亡命のV
「逃げたい?」
「はい」
遠くに街が見える、荒野のある場所で、二人のフード付きの黒いコートを着ている人がある人物から相談を受けていた。
黒いコートを着た二人の内の一人は、いかにも健康的な体躯と顔付きをした青年で、片手の手首には腕輪型のデバイスを着けていた。名をルドといった。
もう一人は、年の頃はルドと同じくらいで、一見では冷たい印象を与える落ち着いた雰囲気の少女で、ルドと同じように片方の手首には腕輪型のデバイスを着けていた。名をルーといった。
二人の近くには、運搬と悪路の走破を目的とした頑丈そうな装甲車があった。運転席の後ろ、人を運ぶ部分には向かい合わせになったシートがあり、装甲車の扉には外が窺えるように窓が取り付けてあった。
二人の目の前には、何かに怯えた様子の少女がいた。
「逃げるって何からだ?」
「とにかく・・・あの街から離れたいんです」
うつろな目をした、目線は少し下を向いている少女は、あまり覇気のない声でそう言った。
「街から?」
「・・・はい」
「う~ん・・・・・・」
少女から提案された突然の依頼にルドは困っていた。
というのも、目的地までの道を装甲車で急いでいる最中、ルドたちは遠くに街が見える景色の中に一人の人が立っているのを見かけて、ただ声を掛けようとしていただけだったからだった。
「・・・・・・・・」
少女はうつろな目のまま回答を待っていた。
「どうする。受けるか?」
ルドがルーの方に向かって小さな声で言った。
「別にどちらでも」
ルーが答えた。
ルーの回答を聞いたルドは少女の方を向き直ると
「・・・あ、一ついいか」
と、何かを思いついたように言った。
「・・・はい・・・なんでしょうか・・・」
「俺たちは今移動の途中なんだ。どこかに送るにしても、途中までか、俺たちの目的地としている所までしか行けないが、それでもいいのか?」
「はい・・・」
「そうか」
少女の返事を聞くと、ルドが上半身だけで後ろにある装甲車を見て、また少女の方を向き直り
「それで、どこまで行けばいい」
と尋ねた。少女は
「・・・・・・あの街から離れた・・・、その・・・出来れば誰も私のことを知らない所まで」
と言った。
「あんたのことを誰も知らない場所・・・」
「・・・・・・はい」
ルドがしばらく考えて
「よし。いいぞ、乗れ」
少女に対し車の座席側の扉を開けると乗車を促した。少女が座席に乗り込むと、ルーもその後に続いた。二人が乗り込むのを確認すると、ルドが手首を半回転させ腕輪を起動した。次に腕輪の上に表示されたホログラムに何かを打ち込み、ホログラムを閉じると、ルドも車に乗り込んだ。すると装甲車が自動で動き出した。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
特に会話が飛び交うことも無く、三人を乗せた装甲車が荒野を進んでいた。車内には車の走行音と走行による振動音だけがしていた。
「よかったらでいいんだけど」
「・・・はい・・・」
「あなたは何から逃げているの」
ルーが少女に質問した。
「・・・・・・・・・・・・・その・・・えっと・・・・・・・・・怖くて・・・・・・」
「怖い?」
「はい・・・」
「怖いって何が?」
「・・・・・・・・・私、街の中で・・・・・・その・・・・・・・・・ネットを使った活動をしてて・・・、・・・・・・その・・・」
「・・・活動? それは・・・・・・どんな活動?」
「・・・・・・・・・なんていうか・・・・・・まあ、人と話すだけなんですけど・・・・・。・・・・・・・・・・・・えっと・・・・・・ああ・・・・他にも歌ったり踊ったりする様子を配信するライブに出たりとか・・・・・・・・・・・・そんな活動です・・・・・・・・」
「ああ、知ってる。EP《エレクトリック・パーソナリティ》とかVP《ヴァーチヤル・パーソナリティ》ってやつだろ?」
足を広げて手を組み、下を向いて車に揺られていたままだったルドが口を開いた。
「ああ・・・・・・はい、そうです」
「それで?」
ルーが質問を続けた。
「その活動を続けていくうち、だんだんと皆の反応が変わっていったんです。自分が何もしてないのに反応が来たり・・・・・・もちろん私に対してではなく私の代わりに出ているキャラクターに対しての反応だということは知っていましたが・・・・・・・・・なんだか・・・・・・その・・・・・・・・・・だんだん・・・・・・・・・・続けていくうちに・・・・・・自分が消えていくような気がして・・・・・・・・・・・・・それが怖くなったんです」
「・・・なるほど。ありがとう。分かったわ」
ルーが話を遮り終わらせた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
それから少し沈黙があった。
ルーが口を開いた。
「でもあなたはただの人なんでしょう?」
「・・・・・・・・・え?」
「まるでカルトね」
「・・・・・・・・え・・・・・。・・・・・えっと・・・・・・・」
「それで、あそこまで歩いてきたの?」
「・・・・・・・あ・・・いえ・・・なんというか・・・無我夢中で逃げてきて・・・・・・気が付いたらあそこにいたので・・・・・・・・・えっと・・・・・・よく・・・・・・・・・・・・・・・・・・覚えてないです・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・なるほど」
「・・・・・・・・・」
また沈黙があった。ルーは何かを考えている様子だった。
そしてしばらく経った後
「何も消費していなかった訳ではないってことかしら」
とルーが口を開いた。
「・・・・・・・・・え? ・・・・えっと・・・・・・どういうことですか?」
「・・・なんて言えばいいのかしら。とにかくあなたは’それ’を消費し続けていたのね」
「・・・・・・・・・?」
「それと・・・その活動ってどんな人でもできることなの?」
「・・・え・・・・・・・えっと・・・・・・・まあ、はい・・・、少しだけお金はかかりますが・・・・・・・・・・・・・それを払えば・・・・・・誰でも」
「なら・・・、どんな人間でも簡単に信頼が得られる代わりに、自ら提示したものの何割かは見た目を司るキャラに取られる、ってことかしら。きっちり代償は払わされていたってわけね」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「それと・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「’それ’が尽きたとき、つまりそのキャラクターが現実の方の人間を殺したとき–––––––––その時ね、どちらも死ぬのは」
と、そこまで聞いていたルドが
「うー。おっかねえ」
と、ヘラヘラと嘲るように言った。
ルーが続けた。
「あなたには心身喪失のきらいが見られるわ。そのエネルギーを消費し続けたからかしらね」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
装甲車が揺れる。
「だってよ」
ルーの言葉に対し沈黙していた少女に、ルドが言った。
「ま、これから誰もあんたを知らない場所まで行くんだ。もうそんな心配も要らねえよ」
「・・・・・・」
再び車内に沈黙が訪れた。
「そういや––––––––––––」
と今度はルドが口を開いた。
「あんた名前なんていうんだ?」
「あ・・・・・・・・・・・・・えっと・・・・・・・・〇〇っていう名前で・・・・・・・一応は活動してました」
「そうか。〇〇ね・・・。知らねえな。聞いたことあるか?」
ルーが聞かれて
「いえ」
と答えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
変わらず黙ったままの少女の様子を見て
「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・あ、いや悪気はねえよ? ただ聞いただけだ」
ルドが言った。
「・・・・・・・・はあ・・・・」
それを聞いて、少女が不思議そうに気のぬけたような声を漏らした。
と、ここでルドの腕輪の上にホログラムが表示された。
ルドはそれを確認すると、
「もうすぐだ」
と二人に報告した。
「よし」
ルドが誰に言うでもなくそう言うと、装甲車の重いドアを開けて外に出た。続けて少女とルーが出てきた。装甲車から外に出るとき土砂を踏む、ザッ、という音がした。
外はほとんど日が落ちていて、遠くの空にはほんの少し夕焼けが残っているだけだった。
「・・・・・・」
装甲車から出た少女が、装甲車を回るように移動すると、離れた場所に街の建物と城壁と関所が見えた。
ルドは二人が下りたのを見ると、腕輪型のデバイスを起動させ、操作を始めた。
「もう夜だ。俺は必要な物を調達して、今日は一旦ここに泊まる。ルー、お前はどうする?」
「私もそうするわ」
ルドが腕輪の操作を終えて少女の方を見た。
「なあ、あんた。なるべく遠くまでは来たが、ここがあんたの目的地ってことでいいのか?」
ルドが少女の方に顔だけ向けて質問した。
「・・・はい・・・」
いつものように少女が無気力気味に答えた。
三人は街に向かって歩き出した。ルドの腕輪の操作によって設定を変えられた装甲車は、三人が歩くと、その後を追うように追従してきた。
自動で追従する車両を引き連れて、ルドたちは関所の前まで来た。小屋のような造りの関所は大体半分から上がガラス張りになっていた。関所の中には一人の人がいた。
「どうもー・・・」
と、関所の中にいた人が読んでいた雑誌を閉じて置くと同時にやる気のない返事をした。
「通りたい。いいか」
ルドが城壁の方を指差して「門番」に言うと、
「滞在ですか、居住ですか」
と「門番」が流れるようなやる気のないトーンで言った。
「滞在の場合、再度出発される際には一人毎に料金を頂きます。車両はこちらでお預かりしておきます。居住の場合は、街に入る際に料金を頂きます。」
同じくこれまで散々言ってきたのか、機械のようにほとんど抑揚のない口調で言うと、同時に白い紙に値段が書かれた紙を片手でつまむように持って見せてきた。
「居住は一人だ」
ルドが少女の方を指して応えると、門番が少女の方を見た。
「・・・」
門番は特に反応を示すことも無く、
「では一人分頂戴しまーす」
と言った。
ルドが指定された金額を払うと、門番は関所の壁に掛けてあった無線機を右手で取り、口に当ておそらく城壁の内部にいるであろう人と連絡を取ると、手元付近にあったレバーのようなものを引いた。
すると、ゴゴゴゴ・・・・・・、と城門が音を立てて開き始めた。
「どうぞー」
と門番のやる気のない声を聞き、ルドたちは城門へと進んだ。
城門をくぐると、まず中央にかなり幅の広い大きな通りが見えた。通りの端には家々が通りを見下ろすように建っていた。
城門をくぐってすぐの所にも、外にあるものと同じような関所があった。同じように人も居た。
「ようやく着いた」
歩きながらルーが少しだけぐったりした様子でつぶやいた。
「ん? ああ、そうだな」
ルドがそれに反応すると、
「あんたは? ま、途中からだし疲れちゃいねえか」
と、隣を歩く依頼人の少女に話しかけた。
「・・・・・・ええ・・・・・まあ・・・・」
少女がいつものように応えた。
「早く休みたいから急ぎましょう」
ルーが歩くスピードを上げて早歩きになった。
「ちょ! おい!」
それを見てルドと依頼人の少女が小走りで追いついた。
「? どうしたの? 別についてくる必要はないんじゃない?」
「まあそうなんだけどよ。一応依頼人もいるし、まだ依頼は完了してないだろ? ・・・・・あれ? したのか?」
ルドが少女の方を向くと
「なああんた、ここまで連れてきたのはきたが、これで依頼は完了って事でいいのか?」
「・・・・ええ。・・・・・・・私は・・・・・・ここまででも十分です・・・・・」
「そうか」
ルドたちが大通りを進んでいくと、かなり大きな円状の広場に出た。
広場には中心に噴水があり、それを囲むようにして所々にベンチが設置されていた。周りには広場を走ったりしている人やベンチに座って寝ている人の姿があった。
かなり大きなその円状の広場からは様々な方角に向かって道が伸びていた。どうやらここが街の中心のようだった。
「ここが中心かしらね」
「かもな。よく分からんが」
「・・・・・・・・」
ルドが腕輪を起動し時刻を確認した。
時刻はすでに夜だった。
「集合場所ならここね」
「そうだな。んじゃ、ここに明日の朝な」
「ええ」
そう言うとルーは先に広場を離れていった。
ルドは少女の方を向き直ると、
「んじゃ俺も行くけど・・・・・・、もう一度聞くがこれで依頼達成ってことでいいんだよな?」
「・・・・・・・・はい・・・・・」
いつものように少女が無気力気味に応えた。
「・・・・そうか。じゃ、あんたも達者でな」
ルドはそう言うと、その広場を最後に、依頼人の少女と解散した。
微かに空が暗く、まだ太陽が昇っていない時間帯。
街の広場にはまばらに人がいて、ジョギングをしたり、ベンチに腰掛けて読書をしている人の姿があった。
街の中心である円状の広場へと続く通りに、あくびをしながら歩くルドの姿があった。広場の中心にはすでに到着していたルーがベンチに腰掛けて待っていた。
「よお」
ルドの声にルーが反応だけ示した。
「出発?」
「ああ」
ルーがベンチから立ち上がると、二人は城壁のある方に向かって歩き出した。
「早起きだな」
「そうでもないわ。さっき来たところよ」
「へえ」
「昨日はよく眠れたかしら」
「ああ。・・・・・・どうして?」
「この街まで案外距離があったから・・・。あの時は遠出の疲れもあるだろうから声は掛けなかったけど・・・・・、あの子と私が喋っていたとき、ルド、寝ていなかった? 知っているの? 荒野では気が抜けないってこと」
「いやいや、寝てねえよ。ハナシもちゃんと聞いてたって。・・・・・・まあ覚えてるかって言われたらアレだけどな」
「・・・はあ」
「大丈夫大丈夫へいきだって。昨日もちゃんと寝たしな。あの後欲しいパーツもすぐ見つかって、昨日は銃の改良しただけだから睡眠はバッチリだよ。ま、これで命中精度も上がったってもんよ」
「パーツ?」
「アタッチメントだよ。この街に売ってるって聞いてな。グリップ部分が滑りにくくなって少々握りやすくなった」
「それがこの街に来た目的? それと私の分はある?」
「ああ、あるぞ。それがこの街に来た目的だな。お前は?」
「調査よ」
「何の?」
「これ」
ルーが自分が着けている、ルドが装着しているものと同じ腕輪を見せた。少しルドの顔が曇った。
「カオスリングか」
「他の街に行ったときも何度か調べたことがあるけど、何も分からなかったわ」
「ここは?」
ルドが今いる街のことを指して言った。
「特に何も得られなかったわね」
「そうか」
「いいかげんどういう原理で動いているのか知りたいものだけど」
ルーが少し諦めたような口調で言った。
「ま、怖えよなー」
ルドが腕輪を付けた右手首を軽く、くるくると回転させるように動かして軽い口調で言った。
「怖くないの?」
「いや怖えよ? 最初からな」
そう言うと、ルドは腕輪を起動させ、街の地図を出した。
腕輪の上にホログラムで表されたその地図には、現在地を示す丸い点が記されており、ルドたちの動きに合わせて動いていた。
地図上で丸い点の向かうその先を見ると城壁を示す壁があった。
ルドが右腕を曲げ、視線を下げるようにしてみていた地図から顔を上げると、昨日通った関所が見えた。
街の中にある方の関所の「門番」に出発を伝えると、来たときと同じように
「門番」が関所の中にあるレバーのようなもの引き、城門が開いた。
城門をくぐり外に出る。
次に街の外にある関所の前まで来た。そこには来たときと同じように相変わらずやる気のなさそうな「門番」がいた。
「門番」は城壁の方からやってくるルドたちを発見すると、関所内を客に対応するためのカウンターがある所まで移動した。。
「? 出発ですか」
一度「門番」が不思議そうな顔をすると、ルドたちに聞いた。
「ああ」
ルドが答えると
「お二人ともですか?」
と再度質問してきた。
「? ああ」
「・・・・・・。そうですか。・・・では」
と言うと、門番がカウンターの少し横にそれて何かをすると
「どうぞ」
とお金を渡してきた。
「?? どういうことだ?」
「??」
ルドの様子を見た門番が、一度持っていたお金を下ろすと、手元にある資料のようなものを確認した。そして再度ルドたちの方を見た。
「お二人は出発されるんですよね?」
「ああ、そうだ」
「・・・・・。では、お一人分の居住の料金は返金させていただきます。お二人が滞在なので○○になります」
と「門番」が二人滞在分の料金を請求し、一人分の居住の料金を返金しようとしてきた。
「・・・・・・。待て待て。それは一体何の金だ。一人居住二人滞在ならそれで合ってるだろう。どうして返金するんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・えっと、あの・・・・なにを仰っているのか・・・・・」
「・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・お二人は最初、一人居住一人滞在の予定でいらしたんですよね?」
「いや、俺たち二人が滞在で・・・・・・もう一人女の子が居たろう? ここに。その子が居住だ」
ルド、ルー、依頼人の少女、と城門から近い順に並んでいたため、ルドがルーの奥を指を差して門番に説明すると、門番はその方向を見て呆気にとられたような表情をした。
「(何だ・・・?)」
「・・・・・・・」
ルドとルーが門番を訝しんで見ていると
「あの・・・」
と門番がおそるおそる口を開いた。
「?」
門番がルドたちの方を見ると言った。
「お二人は最初からお二人でしたよね?」
「あ?」
「・・・・・・」
辺りが静かになった。
「・・・・・・・・・・・。いや・・・・居たろ。ここに。」
ルドがルーの横を手だけで指して言った。
「いえ・・・・・、お二人は最初からお二人でいらしたので・・・・・・・・・・・・・こちらも、一人は滞在、一人は居住として確認しておりますので・・・・・・・。お二人とも滞在でいらっしゃるなら、こちらのお金は返金させていただきます」
「・・・・・・・」
そう言うと、再度「門番」が返金額分の料金が入った袋を渡してきた。
「・・・・・・・・・・・」
ルドはしぶしぶ、それをゆっくりと受け取ると
「・・・・・・。・・・・・居た・・・・・よな?」
「・・・・・・・・ええ」
そう言うと、ルーも困惑気味で答えた。
「それでは、○○になります」
と、続けて「門番」は構わずに通常通りのやる気のない感じで業務を続けた。
「・・・・・・・・・」
ルドが二人分の滞在の料金を払うと
「お気を付けてー」
と気の抜けた言い方で「門番」が二人に別れを告げた。
ルドとルーは止まった装甲車の近くにいた。停車した装甲車の近くには小規模だが岩場と、自然で出来た何段かの石の階段があった。
ルドは手持ち無沙汰に装甲車の辺りや階段の辺りををふらついており、ルーは腕輪から出ているホログラムに表示された何かを読んでいた。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・」
雲が流れていく。
しばらく二人がそのままの行動を続けていると
「ルド、あったわ」
ルーが何かを見つけてルドに報告した。
「!」
ルーの報告にルドが走るようにして駆けつけ
「たぶんこれね」
ルーがルドに、ホログラムに表示された何かの記事の一部を見せた。
ルドがその記事を見ると、そこには
『〇〇は実在のないバーチャルタレントだった!』
『〇〇のライブ配信、常連視聴者の内多くが神経疾患を発症。』
といった内容で 昨日まで一緒にいた少女についてのニュースが記事となって報じられていた。
ルドが一通り記事を読み終えると
「・・・・・・・・。なんだコレ? 怖えなあ。じゃあ俺たちが一緒にいたのはなんだったんだ? 幽霊ってか?」
若干あきれながら冗談っぽく言った。
「・・・・・わからないわね」
「・・・・・・はあ・・・」
ルドがなんとも言えないため息を吐くと
「・・・・・・・・・・・・・つか・・・なんだ?」
「・・・何が?」
「あいつなんかしたのか?」
「さあ。」
ルーが少し考えて
「何もしてなかったんじゃない?」
「何も? ・・・・・・・・ああ、そう」
ルドが腕輪を起動し、装甲車を起動させた。
「ま、目的は済んだんだ。とっとと帰ろう」
「・・・そうね」
装甲車に近付いてその扉を開ける。
ルドが先に入り込み、ルーがその後に続いた。
そしてルドが座席に座ると
「・・・・・・・・・・・あ!」
と何かに気付いて大きな声を上げた、
「どうしたの?」
「クソ・・・・・・・報酬もらってねえじゃねえか・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・そうね」
ルドが扉を閉めると、装甲車が荒野を走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます