第28話

「あっ……待って、そ、そこは……ダメ、です」


「ん?なんで?」


「……んんっ。な、なんでもない、です。すべてはノア様の思う通りに……ぃ」


 作戦実行中の護剣の影のメンバーとリンが魔法を使ってのやり取りに無断で介入し、聞き耳をたてながらレイといちゃつく。


『……は?実行部隊が半壊!?』

 

 作戦開始から30分も経たない頃、リンたちの会話に物騒な言葉が混ざる。


『わかったわ。今すぐ援軍を……』


『援軍には僕が出るよ』


「……ッ!?ノア様!?」

 

 当たり前のように会話に混ざった僕にリンが驚愕の視線を向けてくる。


「の、ノア様のお手を煩わせるわけには……」

 

 僕の言葉を聞いてリンが躊躇いがちに口を開き、自分の意思を主張してくる。


「ん?僕に二度も言わせるつもり?」


「……ッ!?わ、わかりました」


「うん。それでいいんだよ」

 

 僕はリンの返答に頷き、レイを手から離して立ち上がる。


「さて、と……じゃあ、サクッと頑張ってくるね」


「ま、待ってください!私も連れて行ってください!」


「んっ……僕の命令に絶対に従えるというのならいいよ」


「もちろんです!」


「よし。んじゃ行こうか」


「はいです!」


「じゃあ、行ってくるね」


 僕とレイは共にアジトを出発し、救援を求める場所へと急いで向かった。

 

 ■■■■■

 

 血の匂いが充満する薄暗い森の奥底。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


「クソッ……なんでここがバレたんだ。襲撃されているのはここだけじゃねぇな……後始末どうするかなぁ……おい」

 

 返り血をべったりと浴び、顔を忌々しげに歪めている白髪白目の若い男。

 目の前にいる護剣の影の面々のことなどこれっぽちも脅威とは思っていなさそうな仕草を見せる男は圧倒的な力でもってこの場を支配していた。


「案ずるな。後始末のことなんか考える必要などない」

 

 僕はそんな男の前へと堂々と歩いて近づいていく。


「汝はここで死ぬゆえにな」


 アンノウン幹部、リューエス。

 ……クソったれ。なんで幹部級の奴が出てくるんだよ。もっと奥に引っ込んでいやがれ!

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