第37話

 黄金の輝きを纏うリューエスと紫の輝きを纏うノア。


「ここに来るまでの段階で結構時間取られているからね……さっさと終わらせてもらうよ」

 

 ノアは何気ない動作で自分の手にある黒剣を掲げる。


「……ッ」

 

 それに対してリューエスは一切の油断なく構え、様子を伺う。


「ハッ」

 

 そんなリューエスの様子を見たノアは彼を鼻で笑い……魔力を暴走させる。

 前髪が逆立って一部の髪の色が蒼へと変色したノア……髪によって隠されていた黒色の瞳があらわとなり、禍々しく光り輝く。


「……ッ!?」

 

 ノアの体より溢れ出していた紫色の美しい魔力の光の量が暴力的に増幅し、辺りを揺らし始める。

 幾つもの光り輝く魔力の線が彼を守るように輝き、集う。


「集え」

 

 ノアのたった一言。

 それによってがノアの掲げる黒剣へと集まり、螺旋状となって純粋な力そのものとして君臨する。


「……ッ!?これは、不味いかッ!」

 

 様子見。

 未だに正体の知れない相手であるノアが初手に何をするのか。

 それを見極めてから行動しようと考えていたリューエスだったが、このままノアに時間を与えるのは不味いと判断し、慌てて地面を蹴る。


「もう遅いわい」

 

 だが、それはあまりにも遅すぎた。

 ノアはリューエスの何もかもを知っていた。

 それ故に踏んでいた……最初は様子見をしてくるだろうと。

 リューエスはノアに必殺の技を発動するための時間を十二分に与えてしまっていた。


「……喰らえッ!」

 

 リューエスがノアの目の前に立ち、ハンマーを振りかぶった……その瞬間。


「魔剣、エクスカリバー」


 ノアが手に持った黒剣を振り下ろす。


「……ッ!?」

 

 黒剣より放たれる魔力の濁流がリューエスを完全に飲み込み、流し込む。


「……ァァァァァァァアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 圧倒的なまでの力の濁流。

 それは長き時を生き、闇に潜みし存在であるリューエスであっても抗うことの出来ないほどの力であった。


「いっちょあがりっと」


 リューエスを必殺の一撃で言葉通りに沈めたノアは黒剣を消し、魔力暴走を抑える。


「ふんふんふーん。宝物庫〜」

 

 ノアは誰もいなくなった儀式場で鼻歌を歌いながら長年リューエスが守ってきた宝物庫の方へと向かった。

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