精霊の森 "黄金の覚醒"編(9 / 14)
沼から出ると、俺たちがいたのは本当に魔導結界の外だった。
「おおっ……本当に出られた……」
振り返ると、背後にあるのは黒く大きなドーム。
その直径はおよそ20メートルに及ぶだろう大きな魔導結界だった。
「これが、魔導結界か……!」
驚きの声を上げるカジ。
「2000年生きてきて、ワシは初めて見るぞ」
「ああ。俺もコレと合わせてまだ2回しか見たことがない。だけど……強力な術式であることに間違いはないよ」
それはモーフィーとの戦闘経験からも明らかだった。
だからこそ、
「本当にすごいなマヌゥ……俺やクロガネイバラのみんなが、以前どれだけコレに苦労させられたことか」
「そうなのですかぁ? でも、私は特別なことは何もしなかったのですよ?」
キョトンとして首を傾げるマヌゥ。
本当に心当たりなど何もない様子だ。
……まあ、マヌゥなら何ができても『マヌゥだから』で納得できる部分はある。
マヌゥの沼──【
その上、沼に逸脱者が触れればその特殊能力を封じることすら可能だ。
であれば、魔導結界に対しても抵抗する力を持ち合わせていてもなんらおかしくはない。
「まあ、とにかく助かったよマヌゥ。さすがだな」
「は……はぅぅぅっ!」
俺が頭をなでると、マヌゥは見開いた目をキラキラとさせる。
「えへへへぇ、それほどでもないのですよぉ。でも頭はいくらでも撫ででくださいぃ~!」
「よーしよししょい」
「わふわふわふぅっ!」
俺の手のひらへと、自ら頭をこすりつけてくるマヌゥ。
まるでシバみたいだ。
「では、そろそろまた精霊融合といきましょう、テツトさん」
「えっ?」
「忘れちゃダメですよぅ、まだ森の境目で戦っているシバさんたちの援護もしなくてはならないですから──」
マヌゥはそう言うや、正面から俺の首へとその両手を回す。
俺とマヌゥの精霊融合において必要な体液を代価にしての、契約。
「では、いきますよぉ」
キスをするため、マヌゥはチロリとピンク色の舌を出し、その顔を俺に近づけて……しかし。
「ちょっと、いい加減ふざけてるんじゃあないわよ……!」
俺の背から轟く声。
俺とマヌゥはとっさに後ろを向く。
「……えっと、ワシ、何も見とらんよ?」
そこにいたのは両手で目をふさいでいるカジ。
他に誰もいなかった。
だが、先ほど響いた声はカジのものではないのは確かだった。
なにせその声の主は──
「本当に、テツト。アンタときたら休む暇もなく他の女とイチャイチャイチャイチャしくさって……!」
またもや聞こえてくる。
それは女の声だ。
しかもまた、俺の背後から。
……いや、違う。
聞こえてくるのは、直に、俺の背中からじゃなかったか……!?
「ってことはまさか……まさか!!!」
俺は抜く──背中の剣、黄金の剣コガネを。
「コガネ、おまえがしゃべっているのか……!?」
「私以外に、いったい誰がいるってのよ」
間違いなくその刀身から声が聞こえていた。
すると、とたんにコガネの黄金色の刀身が輝き始める。
「さあ崇めなさい、私以外の全ての生命よ」
黄金の光が弾けるように散って、代わりにそこへと浮かんでいたのは、人。
見事な金の髪に金の瞳、そして華奢な体に金のワンピースドレスをまとう美女だった。
「私こそが黄金の精霊、コガネよ」
そう言って、美女──コガネは自らの胸に手を当て、フフンと得意げに鼻を鳴らすのだった。
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