第160話 30Fはまさかの?
『29F』の地図の書き写しが終わり、俺たちは30Fへ上がった。
『30F』、そこは今までとはまるで異なった空間だった。
階段を登ったさきはガランとした大きな広場があるだけだった。
通路も壁もない。
魔物も見当たらない。
まさか…ボス部屋?
ファンタジー小説のダンジョンによく出てくる、大きな部屋の中央にボスが出現、そしてそのボスを倒すまでこのフロアからは出られない。
慌てて後ろを振り返り階段への扉(壁)を押し開けようとした。
……開いた。普通に。
階段も降りられるし?
あと広場の中央にボス、出てこんし?
俺たちを階段近くに残し、ゴルダや星影の面々は広場の探索を始めた。
かなり広いな、ここ。
日比谷公園くらいありそうな広さだ。
あ、ほらあそこに噴水…じゃなくて泉が噴き出しているところもある。
というかそれ以外何もない。
ボスも出てこないな。
ボス戦は時間制か?
ゲームによってはボスタイムとかあったよな?
「お腹空いたね〜」
「ああ、そうですね。もう15時過ぎてますね」
昼抜きで周ってたからな。
ゴルダ達は腹減らんのかね?
てか、この世界の人らは一日三食という概念もないそうだからな。
ゴルダ達が戻ってきた。
「ここは、もしかすると安全域かもしれん」
「安全域?」
「にしても広過ぎないかしら? 本当に安全なのかしら」
「安全域とは?」
「ああ、ダンジョンの中で稀に発見される、魔物のいない安全な空間だ」
「地下ダンジョン、洞窟ダンジョンでもたまにあるわ。一定のある空間だけ魔物が寄ってこないのよ。ダンジョンに潜る冒険者はだいたいそういうとこで休憩や野営をしたりするわ」
「でもここは広すぎだろう。塔型だからなのか?」
「わからん。念のため階段付近に野営する」
「え、今日は泊まり?街に戻らないんか」
「明日ここまで来るより今夜ここで明かして、明日も上がれるところまで上がって行きたい」
「そうね。泉もあるから水には困らないし」
「あの、トイレ…行きたい、です」
キックがキョロキョロとトイレを探す。
もちろん無い。
ダンジョンにトイレがあったらビックリだ。
「私も行きたいですー!」
ナオリンが手を挙げた。
ゴルダの指示で山さん達はアイテムボックスに入れて置いた野営の道具を出した。
階段の直ぐ横の壁ギリギリにテントなどを設置した。
テントから壁沿い右手側に10mほど行った場所に衝立を立てて穴を掘り、トイレを設置した。
テントのすぐ横には長テーブルとパイプ椅子を出した。
俺らの弁当屋から持って来ていた弁当やスープを出して交代で食事を取った。
今夜の見張り番はゴルダとナオリン、フィルとキック、ラルフと山さん、リザイアと俺の4交代でする事になった。
俺は四番目で朝方だったのだが、いつボスタイムが始まるかとビクビクしてほとんど眠れずに交代の時間を迎えた。
ボスタイムは来なかった。
そう、ボスは出なかった。
結局ここって、安全な広場、ゲームでいうところの『セーフティゾーン』なんだろうか?
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