第108話 ブリザード

迷路岩の冒険者たちをピックアップして街の中央近くのギルドまでテレポートで送った。

地点1から5にいた冒険者を全員送ったあと迷路岩でひとり待機した。


ゴルダからの「GO」連絡待ちだ。


森林のど真ん中でブリザを出来ればベストだが、森林のど真ん中はブックマークをしていない。

真っ赤に染まったマップを見る。

とてもあの中を突っきって森の中央へ行く勇気はない。

というか、行ける気もしないが。


街から1番離れたブックは“林前”だ。

林の前もかなり赤く染まっていっている。

飛んだ瞬間にブリザをぶちかまさないと。

ちょっとでも遅れたら、自分ENDになりそうだ。

あ、もちろん、ライカンさんも一緒だ。

頼むぞ ライカンさん!(ひとりにしないでね、怖いから)




部長から念話がきた。


『こっちはオッケーだそうです。鹿野くん よろしくお願いします』


うおおお、武者震いがきた。


『おっし、行ってくる』


そう返事を返してライカン共々、林前にテレポートした。



ぎゃああああああ

周り中ゴブブブブブブブブ

俺も驚いたがゴブリンも驚いていた。

が、驚いてる場合じゃない。

すかさず魔法を詠唱した。


「ブブブブブリジャアアアアアアアドオオオオオ」


ちょっと噛んだ。


目の前が猛吹雪で真っ白になった。

ものすごい風で雪がゴブリンを巻き上げる。


ゴオオオオオオオ


「あ、そうだ、広さを確認…」


マップを見ると俺を中心に草原、林、森の半分くらいの範囲にあった赤い点が綺麗に消えていた。

ただその周りにはまだ赤い点は散らばっていた。

迷路岩の先、街の近くにも赤い点が散らばってるのがマップで確認出来た。


とりあえず迷路岩にテレポートで飛んだ。

もう少し街に近づかないと魔法が届かない。

しかし、さっきのブリザ効果がまだ続いていて、吹雪が荒れ狂う中を歩いて移動するのが難しい。


どうしようか。


ふと顔をあげるとそこには一緒に飛んできたモフモフと暖かそうな毛皮のライカンがいた。


ライカンに俺を担いでもらい、街方面へ走ってもらった。

すごいな〜、ライカンスロープ。

モフモフで暖かい上にこの吹雪の中を走れるなんて!

てか、………吹雪…いつやむの?


ゲームでは、ブリザ→モンスター死ぬ→吹雪やむ だったよね?

すぐ止んでたのに………。



マップで赤い点の近くまで来た事を確認して、また魔法を放った。


「ブリザアアアアアアドオ」



ふう。

今度は噛まなかった。

吹雪に揉まれながら安堵感に包まれた。(あと、ライカンのモフモフに包まれた)


お、街近辺の赤い点は綺麗に消えたな。

マップで確認した。


が、ヤバイ!

街が確実にブリザの範囲に入ってるようだ。

すぐ部長に念話した。


『もしもし!もしもし!こちら鹿野ですが そっち無事ですか!もしもし!ヤベえええ、街吹雪いてるよな?もしもしもしもし!寝るな!寝たら死ぬぞ!誰か、応答してくれえええええ』


『いや、聞こえてるって』

『聞こえてるよ、鹿野くん』

『カオッチうるさいよ』


『あ、キック田さん… 部長おお、あっちゃん?』


『キックでいいですよ』


『ゴルダさんから伝言。ゴブリンどうなった?』


『森林からこっち方面、街までは綺麗に掃除できました。が、地上は吹雪いちゃって、ホワイトアウト状態、これいつやむのかな。ん?あ、なんか止んできた』


俺がいた地点、迷路岩と街の中間くらいに吹雪いていた雪がやんできた。

が、一面は真っ白な雪景色。


『ええと、吹雪はやみましたが、雪がすごいです。1メートル以上積もってそう?

街の被害はどうですか?建物に隠れた人に被害が出てないといいんですけど』


『大丈夫みたいです。あちこちの建物に散った冒険者たちに魔法通信で確認してもらったけど特に被害の報告はないそうです』


『あああ、子供達が外の雪に気がついてみんな飛び出して行った!』


あっちゃんの声。

神殿の地下もブリザの被害はなかったみたいで安心した。

けど子供達よ、何で地下にいるのに外の雪がわかるんだ?


『子供達が中庭で大はしゃぎしてる〜。ヨッシーも加わって雪合戦始めた!』


子供達が無事で安心した。


『鹿野さん、やっぱり、思った通り、ゲームと一緒でブリザードは敵のみに作用するようです』


キックが興奮したように言った。


『街の外に出てブリザード浴びましたけど、何でもありませんでした!』


キックが嬉しげに言った。


『え?ええ! 菊田さん、まさか試したの?』


『はい!全く問題なしでした!普通の吹雪より優しいくらいでした!』



菊田さん、勇者だなぁ

下手したら死ぬかもしれなかったのに…。

ところで…普通の吹雪って何?


気を取り直して念話を続けた。


『で、ゴブリンなんですけど、まだ森の中間から向こう側に結構います。この大雪で足での移動に時間がかかると思います。林前はテレポで飛べますが、そこから森の中へは足で入って行くので、残りを倒すのにちょっと時間がかかるとゴルダさんに伝えてください』


『わかった…え…はい』


部長が念話中にゴルダと話しているようだ。


『えと、ゴルダさんから、こっちの冒険者は雪かきしながら進んで行くので、とりあえず倒せるだけ頼むとの事』


おおお、雪かき……

すんません…ブリザのせいで。


『了解です。じゃ』



俺はライカンスロープと一緒に林前にテレポートして雪深い森の中に歩いて入っていった。


雪の森……遭難しそう。

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