第83話 しばし神殿に居候させてもらう?

ヨッシー達をテレポートで市場までつれてきた。


ユイちゃんとアリサがヨッシー達の飲み物と皆んなの分の軽い食べ物を買ってきてくれていた。

市場の端っこの方へ移動して座れそうな所を探してそこで食べながら話をする事にした。



「えぇと、第15回くらいか?やまと会議を開催します」



食事の手を止めて居住まいを正した皆んなを見て思わず笑顔になった。

このメンバー、好きだなぁ。


「食べながら話そう」


皆んなが食べ始めたのを見て話し始めた。


「今日、街の外にゴブリン退治に行ったんだけど、ゴブリンが大量に沸いてた」


ダンとアリサの顔色がスッと青くなった。

ヨッシー達はまだ魔物と関わった事がなかったため、ポカンとしていた。


「大量に沸いたって、ゴキブリが?」


嫌そうな顔であっちゃんが聞いてきた。


「いや、ゴブリン」


「ゴキブリン?」


「いやいや、似てるけど!ゴキブリとは別!ゴブリン!ゴキブリは虫。ゴブリンは人型魔物ね。確かに、イニシャルは同じGだけど!あと、1匹見たら30匹いるとか言われてる多産系も似てるけど!」


「え?まんまゴキブリじゃん」


「いやいやいや、ゴキブリはせいぜい3〜5センチだけど。ゴブリンは身長1メートル弱ね。で、人型! 緑の小人!ほら、あの映画、何だっけ。腕輪物語!あれに出てくる……コビーだっけ?トビーだっけ?」


「腕輪物語……タビー!タビーですよ。腕輪を盗む小人」


ユースケの言葉に俺も思い出した。


「そうそう、タビー。あんな感じの魔物がこの世界にいるんだけど、それがこの街の近くに大量に沸いてた」


ヒュっ

息を呑む音がした。

アリサが真っ青な顔をしてダンの服を掴んだ。


「ゴブリンが……大量に?」


ダンも真っ青だった。


「うん、それでゴブリン討伐を中止して戻ってきたんだ。ゴブリンの大量沸きはギルドにも報告してあるから、そんなに心配すんな」


ダンとアリサの背中を軽く叩いてから撫でた。


「で、話を戻すけど、借家を土屋達に占領されただろ?いくらなんでもあそこに24人は無理だ」


「土ババアあああ」


あっちゃん?

土バアから土ババアになってるぞ?


「まぁ、ある意味良いタイミングだったとも言える」


「何でです?」


ユースケが不思議そうな顔をした。


「土屋達に家を知られた時点で引っ越しを考えてたんだ。借家は占領されたし、次の家が見つかるまで神殿か教会の世話になれないかなと思う」


「でもさー、神殿は1ヶ月のみだから土屋さん達が追い出されてきたんじゃん?俺たちもう置いてもらえないんじゃないか?」


ヨッシーの疑問ももっともだ。


「ゴブリン騒ぎが治るまでという期間限定でかつ食費も自分で持つという条件で交渉してみようと思う。それに万が一の時、あの借家より神殿の方が安全性が高い」


「ゴブリンが街に侵入した時……」


ダンが青い顔で呟いた。


「そうならないようにギルドの人達が動いてくれているけど、念には念をだ。なるだけ安全性の高い建物に避難したいんだよ。俺は臆病だから慎重にいきたい」


「そっかぁ、三匹の子豚だね」


あっちゃんが突然変な事を言った。


「木のうちより、レンガのおうちだよ!」


「なるほど〜」

「おおお」

あっちゃんの例えは分かり易いな。


「とりあえず部長がまだ神殿にいたら合流しよう」


「今から行きますか?」

「荷物は全員あっちゃんに預けてあるからいつでも行けるぜ」


「俺がちょっとテレポで先に神殿に行って泊めてもらえるか聞いてみる。もしダメなら宿屋に泊まる事になるが、その時は出来るだけギルドか神殿のそばにしよう。とりあえず、決まったら念話する」


「わかりました」

「お願いします」

「カオさんいつもすみません。お願いします」

「カオるん…ごめんな、俺…」


「ヨッシー気にすんな、いずれ誰かに見つかるって思ってたさ」


立ち上がりかけて思い出した。


「あ、そうだユースケ。メールで借家にいる4係の西野さんと新田さんにも声かけてみてもらえるか」


「4係の?」


「そう、ちょっと話したけど常識はありそうだし縁は繋いでおこうかと思って」


「うちの西野さんと新田さんは頼んだ仕事はキチンとする人でしたよ。声かけていいならメールしてみます」


「うん、即仲間に、とかじゃなくてその家にいない方がいいって感じで。あ、俺も話したけどさ、元係長のユースケからの方が話が通りやすいかなって」


「神殿か教会に行く事も話していいですか?」


「宿になるかもだし、そこは決まってからで」


「宿になっても合流するの?新田さん達と」


「うーん、どうすっかな。ただ、あの子らギルドの仕事もしてるみたいなんだよ。土屋達寄生虫と違って自立し始めてる感じだったな。俺の仲間、家族は、あっちゃん、ユイちゃん、ヨッシー、ユースケ、ダン、アリサとマルクの7人だ。

あ、俺が勝手に思ってるだけだけどな」


「カオさん!」「カオさぁん」

「カオるん、俺、俺……カオるぅん」


「皆んな何泣いてるの。ヨッシー鼻水出てる」

「カオさん8人兄弟の長男みたいです」

「じゃあヨッシーは甘ったれな次男ですね」


「あ、部長が養子に出された長男で、9人兄弟だな」

「じゃあ新田さん達は?」


「同郷の人? 都会の職場で同じ村出身を見つけたって感じかな」


おおお、と皆んなの顔に少しだけ笑顔が戻った。

ダン達にはちょっと意味がわからない部分もあったみたいだ。



「じゃ、またあとで」



会話を終わらせて周りに人がいない場所まで移動し神殿裏へテレポートした。


神殿の裏門から裏庭を横切って裏口を探すが、裏庭をウロウロ。

裏から入れる入り口とかないのか?


石造りのそこそこ大きな神殿は外からは石壁で囲まれていて、建物と塀の間は草木が植えられていた。

“植えられていた”と表現したのは草木は綺麗に並んで生えていたし、草木の間には砂利石が薄く敷かれた細い道にようなものがあった。

その道を辿って行くと神殿よりだいぶ小ぶりな建物があった。

神殿に隣接していると聞いた教会だろうか。


以前にゴルダに神殿と教会の違いを聞いたら、神殿は神に祈りを捧げるところ

教会は教えをこう場所、と言われた。

うーん、わからん。


具体的にどう違うのかさらに質問をしたら

「神殿はスキル鑑定や聖魔法を扱っている、教会は困っている人の救済や孤児院を運営している」そうだ。


日本でいうと神社とお寺、的な?

お寺は檀家さんに説教したり幼稚園をやってるとこもある。

ここの教会は教えを解いたり孤児院をやってると聞いた。

そんな感じか。


そんな事をツラツラと考えながら歩いていると教会への入り口を発見した。

表玄関か裏口かはわからんが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る