第31話
「君たちが名乗ったのだから、僕たちも名乗るべきだよね。僕はノイ。ただの平民だよ」
僕は名乗ってくれた二人に自己紹介を返す。
「……」
「こっちはアーテ。僕たちの出身地はそうだな……どこにする?」
「そうね……まぁ、ドレシア帝国とかで良いんじゃない?」
「よし。ということで僕たちの出身はリーミャ王国になったよ」
「……絶対に嘘じゃん」
「……あまりにも見え見えすぎるわ」
僕の返答に対して二人は一瞬の強張りを見せながらも僕たちの明らかに今、決めたであろう出身地に苦言を呈する。
「……ドレシア帝国、嫌なの?」
「え?嫌だけど?」
「……ッ、……ッ!」
「痛い、痛い!?」
僕は無言でアーテに殴られ続ける。
「……なるほど。アーテはドレシア帝国出身なのか。ドレシア帝国の貴族!?」
惜しい。皇族です。
「は?お前に呼び捨てを許してないが?ちゃんと様をつけて?」
アーテは自身を呼び捨てにしたセルフィオにキレる。
「平民が貴族に言い放つセリフじゃなくない?それ?」
僕はアーテに殴られながらもツッコミを入れる。
「……この二人ってば想像以上に面倒なんじゃ」
そんな様子を見ながらリリカルがぼそっと呟く。
「待って?僕はそこまで面倒な子じゃないよ?出身地を誤魔化したのだってちゃんと思惑があってのことなんだよ?僕をアーテと一緒にしないで?」
僕はそんなリリカルの呟きに精一杯抗議する。
「……ッ、……ッ!」
アーテの僕を殴る拳にとうとう魔法が込められ、人間一人を容易く殺し、岩をも破壊するほどの威力へと跳ねあがる。
僕は殴られている部分を魔力でコーティングして防ぐ。
「……アーテ様をドレシア帝国の貴族とするならそれと対等に話すノイも……いや、ノイ様も同じくらいの……」
残念。結構僕の方が格下。
「私たちってば想像以上の地雷を踏んだ、のかしら?」
「……かもしれない」
若干顔を引き攣らせているセルフィオとリリカル。
「まぁ、待ってよ。君たち二人はドレシア帝国と繋がれた方が祖国的に良いでしょ?後、僕は呼び捨てで良いよ?」
「「……ッ!?」」
僕の言葉にセルフィオとリリカルの二人は息を飲む。
「ここは僕たちと仲良くなっていた方が良いよ?」
僕は笑顔を浮かべながら仲良くしよ?と提案するのだった……アーテはドレシア帝国の人間。
ルクス連合と関係が悪化しつつあるリーミャ王国の友好国であるフェルジャンヌ王国よりも強き大国であるドレシア帝国と友好を結べればルクス連合はリーミャ王国と敵対する中で心強い味方を得ることが出来るだろう。
ま、僕はフェルジャンヌ王国の人間なんだけどね!
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