第17話「謳え!あやかし人生」

「ん、んん〜......」

界が布団の中でもぞもぞと動く。

朝は弱く、なかなか起き上がれない。

すると。

「いつまで寝ておる貴様!!早く起きぬか!!」

「うわっ!?」

篝丸の声がして、界は飛び起きた。

が。

「......篝丸はおらん、よな...」

丸い目をぱちくりと瞬きさせ、頭を掻く。

先程の声は夢の中の篝丸だった事に、今気付いた。

界達の朝が、今日も始まった。


「.........」

ぼーっとしながらトーストを頬張る界。トーストに塗ったバターが溶け落ちそうになっている。傍らにはしゅんとしたどこか物悲しそうな海舟が、タコさんウインナーを見つめて齧っている。

「........今日さ、夢に篝丸が出てきたんだよな」

その横で勇斗が、コーヒーを飲みながら静かに言う。が、空気が気まずくなりそうだと察知したかのように、すぐに別の話題を出した。

「えーっと.....今日も学校だな。四限目までしか授業ないから楽だしよかった」

「...そうだお」

「せやなぁ」

全員ぼーっとしながら朝食を食べている。

篝丸がいなくなってから、一日が経過した。

あれから篝丸はどうしているのだろう。どこにいるのだろう。何を思って過ごしているのだろう。

それを考えない時間はない。界も海舟も勇斗も、全員心のどこかで篝丸の事を考えていた。

と。

ピンポーン。

突然、家のインターホンが鳴る音が聞こえた。

「はーい。...誰だろ」

勇斗が玄関に向かう。ドアの奥に何人かいるのだろうか、何やらうっすらと話し声が聞こえる。

「はい、どちらさまで......あっ」

「よう勇斗。迎えに来たぜ」

ドアの向こうには、冬服である長袖の制服を着た永人、そして善ノ介と知与がいた。

「えっ、もう学校の時間?おかしいな、まだ時間余裕あったはずなのに...」

焦り出す勇斗。今日はいつもより早く目が覚めて、いつもより早く朝食を食べていたはずだ。

「あ?何言ってんだよ、今日は学校行かねえよ」

永人のその言葉に、勇斗は目を丸くした。

途端、永人は真剣な眼差しになって言う。

「篝丸についてだ。外で待ってるから、飯食い終わったら来い」

「.......!うん」

勇斗の胸が鳴った。


朝食を食べ終えた四人が外へ出る。

界は善ノ介がいる事に、海舟は知与がいる事に驚きを隠せなかった。海舟は知与に会えてどこか嬉しそうだった。

「ていうか、なんで永人が篝丸のこと知ってるんだ?」

「あ?てめえが昨日の夜いなくなったって連絡よこしたんだろうが、忘れたのかよドジだな」

「あ...そうだった」

六人並んで歩きながら、勇斗と永人が会話する。

「で、なんでみんなして来てくれたんや?」

界が善ノ介を見上げて言う。善ノ介は眼鏡のブリッジに手を当てながら言った。

「勿論、鬼羅君を探す為だよ。いる場所が分かれば話して和解し、引き止められるかもしれないからね。でもキミ達と三傘君だけじゃ困るだろう。そこで妖怪であるこの最高のワタシ、善ノ介と」

「霊感があるあたしがいたら、少しは力になれるかなと思ってね」

善ノ介の背中からひょこっと顔を出す知与。界はそんな二人を見て目を輝かせた。

「さすがやな善ノ介〜!知与ちゃ〜ん!おおきに!.....ところでもう一回聞くけどお二人さんってどんな関係なん?」

「.....今は恋人だけど、何かおかしいかい?」

「こっ.........!!?嘘やん...お幸せにな......」

善ノ介のまさかの答えに界が白目を剥いて驚く。

善ノ介達のお陰でいつもの調子に戻りつつある界に、勇斗は微笑ましく思った。そして隣の永人に顔を向けて問いかけた。

「で、永人はなんで来てくれたんだ?」

「それは俺が篝丸の親友だからに決まってんだろ!」

ガッツポーズをしながら言う永人。しかし、前を向いて真剣な表情を浮かべる。

「篝丸の親友として、何が何でもぜってぇ止めてやる。そしてまた親友として一緒に遊ぶって決めてんだよ」

その横顔を見て、勇斗は頼もしく思った。

「...ああ。必ずみんなで篝丸を止めよう」

そう言って、六人は駆け出した。


篝丸がいそうな場所を、全員で探し回った。

駅の近く、嘗て来たカラオケ、水族館、その他来た事の無い店、施設、ジム。

しかし、どこを探しても篝丸はいなかった。

「篝丸、どこにいるんだお〜?」

「くそっ、どこ探してもいねえ...」

海舟と篝丸がへとへとになりながら呟く。既に沢山の場所を歩いているので、身体的にも精神的にも限界が来ている。

「もう諦めるしかないんかなぁ...」

界が弱々しい声を上げた時、知与があ、と声を漏らした。

「一番大事な場所忘れてるよ、学校」

「.....あ!それや知与ちゃん!!やるなぁ!」

知与の優れた記憶力に、界はぱあっと明るい顔になる。

全員で学校へ向かった。


学校に着く頃には、もう昼になりそうな時間帯だった。

今日は午前授業だったので、学校にはもう生徒達はいないはず。

下駄箱で上履きに履き替え、界は顔を上げる。

「先生に見つからんようにして行くで」

界の合図で一斉に駆け出した。

「なんか秘密探索みたいでわくわくするお」

「委員長なのにこんなことして、少し背徳感あるなぁ」

海舟の言葉に微笑みながら言う知与。

全員は一階、そして二階をくまなく探すも、篝丸は見つけられなかった。

三階へ行くと、職員室が近いのか、教師達の声が聞こえる。

「しゃがんで行くで」

小声で言う界の指示に従い、全員体を屈めて移動する。が、善ノ介は大柄な体格なので体を屈めても上手く小さくならない。

「天飛くんもっと屈んで、ほら...」

「無茶を言わないでくれるかい崇田さん...」

善ノ介の背中を後ろから押す知与に、善ノ介が窮屈そうな声で呟く。

しかし、三階にも篝丸はいなかった。

「こうなったら...最後の手やな」

界がキラーンと目を光らせて言う。

と。

「先生すんまへ〜ん!今日だけは許してや〜!」

立ち入り禁止の屋上へ、一斉に猛ダッシュで駆け上る。

界達は教師達に申し訳なく思いながら、しかしながらほんの少しの背徳感を楽しんで上った。

屋上へはすぐ着き、視界が太陽で真っ白になる。


屋上に出ると、一人の人影があった。

「あ...篝丸!いた!」

勇斗が叫ぶ。そこには篝丸が、屋上から街並みを見渡して立っている。

「篝丸〜っ!」

海舟がぴょんと飛び跳ね、篝丸に近づいて行く。

が。

「こっちに来るでない!!」

篝丸の鋭い叫び声に、海舟はびくっと体を跳ねさせる。

「なんてこと言うんだよ!!海舟こんなに喜んでんじゃねえか!」

永人が怒りながら近付く。が、篝丸は辛そうな顔をして叫ぶ。

「貴様のような人間には関係無い事だ!!」

「てめえ.....関係ない、って...おい.....」

永人が呆然と立ち尽くす。それから目に涙を溜めて大声で言う。

「おい!!俺たち親友だろ!!なぁ!!」

篝丸は揺るがぬ紅い瞳で、永人と海舟を見つめる。そして、ゆっくり口を開いた。

「我は人間界に来られて良かったと思っている。今まで楽しかった、もう悔いは無い」

「悔いはありません、か。それは何よりです」

と、突如篝丸の隣に月代が現れる。

「お迎えに参りましたよ、篝丸さん。さあ、行きましょうか」

月代が言うと、紫色と黒色が混ざったゲートのようなものが開く。

篝丸はゆっくりと足を進める。

「待ってや!篝丸!」

界が叫ぶ。が、篝丸は振り返らず足を止めない。

「篝丸!!!」

その時。

シュルル、と大きな黒い蛇が足元を這ってやって来て、篝丸の両足に纏わりついた。

「なぬ......!?」

「この蛇、まさか.....」

界が声をあげる。すると。

「友達を取り戻そうとしてるのかい...はは、いいね。みんな仲良しだね」

後ろからゆったりとした低い声が聞こえた。

界達が振り返るとそこには。

「わあ!私方先生や〜ん!」

私方が立っていた。

気付いた界はぱあっと明るい表情になり、嬉しそうな声で言う。

「この前はありがとう九尾くん。お礼に協力してあげるね」

私方はマスクを顎にずらして、二つに分かれた舌をちらりと出して言う。

私方は片足を立てたままゆっくりとしゃがみ、床に左手をついて囁いた。

「おいで、黒蛇」

すると次の瞬間、無数の黒い蛇達が集まった。

うねうねと体を這わせ、篝丸の元へと一斉に集まる。

「私方先生もまさか妖怪だったのか...!?」

「話はあとや!巻き込まれんように逃げな!」

驚く勇斗に界が声をかけ、後ろに下がる。

黒蛇達は篝丸の周りに這い回り、足や体をきつく縛りつけた。

「ぐッ...ヌゥ......うねうねと気色の悪い...!」

もがき苦しむ篝丸に、善ノ介が大きな声で伝える。

「鬼羅君、九尾君達はキミを引き戻そうとしているんだ。この意味、分かるね?」

篝丸は苦しそうな表情をし、全身に力を入れる。

「そんなの.....分かるわけがないわ!!!」

と、腕に巻きついていた黒蛇達が一斉に弾かれ飛び散る。このままでは足元の黒蛇達も弾かれてしまう。

このままでは。

「あーはいはい、これが仲良しごっこってわけだね」

と、頭上から声が聞こえてくる。

界達が上を見ると、バサバサと羽を広げる音が。

「やあ、久しぶりだね界。元気だった?」

「おまえは...!ヒューゴー!」

界が笑顔で名前を呼ぶ。

ヒューゴーは、羽もツノも尾も全て生えた悪魔の姿で、首を傾けながら笑って宙に浮いている。

「安心しなよ。ヘビたちにはぼくが催眠をかけて篝丸ってやつを敵だと思わせておいたから、そう簡単にはやられないよ!いわゆる先生との連携プレーってやつ?」

「ふふ...上手いこと言うね、アダムスくん」

ヒューゴーの言葉に、私方が笑って感心する。

弾かれた蛇達は、再び篝丸目がけて飛びつき、ぎゅうと腕を強く絞めつけた。

「ぐッ........!」

「篝丸!わいらは...わいと海舟と篝丸の三人で一つや!三人でずっと一緒におるって昔約束したやん!」

界が大声で言う。昔の出来事を思い出しながら、ありったけの思いを伝える。

「それだけやない!勇斗に永人、善ノ介に知与ちゃん、ヒューゴー、永人の兄ちゃん、先生たち!この人間界のみんなもわいらと繋がっとるんや!!だからおまえもこっちに来い、篝丸!!」

「そんな事...!!」

「篝丸!!!」

篝丸の言葉を、海舟の悲痛な叫びが遮る。

篝丸が、目を見開いて海舟を見る。

海舟が、篝丸を見つめて泣いていた。

「篝丸はもう忘れちゃったお?前に水族館に行ったとき、また今度二人でいろんなところに行こうって約束したの、忘れちゃったお?そっちに帰っちゃったら、篝丸がいなくなったら、海舟は誰とおでかけしたらいいんだお?」

声を震わし涙ながらに言う海舟。啜り泣きながら続ける。

「篝丸は海舟たちが嫌いだお?嫌いだから一人になろうとするお?もし海舟がしつこかったら、しつこくならないようにちゃんと気をつけるお。もし気に入らないことがあったら、ちゃんと直すお。だから...」

海舟の目から、大粒の涙が流れる。

「だから嫌いにならないで、そばを離れないでほしいお...!!」

篝丸の胸がズキンと強く痛んだ。

ああ、また泣かせてしまった。

自分はまたこの子を泣かせてしまったのだ。

篝丸は目を見開いたまま、膝から崩れ落ちる。

黒蛇達は、状況を察知してうねうねと這い回って去っていく。

「...篝丸さん、行きますよ」

「.....は........れは......」

篝丸の肩にそっと優しく手を添えて言う月代。が、篝丸が何か呟いている事に気付いた。

「我は......今いる仲間と、友が好きだ......嫌だ...皆とっ、離れだぐない......!!皆と一緒にいだいっ......!!」

涙と鼻水を流して泣きじゃくる篝丸。月代はそっと篝丸の肩から手を離し、ふうと息を吐いた。

「...どうやら答えが出たようですね。分かりました」

そう言って月代は篝丸の元を離れ、界の元へと歩み寄った。

「ん?なんやお姉さん?」

「こちらは「完人薬」、完全に人間になれる薬です。人間の姿になっても妖怪としての特性は残り、体を変化させたら妖怪の姿にも一瞬だけ戻れます。ちょうど三人分入っていますので、一人一錠、お飲み下さいね。それから...」

月代は言い終えると、界に顔を近付け耳元で呟いた。

「私は男ですよ?フフ...」

「なっ!?」

ぽっと顔を赤くする界を見て月代は楽しそうに微笑み、ゲートのようなものの中へ入っていく。

「それでは、ありがとうございました」

そのゲートは、月代が入っていくとすぐに消えた。

晴れやかな空。屋上には界達と私方が、そして宙にはヒューゴーが浮いている。

「篝丸〜!」

と、涙で顔が濡れている海舟が篝丸の元へ駆け寄り、ぎゅっと力強く抱き締めた。同じく涙で顔が濡れた篝丸は、抱き締められて頬を赤らめる。

「よかったお〜!ここに残ってくれて!」

「お......ああ...。.....そうだ、海舟」

ゆっくり体を離す海舟に、篝丸が思い出したように口を開く。

「な〜に?篝丸」

瞬間、篝丸は大きな手を海舟の肩にぽんと置き、赤くなった顔を向ける。

「さっきはすまぬ、ありがとう。海舟の言葉で、色々な事を思い出したし気付く事が出来た。感謝しておる。......それと...」

言い終えて、恥ずかしそうに下を向く。

「お前を泣かせてしまった事、謝りたい。すまぬ。もう絶対に泣かせないと誓おう。だから......」

そして顔を上げ、海舟の目を真っ直ぐ見つめて言う。

「だから、我の恋人になってくれぬか...!」

言い切った篝丸。

その顔は湯気が出そうな程真っ赤で、耳まで赤くなっている。

と。

「.....う、っ.....ぐす.....」

海舟の目からぽろりと涙が溢れる。篝丸はそれを見て激しく動揺する。

「ヌゥ!?す、すまぬ!泣かせるつもりなど微塵も...!」

全身から汗を吹き出して言いかける篝丸に、海舟が抱きつく。

「嬉しくて涙が出たんだお!海舟は篝丸の恋人になるお!」

嬉しそうに言う海舟の言葉に篝丸は微笑み、ぎゅっと抱き締める。

と、そこへ。

「お〜?アツアツですやんお二人さ〜ん」

界がにやにやしながらやって来る。

篝丸は海舟を守るようにぎゅっと抱き締めながら顔を赤くして言う。

「かッ、界!!そ、その.....昨日とさっきは本当にすまぬ.....。申し訳無いと思っている...」

自信なさげに謝る篝丸に、界はにんまり笑って肩を叩く。

「なんや〜?突然素直になってかわええやっちゃな!これからもずーっと一緒にいてくれるなら許したるわ!」

「.......ああ」

界の言葉に篝丸は頷く。と、そこへ。

「篝丸うぅぅ...!!てめえ向こう帰らなくてよかったぜ...!心配させんなよバカぁっ、俺たち親友だろぉ...!もうぜってぇ俺たちの前からいなくなろうとすんなよなぁ...!」

「永人...すまぬな、ありがとう」

と、ぐちゃぐちゃに泣いた永人が篝丸へとびかかる。篝丸は海舟を抱いたまま、片方の腕で永人を抱きとめた。

界が、ふと空を見上げる。

空にはもう、ヒューゴーはいなかった。

界達から少し離れた所で、青い空を見つめる私方と勇斗。

「で...先生本当に妖怪なんですか?その...やっぱりヘビ系の...」

勇斗が、おずおずと興味ありげに聞く。

「ん...ふふ、そうだよ。みんなに内緒にしておくつもりだったけど...今回の事があったんじゃ仕方ないな」

と、私方はマスクを直しながら言う。

少なくとも今回の七人には、蛇人間である事を知られてしまった。だが私方はそれで良いと思った。

一方、皆から更に離れた所で街を見ている知与と善ノ介。

白いフェンスに片手を掛けて、どこまでも広がる街を、ただ二人で眺めていた。

「一件落着でよかったね」

「ああ、本当に良かったよ。鬼羅君も九尾君達と和解出来たみたいだしね。さっきも三人で何やら楽しそうに騒いでいたがね、全く呑気な人達だよ。とにかく全員無事で何よりだ。ま、今回の件はワタシ達のお陰でもあるね」

知与の一言に、いつものように一息で返す善ノ介。

二人は黙り込み、街を見る。

ゆったりとした平穏な空気が流れる。

と。

「達って...あたしも入ってる?」

知与が思い出したように言って善ノ介を見上げる。

自信家な善ノ介は普段は「ワタシ」だけのはずなのに、どうして「達」をつけたのだろう。

黄緑色の丸い瞳が善ノ介を見つめている。善ノ介は灰色の細い目で知与の瞳を見つめ返した。

と、不意に善ノ介が上体を屈めて顔を近付け、知与の柔らかな唇に触れた。

3秒間。唇同士の触れ合う小さな音が、二人だけの鼓膜に響いた。

善ノ介はゆっくりと唇を離して、知与の丸い瞳を見つめる。

「さあね、好きに解釈すると良いさ」

その返答と柔らかな声音に、知与は顔を赤らめながら擽ったそうに笑った。

「...うん、ありがとう」

爽やかな風が、ふわりと髪の毛を揺らす。

長い時間が今、漸く過ぎたような気がした。


翌日。

青い空。海の音。鳴り響くチャイム。

今日も一日が始まった。

「おっはようございま〜す!遅刻遅刻〜!」

「界!待たぬか!!廊下は走らぬのが"まなー"というものだろう!!」

「主様!篝丸!待つんだお〜!」

物凄い勢いで駆けて行く界の後ろを、篝丸と海舟がこれまた物凄い勢いで追いかける。

「界達はっや.....」

「ったく、朝っぱらから元気な奴らだぜ」

さらにその後ろを、勇斗と永人が歩いて行く。

界は教室のドアを開けると、勢いよく挨拶をした。

「おはようさ〜ん善ノ介!知与ちゃん!」

「あ、おはよう九尾くん。今日も変わらず元気だね」

善ノ介と知与が窓辺に立って話していた。界に気付いた知与は、優しい笑顔で界に手を振る。

「おはよう、そして声が大きい。相も変わらず最高なワタシは今崇田さんと話していたんだ。その大きな声だと会話が掻き消されてしまうじゃないか。周りの事も考えて声量は調節した方が良いと思うね」

「も〜ええやんそれくらい!許してや〜!」

そう一息で話して眼鏡のブリッジに手を当てる善ノ介。

界はそんな善ノ介の隣に行き、ぴとっとくっついて肩をぽんぽんと叩きながら言う。

と。

「九尾くんたち、おはよう。もうすぐホームルーム始めるよ、席着いてね」

いつの間に教壇に立っていた私方が、界達に優しく呼びかける。

「にひひっ、はぁ〜い!」

笑いながら返事をして、界達は席に着く。

界達は今日も楽しい一日を謳歌する。


あやかしの「人生」を。

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