神Xの殺し合いに選ばれたプレイヤーたちのデスゲーム日誌

愛花

第一章

 閑静な住宅街の寝室に顔面が吹き飛ばされた高校生の死体が横たわる。血に染まった脳みそが飛散した現場は、惨烈な状態であった。


 長身で筋骨隆々な警視庁捜査一課の玉木賢治(たまき・けんじ)警部(41歳)は、被害者の少年に歩み寄り、屈んで手を合わせた。


 「次から次へと……何故こんなにも被害者が……」


 血が苦手な田中正信(たなか・まさのぶ)刑事(24歳)は吐き気を催し、口元を手で押さえる。


 「またですね」


 「おい、ゲロ吐くなよ」


 「は、はい」若手刑事の田中は血が苦手。弱々しく返事する。「……。この事件、ネット上では『X』って云うリアリティー・バトル・デスゲームに何らかの形で関わってしまった『リアル・プレイヤー』だって言われてますけどね」


 荒唐無稽の馬鹿げた話に苛立ちを覚え、玉木は声を荒立てた。


 「大勢の人が亡くなってるんだぞ! ふざけたことを言うな! お前も刑事だろ! 現実的なことを言え! くだらんネットを見てる暇があるなら、聞き込み捜査でもしろ!」

 

 玉木の怒号にビクリと身を強張らせた。

 「……はい。すいません」

 (オレ、ふざけてないのに……本気で言ったんだけどな……)


 火薬等の爆発物が一切ない場所で顔面を吹き飛ばされた遺体や、体の一部が欠けて出血多量で死亡した遺体が全国各地で発見される怪奇事件が起きるようになってから二年の月日が経過した。


 警察でも手がかりすら掴めぬ状況が続いている中、五年前に発売された賞金を懸けて闘う『X』がリアリティ版になった、と現実離れした噂がネット上で飛び交うようになった。


 『X』とは、各ステージごとに設定されたデスゲームをクリアし、プレイヤー同士のデスマッチ戦なども用意されたスプラッター要素を含んだバトル・デスゲームなのである。


 そしてこのゲーム内で執行される処刑が、人間爆破や体の一部を消されるなどこの怪奇事件と似ていることから、そのようなオカルトめいた噂が広まったのだ。


 因みに、現在『X』は廃盤となっており、販売元のゲーム会社も倒産している。


 事件の謎が一つも解けない状態が続き、全国の行方不明者数と被害者の死体ばかりが増えていく―――


 玉木は焦燥感に駆られ、眠れぬ日々を過ごしていた―――




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