第40話 見える成就

「さすがに人多いなー。」


俺たちは手を繋ぎ、人込みをかき分けながら歩いていた。


「あー、そんで?なんか食べたいモンあるって言ったよな、りんご飴だっけ?」

「リンゴ飴もいいけどね、私的にはブドウ飴がいいな。」

「え?ブドウ飴?!そんなもんあんのか……。」

「そうなんだよ。案外美味しんだよ。」

「へ~、じゃ、とりあえず屋台探して歩くか。」


そうして、屋台を探しながらしばらく歩き、リンゴ飴の屋台を見つけた。


「…お、あそこじゃね?」

「あったあった。」


彩香は嬉しそうに、リンゴ飴と同じように並んでいるブドウ飴を指を差した。


「本当にあんのな、ぶどう飴。」

「何、私が嘘ついてるとでも思ってたの?」

「そんなことないよ。じゃ、買ってくるから、ここでちょい待ってて。」


そう言って俺は彩香のブドウ飴を買いに行った。

気になるし、俺も食ってみるかと思い、二本のブドウ飴を手に屋台を後にする。


好奇心が抑えられず先に一口かぶりついてみた。


(お、ぶどう飴…割とうまっ。いけるいける。)


ブドウ飴の味に感心し、彩香に共感しようとしたがさっき別れたところから彩香がいない事に気づく。


祭りの沿道はいつの間にか花火見物客でごった返していた。

俺は彩香の名前を叫ぶ。


「彩香!!」


だが、無常にも俺の叫び声は見物客の喧騒で打ち消される。

俺は沿道の見物客を掻き分けながら必死で彩香の姿を探した。

しかし、あまりにも見物客の多さに彩香の姿を見つけることが出来ない。

 

俺はスマホを忘れたことを改めて後悔した。

"スマホがあれば簡単に彩香と連絡が取れたはずなのに…なんでスマホを俺は忘れたんだろう。"



その時、花火が打ち上がった。



ドーンッ!パーン!



大輪の花を咲かせる打ち上げ花火。


見物客は空を見上げ、煌びやかに輝く花火を熱心に見ていた。

そんな花火を見ている見物客を掻き分けながら俺は必死で彩香を探した。


"本来なら、彩香と一緒に花火を見ていたはずなのに…なんでこんなことに…。"


俺は高台にある神社の本殿に登ることができる長い石段の場所まで足を伸ばした。

その時、大勢の見物客の中から誰かの叫び声が背後からハッキリと聞こえてきた。


「翔真ー!」


俺は背後を振り返る。

すると、石段の入り口近くに置いてある大きな石の上に座っている汐良せらの姿があった。


「やっと見つけた。ずっと探してたんだから。連絡もつかないし。一緒に花火……。」

「彩香、見てないか?」

「え?」

「さっきまで一緒にいたんだが、はぐれちゃってな。知らないか?」


俺が焦りながらも、そう尋ねると、汐良せらは大きく一つため息をついてどこか悲しそうな顔をした。


「…‥‥上。…上に行くのを見たわよ。早く行ってあげなよ。」



俺は汐良せらのその言葉を聞きくと、感謝を伝え、天まで昇りそうな険しい石段を必死で登った。


すると高台にある神社の本殿の前に彩香が立っている姿を俺は見つけた。

高台から下を見つめた彩香は石段を登って来る俺の姿を驚いた目で見つめている。



彩香の姿を見つけた俺は石段を駆け上がる。


そして、石段の頂上で俺と彩香はやっと出会えた。

俺と出会った彩香は俺に何かを話そうとしたが、何の言葉も出ず、俺はおいでと言わんばかりに両腕を開く。


その中に、彩香が飛び込んできた。

階段を落ちそうになるのを堪え、花火が上がる中、俺は彩香をただ抱きしめた。


「どこ行ってんだよ。まじで心配したんだけど?」

「……。」

「俺も目、離して悪かった。」


ドーンッ!パーン!


「花火、綺麗だな。」

「だね。」


空に上がる花火を見てそんな当たり障りもない感想を言い合う。

彩香の額には変わらず100の数字が浮かんでいるがそんなことは気にならなかった。


そう言えば、彩香と夜空を見ることは多かったよな。

始めて出会った時も……。


「今夜の月は一段と綺麗だね。」


そう思っていると彩香がふとそんなことを言った。


「えっ…?今日は月なんて……。」


今日の月は満月でも、雲一つなく綺麗に浮かんでいる訳でもない。

でも、あの時分からなかったその意味が今なら分かった。


「そうだな。ずっと前から月は綺麗だ。」


その他の言葉は要らなかった。

それから、しばらく花火を見ていた。


「あとで、もっかい屋台見に行くか。」

「ブドウ飴食べたい。」

「ん?ぶどう飴か?あぁ、買ったはず…。」


俺はそう言って自分の持っているはずの手を見たが握っているのは彩香の手だけだった。


「…あ?!ああ、悪りぃ…。彩香探してる間に、落としたっぽい。」

「え!?そんなぁ。」

「…そんな食べたかったのか?」

「うん。」


そんな悲しそうな顔をする彩香に俺は、


「そうだな、じゃあ…これで我慢して?」


そう言って彩香に口付けをした。


ちゅっ。


「どう?ぶどう飴味の、キス。」

「美味し。」


ただただ、上がる花火を静かに見つめていた。

そして、花火もフィナーレを迎え、夜空が静寂に包まれた後、神社に付けられているスピーカーからアナウンスの声が流れてくる。


『本日の花火大会は終了しました。』


そのアナウンスと同時に神社の本殿で花火を楽しんでいた見物客が続々と降りてくる。


それを見た俺は彩香の手を素早く掴み握り締めた。

いきなり手を握られた彩香は驚いた顔で俺を見つめていた。

俺は顔を赤らめながら彩香に話す。


「また…はぐれたら困るから…それにこの石段、急で危ないから…。」


俺の言葉に彩香は静かにうなづく。


「うん。」


そして俺は彩香の手を握り締めながらゆっくりと石段を下った。




★★★★★




この度は


「LOVE GLASSES ~俺への好感度が0の彼女と別れたら、学校のマドンナ達が言い寄って来た。~」


を読んでいただきありがとうございます!!!!

ついに夏祭りにて彩香と、翔真が結ばれました!!


続きが読みたい!など思った方はぜひ、★やコメント、♥などを押していただけると嬉しいです。


みっちゃんでした( ´艸`)



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