追放サイドストーリー2




 敗走をした夜、俺たちはあれから一言も話すことなく焚き火を囲んでいた。


「お前ら! たかがゴーレム如きに何してやがる! これじゃいい笑い者だ!」


「申し訳ありません勇者様!! このグランバルド! いかなる処分も受け入れましょう!」


「ウィル様……申し訳ありません!! 私が敵の接近に気づかなかったばかりに不覚をとってしまいました!」


 怒鳴る俺にグランバルドは頭を地面に擦り付け、カーリアは泣きそうになりながら自らの非を認める。


 悪いのは俺じゃない! 役に立たなかったコイツらだ! くそっ! イライラするぜ、今日はもう寝るしかねぇ。


「分かったならいい……とりあえず明日は王都まで戻って父上に報告する」


「勇者様! 寛大なお心に感謝いたします! 火の番は私めにお任せください!」


「ウィル様ありがとうございます!」


 俺達は次の日、王都に向かう途中でも体の不調は治らずただのオークの群れにすら苦戦する始末だった。


 クソ! あのダンジョンに行ってからずっと調子が悪い……。


 なんだってんだよ! これじゃあ魔王討伐どころか聖剣を集める事すら出来やしねぇ!


 俺は焦りを感じながら今も重い体を動かした。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「よく帰った我が息子よ! お前の活躍は聞き及んでおる……其方たちもご苦労であった」


「「ハッ!!有り難く!」」


 俺の横で跪いている2人が緊張しながらも声を揃え返事をする。


 まず鍛治師の解雇を要求し剣も作り直させるように計らってもらう事になり。


 敵を感知する魔道具も王宮に住む魔導士達に依頼するとのことで話は終了した。


 王宮を出るとグランバルドが話しかけてくる。


「勇者様、準備に数日かかるとのことでしたがいかがしますか?」


「決まってんだろ、あのふざけた剣を作った奴のところに行くんだよ」


 俺はこれから起こることを思い浮かべ、ニヤリと口角を上げながら鍛治師の元へと向かった。


「ウィル様、ここですの? 随分と質素な鍛冶屋ですわね……」


 オンボロの扉を蹴り強引に開けると、あの剣を作ったであろう親父が情けない声を上げた。


「ひっ! こ、これは勇者様! お久しゅうございます、今日はいかがされましたか?」


「テメェよくも俺に不良品を押し付けやがったな! テメェのせいで危うく死ぬところだったんだぞ!?」


 俺が怒鳴り散らすと後ろに控えていた家族と思われる女とガキが体を震わせ、亭主は驚いた表情をしていた。


 ククッ! 退屈しのぎと溜まった鬱憤を晴らしてやる!。


 俺は近くにあった木の椅子を蹴り破壊すると、グランバルド達にも目配せをし店の物を壊すように指示する。


「ゆ、勇者様っ!! どうかおやめ下さい!! 不良品とは? お話を詳しくお聞かせくださいませ!」


 状況が全く飲み込めていない亭主は店を破壊している俺たちに、静止をかけ説明を求めてきた。


 俺は亭主のほうを向き剣のことを罵ってやった。


「テメェが作った剣は設計ミスだ! あの剣を使うと体重くてしょうがねぇ! 勇者であるこの俺にもしもの事があったらどうしてくれんだ! ああ?」


「け、剣と言いますと私が王宮に献上したオリハルコン製のものでしょうか? あの剣は設計ミスなどではありません!」


 コイツ何言ってやがるあの剣は重すぎるどう考えても設計ミスだろうが……俺様に意見しやがって!。


 あのクソ野郎に言われてるみたいでイライラする! くそが!。


 俺が文句を言おうとすると、グランバルドとカーリアが俺の擁護をし亭主に罵倒を浴びせる。


「貴様! たかが鍛治師の分際で勇者様に意見するとは……このお方を誰だと思っている!!」


「そうですわ! まともに剣も作れない鍛治師なんていてもいなくても同じですわ! 勇者様この無礼者は処刑してはいかがでしょう?」


 カーリアの発言で亭主の顔が青ざめ、後ろにいた女とガキもびくりと反応する。


「も、申し訳ありませんでした! ど、どうかお許しを!」


「ククッ! 安心しろ、俺はカーリアほど残酷じゃない……お前らは王都から追放する! 優しいだろ? 俺は勇者だからな!! ハッハッハッ!!」


 亭主が青ざめた顔のまま固まってしまった。


 どうやらあげてから落としたのが効いたらしい、チッ! つまんねぇな鬱憤も晴れたしここまでにしておくか。


「じゃあ、これくらいで勘弁してやるよ! とっとと荷物をまとめて出ていけよ?」


「お、お待ちください! どうかお考え直しを! 私にはいつも支えてくれる妻とまだ小さい娘がいます!」


「追い出されてしまっては家族をどうやって養っていけば……!」


 店を出ようと思った俺の足に亭主がしがみ付きそんな事を言ってくるが知ったことか! コイツのせいで大恥をかいたんだ!


 むしろこの程度で済ませてやるのを感謝して欲しいぐらいだ!


「ああ? そんなこと知るかよ! テメェが雑な仕事をするから悪いんじゃねぇか! いい加減に離しやがれ!」


 俺はしがみついていた亭主を蹴り飛ばしその店を後にした。


 ああ、ここ最近かなり鬱憤が溜まってたからな……これでスッキリした。


  俺はこの時思いもしなかった、まさかこの行動が自分の首を絞める事になるなんて……。

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