第8話

 リーミャ王国の隣国であるルクス連合からほど近いところにある都、ラーリングラド。

 武家の一族であり、代々の当主全員が一騎当千級の力を持っているホーエンル公爵家のお膝元であるラーニングラドに僕はやってきていた。

 

「随分とここも荒れたものだね……」

 

 現在、フェルジャンヌ王国を除くほぼすべての国の治安が悪化しており、ラーニングラドも例にもれず治安が悪化。

 犯罪組織の人間が町中を平然と闊歩しているような状況になっていた……ここまでひどい状況になっているのはラーニングラドくらいか。


「ふわぁ……」

 

 今、街を歩いている僕は魔法を使って他人が僕を認識出来ないようになっている。

 そのため、犯罪組織の人間が町中を平然と闊歩しているような状況下であっても誰からも絡まれることはなかった。


「……ちょっと想像以上に荒れたな。ここまでとは思わなかった。国を建て直すのめんどくさそー」

 

 この街の現状を見て、すっごく軽い感想を漏らした僕は自分が取った良いホテルへと足を向けた。


 ■■■■■

 

 ラーニングラド。


「……クソッ。まさかここまでやるとは思わなかった」


 ルクス連合からほど近いところにあるリーミャ王国の街に魔王復活を目指して暗躍する魔族たちが集結していた。

 

「なぜ、彼らが我らを狙うのだ……」

 

 人類の闇にすくらう組織、アンノウン。

 魔族である彼らが最も警戒していた組織が今、魔族を潰そうと躍起になっていた。


「ここまでやるというのか……犯罪組織の活性化による治安の悪化。それを解決しようとする貴族たちの努力によって闇が撃たれ、我々が隠れる場所も減り、貴族の手も届かないような辺鄙の場所ではアンノウンの幹部が直々にやってきて全てを滅ぼしていく……我々と利益で繋がっていた組織も我々の敵となって牙を剥いてくる始末……」

 

 本気になったアンノウンの行動力と影響力は大きく、次々と魔族が殺され、魔族の逃げ隠れられる場所をどんどん失っていっていた。


「……撤退か、全面抗争か。そのどちらかを選ばざるを得ない、だろう……」

 

 魔族たちは今、選択の岐路に立たされていた。

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