなくいつの間にか俺まで変人扱いだ。
心の中でそう思っているとギルドマスターが真面目な顔になり。
「さて、実は君たちにお願いがあってここにきたんだ」
「最近、北の遺跡に魔族が住み着いたので追い払って欲しいんだ」
魔族は身体能力や魔法に優れ、ほぼ全ての人族と敵対している魔界の住人だ。
ほとんどの魔族は魔界から出ないはずだが、どうして人間界なんかに……まあ何にせよFランク冒険者の仕事じゃないし断ろう。
「すまないが断る、どう考えてもFランクの仕事じゃない、そういうのは勇者あたりに頼んでくれ」
俺が冗談まじりにそう言うと深刻そうな顔をしたギルド長が口を開く。
「その勇者様から報告がないから君にお願いしているんだ、Aランク冒険者をあっさり倒してしまった君にね」
確かにウィル達の実力を考えると難しいかも知れないな、あのダンジョンに苦戦するようなら魔族は倒せないだろう。
「どうかな? もし引き受けてくれるんだったらここであった事は内密にして彼はモンスターに殺された、という事にしようじゃないか?」
「いや、俺は何もしてないんだが? あいつらが勝手に同士討ちしただけだろ?」
「これは形式上君と彼の決闘だったトドメを刺したのはキミではないとはいえ、君が勝利した事には変わりない」
つまり遠回しに面倒な事になりたくなかったら依頼を受けろと、そう言ってるって訳だ。
新入りが上級冒険者と決闘して勝ったなんておおやけになれば平和な暮らしなんぞ絶対にできない。
「分かった、その依頼引き受けよう」
「ありがとう、報酬には期待していてくれ」
俺の平和な暮らしは当分、先になりそうだな……。
その後、まだ受付嬢の胸で遊んでいたセレナを呼び戻して、パーティー登録をするためにアーシャの元へ向かうと胸をガン見していたことがバレたのか怖い笑顔で。
「随分と楽しそうだったみたいですね」
などと言われたりしたが、無事に登録を済ませ現在、宿の部屋の中でくつろいでいる。
ちなみにセレナは隣の部屋だ、子供で食い意地が張っているとはいえ“一応“女の子だからな“一応”だが。
そして夜中扉を叩く音が聞こえた。
「ノ、ノエル……いるか? 入るぞ?」
静かにドアが開くと髪を解いたセレナが入ってくる。
「セレナかどうした? 子供は寝る時間だぞ、俺はもうぐっすりだよ」
どうにも様子がおかしい……赤い顔をして何だかモジモジしている、なるほどこれは……。
「ああ、そういうことか」
「えっ! な、なんで……い、いや、分かっているなら話は早い……私と一緒に寝…………」
「便所だろ? 大でも小でも付き合ってやるよ」
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