デートとして、古本屋へ

☆彡


とある日、2人っきりの時、瑠璃は翠夢に話した。


「翠夢さん、つ、次の休みに古本屋に行きたい」

「ん?それはデートのお誘い…か?」

「う、うん。いや、はい」


☆彡


 既に両想いになって2か月。最初のデートで思いをぶつけるようなキスをしてしまい、本来確実に進めていくはずのスキンシップが、少しぎこちなくなってしまった。しかし2か月も立てば、割といろいろなことが出来るようになる。実質どちらも初恋みたいなものである。

 それまでは、うまくスキンシップは出来ていなかった。特に瑠璃にとっては、男性恐怖症があるため、怖くなって離れてしまったり、耐えがたくなることがあった。しかし翠夢にとっては、その程度は大したことはなく、慣れるのを待てる男だった。


☆彡


 そんな、翠夢の不器用なやさしさを瑠璃が感じられたからか、初回デート前に手つなぎとハグをするようになった。初めはどれもぎこちなく、1か月くらいまではかかっていた。しかし、現在は不安になったら、ハグを求めることで安心できるほどの仲となっていた。


☆彡


 その次の休み、結構遠くにある古本屋に行くこととなった。

 瑠璃の服装は極めて清楚に、翠夢はかつて似合うと言われた服装。

「迷いそうだから、2人で行きたかった」

「俺が調べてある。間違えなければいけるし、最悪2人であれば対応方法もある。実際にはデートのつもりだけど」

「そこまでしないと・・・」

「連れてきている以上、帰れなくなるのはまずい」

「迷っても翠夢さんがいるから、別に悪い事じゃないよ」


 翠夢は妙な不安を感じていた。悪い事が起きそうだと。しかし、必要ない心配であったようで、迷わずに古本屋に到着できた。


☆彡


「ふーむ、いい雰囲気だーって、急がなくても」

「好きな本を探したいからー」

清楚な雰囲気の瑠璃には少し似合わない動きで、先に行ってしまった。


店に入り、瑠璃を探すのだが・・・。

「そこにいたか、瑠璃」

「・・・?」

「聞いているのか、聞いていないふりをしているのか。聞いていないならー」

瑠璃は小声で話してきた。

「聞いてます。急にスキンシップするのは周りに人がいるからちょっと」


 こう話された以上、瑠璃は動くことはなく、欲しい物を買ってから読み続けるようだった。そうしているのを見るのも、好きだった。

 じっと見ていれば、瑠璃の雰囲気は美人と美少女の両方を足した感じであり、これに加えて本を読むこと、一見地味に見えるがバランスが良くかわいいオーバル眼鏡が独特の雰囲気を醸し出している。

控えめな印象を持たせる要素も多い。紺の襟付きワンピースと黒タイツにベレー帽にストラップシューズでお嬢様感があり、身体自体も他の女の子よりも細め。


☆彡


 そんな瑠璃に、翠夢は見惚れていた。本を読み終わり、それに気が付いた瑠璃は、

「どうしたの?私に夢中だったみたいだけど」

「…可愛さを存分に味わってた。好きな子の。早めに帰ろうか。迷うと危ないし」

「あ、うん。ここに連れてきてくれてありがとう。それに、私と」

「好きな女の子とデートするのは楽しいな。相手を気遣いつつ」

瑠璃は少し泣きそうになりながら、

「ありがとう」

と言った。


☆彡


 その帰り道、恋人のスキンシップとして、手を繋ぎながら帰る。瑠璃はまだ怖いと思うことがあるため、そこまで長くつなぎ続けることはしていない。恥ずかしいと言う気持ちもあるのだが、怖い気持ちの方が勝ってしまうようだ。

 そのため、翠夢は無理強いせずに、瑠璃は怖いけど大丈夫と思いながら手を握っていた。


謎の違和感を感じていた翠夢だが、この後、絶望が襲い掛かるとは全く思っていなかったのだ・・・。

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