精霊の森 "黄金の覚醒"編(12 / 14)

コガネは翼もないのに、さもそれが当然かと言うように重力に反して上へ上へ。

そうして俺たちは、上空。

地上、焼き払われた森の跡を走って逃げていくノベノを見つけ出す。



「じゃあ、やってやりなさいテツト」



言うやいなや、コガネはその姿を再び黄金の剣へと変えると、俺の右手に収まった。

しかし、今度の変化はそれだけじゃなかった。

俺の体に、黄金色の光がまとわりつく。



「これは……!?」


「私と永遠にいっしょにいるんでしょう? なら、装備はちゃんとしないと」



俺の頭、腕、胸、胴周り、そして脚。

その全てを黄金の鎧が覆い尽くしていた。

純金製だろうに、しかしまるで重くはない。

なにせその鎧に宿っているのは、生命力。

着るだけで俺の力が何倍、いや何十倍にも膨れ上がるのがわかった。



「さあ、存分に振るってらっしゃい。私が一生付いていてあげるからっ!」


「おっ……おうっ!」



俺は黄金の剣、コガネを構えた。

そしてノベノに向かって、宙を翔ける。



「すげぇっ! 俺! 空飛んでる!!!」


「フフン、すごいでしょ。あのマヌゥにはできない芸当よ!」



喜びに、コガネの刀身が震える。

マヌゥはマヌゥでできることが違うから一概には比べられないけど……でもコガネもすごいことは確かだ。



「さすがだよコガネ、最高だ!」


「フフン! フフフン!」



自慢げな鼻息が止まらないコガネ。

それはともかくとして、



「逃がさないぞ、ノベノッ!」



俺たちはすでに、ノベノのすぐ背後にまで迫っていた。



「クソッ……タダでやられて、たまるかぁぁぁっ!!!」



イタチの最後っ屁、というやつだろうか。

ノベノがその手に長さ10メートル、幅も2メートルは超すだろう巨大な闇の輝きを放つエネルギー剣を創り出すと、俺を押し潰すように振り下ろしてくる。

だが、今の俺たちにはさほども脅威には感じられない。



「コガネッ!」



俺が振るうと、黄金のきらめきが宙へ直線を描いた。

するといなや闇の大剣は光にかき消される影のごとく、その形を消失させる。

そして、



「終わりだ!」



続けざまの黄金の一閃。

それはノベノの首を確実にとらえ、跳ね飛ばす。

しかし、



「言ったろう、タダでは、やられんと……!」



宙を舞うノベノの首がしゃべる。

直後、胴体が収縮していく。

まるで小さなブラックホールに吞み込まれていくように。



「おまえたちも、道連れだ……!」



そうして行われたのは、自爆。

ノベノは自らの残存魔力、その全てをあらゆる生命に有害な瘴気へと変えて世界へと解き放つ──いや、解き放つはずだった。



「……なんだ、コレ」



巨大な爆発を引き起こして、ノベノの体は吹き飛んだ。

しかし、瘴気は広がらない。

ノベノの体が合った場所に立ち込めているだけ。

それはさながら、空洞のガラス玉の中に色付きの煙を立ち込めさせているかのようだった。

そしてその煙に映し出される、一人の少女の影。



「──あっ、映っ……た……」



ガラス玉の中の少女は、ホッとしたように息を吐く。

長い銀髪をサラサラと揺らし、その上にヤギの持つような大きな黒角を載せている巫女服の美少女だ。

そして俺は、その少女の姿をかつて獣王国で見たことがあった。



「君は、メイスの中の呪術神を倒したときに現れた……!」


「うん。テツ、ト……」



少女は舌をもつれさすように言う。



「助け、に来て。お願い。道を作ったから……」


「た、助け? 道? それってどこに……というか君はいったい……」


「来て、テツト……その世界で、最も巨大な竜の中に、道はある、から……」


「最も巨大な竜の中……」


「待ってる、テツ──」



ガラス玉の中の瘴気は急激に渦巻くと、少女の姿をかき消してしまった。

そしてしばらくして、すっかりとその中身は空になる。

手を伸ばしても、もうそこには何もない。



「君は本当に誰なんだ……?」



1人でつぶやけども、当然返事などあるはずもない。

確か帝国内でおつかいをしているジャンヌやシバの元にも現れたんだっけな。

でも、その時も何も告げなかったらしいし。

本当に目的が謎だった。



「──あれぇっ!? ご主人、金ピカだぁっ!」



後ろから声がする、そう思うやいなやバサァッ! と。

焼き払われず無事だった木々の向こうから豪快に飛び出してきたのは、フェンリル姿のシバ。

そしてその巨大な背に乗るのはジャンヌやイオリテ、そしてメイスたちだ。



「ご主人のニオイを追って加勢しに来たよ~……って、もしかしてもうぜんぶ終わってる???」



俺の側に着地するなり、シバはそう首を傾げるのだった。


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