第5話
髪を切ってくれた若い美容師と再び出会ったのは、自宅近くに借りていた駐車場からの帰り道だった。
彼女の住む部屋は、近くにあるという事だった。
彼女は、素朴な外見だったが、清潔感があり好感が持てた。
彼女には、人形がアプリドールというサイトから送られてきた人形で、髪が伸びるように作られたものだと説明した。
人形の髪でも、お客さんであることに変わりなく、彼女自身は、気にしないと言っていた。
しかし、お店に来ることに抵抗があるなら、自分が自宅で切ると言ってくれた。
彼女に連絡先を教えてもらった。
人形の髪が、伸びていくスピードは速く、一週間に一度は、彼女と連絡を取った。
髪を切る事を彼女は嫌がったりはしなかった。
彼女の名前も絵梨だった。
人形のエリは、美容師の絵梨の事をとても気に入ったと文字にした。
髪を切ってもらったその日は、彼女の事ばかり話した。
実家が美容院で、父親がいない。
母子家庭だった幼い日々も楽しかったが、今思えば母親は苦労していたのだろう。
だから、早く一人前の美容師になって、恩返しをしたいと思っているのだが、少し不器用なところがあり、なかなか思うようにはいかないらしい。
朝早くから夜遅くまで、美容院で働いているので、お休みの前日人形を預けて、翌日受け取るというパターンが続いた。
真面目な人柄に、僕の中の彼女に対する好感度が上がった。
これが、アプリドールが与えてくれる幸せかもしれない。
アプリドールとは、愛する人との縁を繋いでくれる存在なのか。
もちろんすぐに告白する勇気があれば、この年齢まで独身ではなかった。
ホントウニ、ソウナノカ?
それでもお礼にと理由をつけて二人で食事に行く仲になった。
その日も夕食を共にした。
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