お疲れの様子

 型が出来た。

 元は型のパターンを考えていたが、その内容は翠夢と瑠璃の関わったパターンには決まらなかった。しかし、それは想定にあったためか、2人には問題はなかった。


 しかし、型なのだが、針金で作る必要があり、それらの形も計算して出さなければならなかった。その計算を行い続けており、比較的頭が良い2人に任されていた。


 その計算が完全に終わり、針金で型を作り始める。これに紙を張り付けていけば完成するが、まだそこは進んでいない。

 型が出来、針金での型が出来たのだが…


☆彡



「…(すぅー。すーぅ)」

「…ん?なんだ?」

「…(すぅー。すーぅ)」

「寝ているようだな。いないと思っていたら教室の椅子に座っているとは。とりあえず上着を羽織らせておくか」


 翠夢は寝ている瑠璃に上着を羽織らせておき、気球の形を作成する作業にかかった。


 作る作業は、紙を張り付けていくだけであるが、サイズが大きい分、時間がかかる。1人だけではないとはいえ、それでも時間がかかってしまう。この企画を考えた人と相談して、他の人も巻き込んで作業を進めていった。


 当然1日で終わる作業なわけもなく、帰る時間となってしまった。既に20:00。こんな時間まで居るとは思わなかっただろう。当然、空は真っ黒であり、星が瞬き、月が浮いていた。




☆彡


 翠夢は瑠璃がどうしているのかを見に行った。

「(俺の考え方が間違いだったのか?見立てだとこんな無防備な姿を見せられないはずだ。それとも、ここが安心する場所なのか?)」

「…(すぅー。すーぅ)」

「お疲れ様。疲れていたんだな」

「…んあ…ん!?」


 瑠璃はずっと寝ていたのだ。上着に気が付いたとき、顔が真っ赤になった。


「あ、あの!ごめんなさい!寝てしまって」

「謝らなくていい。それよりも、気球が進み始めたぞ。ひとまず、お疲れ様だ」

「あ、あ、…」


 瑠璃は、ただ真っ赤になっただけではなかった。この後、青ざめて、そして眼鏡から見える瞳から…泣き始めた。翠夢はそれを見ていた。こういうところから、状況は悪くなるのだ。そういう経験が翠夢にはあった。

「落ち着いて。俺は何もしない。帰る時間ではあるから、上着は返してもらうけど、泣き止むまでは待とう」

「うっ、うっううう、ありがどうございまず」


 翠夢は、瑠璃が落ち着くのを待った。上着を返してもらい、2人はそのまま寮に帰宅したのだが、この時の待っている時の感情は、今まで感じることが薄かったものだった。


 2人の胸の中で燃え上がる感情には、まだ完全には気が付いていなかったようだった。


☆彡

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