第11話 偵察2
前書き
前回のあらすじ
尾行する男を尾行する主人公
本文
尾行する男を尾行しているんだが、仕事が終わったのかタバコを吸い出した。おいおい、タバコの灰を道に捨てるなよ。せめて携帯灰皿に捨てろよなー。
「エレノアさん、また別行動する?」
「嫌です。1人行動したらまた自制が効かなくなってしまいそうです...」
「そう。なら廃屋の場所は把握したし歩きタバコしている男を尾行しよ?」
「はい。路地に入ったら殺りますか?」
「
嬉しそうな表情で何度も頷くエレノアさん。紅潮していることから興奮しているんだろう。
そして、路地に入った瞬間、エレノアさんが動く。やっぱり目で追えない。凄い身体能力だ。
「がっ?!」
「あっ...心臓を一突きしやがった…。ダメじゃん。」
殺した男を見下ろすエレノアさん。頭を踏みつけ、俺が近くに来るまで待っている。
「アハ。ごめんなさい…つい……。」
誤っている割には口角が上がっている。
(やれやれ、仕方ない。悲鳴がなかったもののこの場にいるのはまずい。ひとまず、逃げる!)
俺はエレノアさんの手を握り殺人現場から急いで離れる。目撃者はおそらく居ないはず。たぶん。
「何やってんだよ。情報源を絶つなんて。チッ!切り替えろ、俺!考えろ、俺。」
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
「もう終わったことだ。謝るな、やった事に責任を持て。さっきの行動の利益を作れ。」
「は、はい。」
どうする、どうする。人間が死んだ。死んだ?尾行していた男が死んだ?最大限に活用するなら...
俺はエレノアさんに不可視化のローブを被せる。そして、手を離す。
「エレノアさん、それで姿を隠して俺の後をついてこい。考えがある。」
3日前に起きたレジスタンスの暴動で騎士がちらほらみえる。密告したる。居た...
「はぁ、はぁ。騎士様!」
「あぁん?なんだ貴様は?」
ガタイのいい騎士。態度がでけぇ。ムカつくがこういうやつはバカでアホと相場が決まっている。騙せ。騙せ。
「向こうの路地で人が死んでいます!俺、見たんです!エルフが、エルフが心臓を一突き...あぁ...それを見て、おれ、おれそのエルフが廃屋に入っていくのを見て、はぁはぁはぁ。」
「落ち着け、馬鹿もん!そのエルフは確かに住民を殺したのだな?」
胸に手をやり、荒い息をする。
「す、す、すみません。人が亡くなるところを見るのは、お、おえっ。」
迫真の演技。自画自賛したいくらいだ。助演男優賞並だな、これ。
「もう、分かった!案内してもらうぞ!」
「わ、分かりました...」
俺は騎士を案内するため先導する。騎士に聞こえない程度の小さな声でエレノアさんに指示を出す。聞いていれば儲けもん。
「廃屋に近くに着いたら騎士の首に毒を仕込んだ短剣で皮1枚切れ。」
廃屋まで特に騎士と話すことなく先導する。廃屋近くに着いた瞬間、騎士が首を抑え声を上げる。
「な、なんだ!?血だと?」
「あ、あ、あぁ、エルフだ。エルフの魔法だぁぁぁー!」
思考誘導。騎士に俺の言葉以外考えさせないように恐怖を植え付ける。路地にある死体を発見した住民が悲鳴を上がる。これで俺の横にいる騎士以外も集まり廃屋に襲撃をするだろう。廃屋に入った奴がエルフかは知らんけど。
「ひ、ヒィいい!え、エルフが俺たちを襲いに来た!」
悲鳴を上げ、近くにいる住民にも不安を煽る。何度か転ぶ演技をしながら廃屋から走って離れる。騎士からも住民からも認識を逸らすため、人がいないところに手榴弾を放り込み爆破させる。その隙にマジックバッグからフード付きのローブを羽織り、民衆に紛れる。
「時に、俺のことをどう思う?」
「悪魔ですね。発想がクズです。でも、素敵です。」
不可視化のローブを脱ぎ姿を表すエレノアさん。
「これでエルフの仕業に思われる。現場は、戦闘になる。そうなると現場検証せず、場が荒れる。」
「私が殺したという疑いがなくなる。こんなこと思い付くエルさんが怖いです。思い付くだけでなく、それを躊躇なく実行に移す行動力。貴方は神ですね。ふふっ。」
「貶しているのか、褒めているのか分からない返事ありがとう。」
雄叫びが聞こえる。鎧の擦れる音、騎士たちが廃屋に突入したな。
「そういえばどの毒を使った?」
「2、3時間で通常の大人が死ぬ毒ですね。試すのが初めてなので断言出来ません。様子見に行きますか?」
「見に行かない。別の場所を襲撃する。様子を見に行ったら怪しまれるしね。」
「ああ、なんて最悪なことを考えるんでしょう。素敵です!」
(エレノアさんのガス抜きをしないとまた指示通り動かないかも。暴れられる場所を探さないと。)
後書き
次回 襲撃
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