世界は赤にまみれている
マフユフミ
第1話
あ、と言ったときはもう遅かった
手首から伝う赤い液体がぽたりぽたりと落ちて
真っ白な洗面台を染める
そのコントラストが妙に残酷に思えて
それなのに消し去ることもできなくて
広がる赤をただ見ていることしかできなかった
ぽたりぽたり、
ぽたりぽたり、
滴はいつしか細い糸となる
ぼたり、ぼたり、つぅー
別に切りたかったわけではない
ただの誤作動、それだけ。
なのにその赤い糸だけがここに繋ぎ止める
唯一のものに思えるのはどうしてだろう
ぽたり、ぽたり、つぅー
真っ赤な洗面台の鏡に映る姿は青白くて
イカれた脳みそが徐々にふわふわしてきて
こんな鮮やかな色の中にいるのにと
おかしくなって少し笑った
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