第19話 徳川の闇
織田水軍 海上制圧
予想通り毛利水軍は織田水軍の新型鉄甲船に歯が立たず壊滅状態、また地上でも秀吉の積極的な攻撃で砦を無くした毛利軍は動きが無くなっていた。
豊臣秀吉
… 海上を制して織田軍の勝利は、ほぼ確実になった、これで半兵衛の病は回復するだろうか …
療養中の半兵衛が秀吉の下にやって来た。
「失礼します」
「半兵衛!どうした、こんな所まで体に障るぞ」
「いえ、私はもう助からない…魔物を相手にして犠牲が私だけなら安いもの…」
「…しかし、このままなら織田の勝ち、魔物の呪いは解けるはず」
「自分の体は自分が一番よく分かります、あと2、3日もつかどうか… だが、私は武士として死にたい…戦場こそが武士の死に場所にふさわしい…」
半兵衛が回復する気配は無い…もう駄目だろう…秀吉はせめて本人の思い通りのしてやろうと戦場復帰の許可を出す。
「…お前がそうしたいのなら、そうすれば良い」
「…今の状況は?」
「今回の作戦はすでに終盤だ、半兵衛が居ない間に多少の変更はあったが、後は村重を逃がすだけだ」
「…逃がす?村重様は織田に戻すのでは」
「予想より織田水軍の鉄甲船が早く出て来て毛利水軍は壊滅… 恐れをなしたのか、毛利の腰抜けが攻めてこない、そこで村重には毛利に亡命してもらう事にした、毛利輝元の腰抜けを鍛えてもらうためにな」
「なるほど、さすが秀吉様、状況に応じて最善の策です」
「そうだ、毛利輝元を丸め込めば幕府も自然と手に入る… もっとも村重の毛利亡命は光秀の策だが、光秀が幕府の事まで頭に入れてたかどうかは分からんがな… この後の作戦は、頼むぞ半兵衛」
「…この命が尽きるまでに魔物を倒したかった…」
「弱気な事を言うな‼ 必ず倒すぞ」
ガハッ ドバドバッ!
半兵衛が血を吐いた
「しっかりしろ、まだ魔物を倒して無いだろう!」
「くっ…まっまだぁ死に…くっ…たく…無い…」
「そうだ‼まだ死なせんぞ、魔物退治はお前の仕事だ‼」
「無念です秀吉…様…魔物をっ…殺してくっ…だ……かなぁ…らず」
気を失った半兵衛だが青白い顔はすでに死体のようだ…秀吉は、もう助かる見込みの無い半兵衛を本陣に寝かせるよう家臣に命じた、望み通り戦場で死なせてやるつもりだ。
二日後、半兵衛は死んだ
… 半兵衛、お前の死は無駄にはしない、信長は必ず殺す…半兵衛よ、お前のお陰で俺に、新たな目標が出来たようだ …
秀吉は、半兵衛の死で信長を殺す難しさを改めて痛感したが、それと同時に胸踊らせるワクワク感に身震いしていた…
どす黒い渦に満たされた秀吉の心は邪悪に満ちていた。
【徳川家の闇】
三河国徳川領では家臣達が、家康に対する不満から嫡男の徳川信康を担ぎ出した岡崎派が謀叛を企み暗躍していた…
その謀叛を嫡男信康を使い影で操る徳川家康の元正室
〝築山殿〟
14才で家康との政略結婚、嫡男信康を産む… だが家康が今川との同盟を破棄して織田と同盟を組んだため両親は自害に追い込まれ、今川と手を切った家康に築山殿は離縁される…
戦国の流れに翻弄された女の心は闇で満ちていた。
築山殿 邸
「いつになったら家康を殺すのだ‼」
ヒステリックな築山殿をなだめる石川数正…
「焦りは禁物です… 今、徳川は浜松派と岡崎派に二分してますがまだ時期尚早、築山殿も家康暗殺を決して悟られないように振舞い下さい」
石川数正は家康を殺害した後に、浜松派と岡崎派に二分した徳川をまとめたいと思っている…
その為には無理の無いトップの入れ替わりが大事…
石川数正は家康を他国の間者による暗殺と見せ掛けて殺し、葬儀の喪主を嫡男信康に勤めさせ、そのまま徳川の当主に信康を就かせる計画だ。
岡崎三奉行 石川数正 邸
石川数正の計画に加担する岡崎三奉行の天野康景は、あと二人の奉行 本多重次と高力清長を家康暗殺に巻き込もうとしていた。
本多重次
「家康様を追放しても信康様を擁立すれば浜松派を抑え込めるな」
高力清長
「それに、築山殿と信康様が居れば信長と何時でも手を切れる…」
天野康景
「……」
考え込む天野を見て本多重次が尋ねる…
「どうした…?
天野殿なにか気になる事でも…」
天野康景
「あの家康様が、追放されたぐらいで隠居するでしょうか… 機を見て報復に来るのでは」
本多重次
「……」
高力清長
「…裏で信長と繋がる可能性もあるな、あの二人は国同士の同盟の前に人としての同盟だ…」
本多重次
「織田が家康と攻めて来たら不味いな… だが、その前に武田と同盟を組めば織田も簡単には手を出さないだろう」
天野康景
「武田が同盟に出す条件は足元を見られ屈辱的な物になるはず…やはり家康様は殺すべきです」
家康は殺害すると言う事で岡崎派がまとまり出そうとしている。
徳川家康 居城
人目を避け浜松城にやって来た酒井忠次は徳川家康と密会していた。
徳川家重臣 酒井忠次
「やはり、信康様と築山殿が謀叛を企んでいるようです」
徳川家康
「あの出来損ないが‼ 大人しくしてれば生かしてやったものを、愚かな…」
「しかし、後ろで糸を引いてるのは築山殿です、信康様は本心では無いと思われますが…」
「母恋しい子供じゃあるまいし、だいたいあの傍若無人な信康が親の言いなりになるか?」
「それは… 親の言いなりになるなら、家康様に逆らうはずがないと…」
「そうだ、出来損ないが家臣に担がれ図に乗った、これは信康の野心だ… 放って置けんな」
「謀叛の証拠を突き付けて出家させては…」
「謀叛を企む時点で私を殺すつもりだ、出家させられる位なら決起するだろう」
「まさか実の父の家康様を…」
「常日頃からの信康の残忍さが物語っている」
信康は気性が荒く気に入らない事があると平気で民や家臣を殺しては、家康に咎められていた。
「事を荒立てる前に、信康を処刑しろ…」
酒井忠次は、実の子でも処刑する家康の非情さに畏怖した。
「…よろしいのですか」
「もとより信康に徳川を継がせるつもりなど無い、あれは器量不足だ… 死んでもらおう」
「…しかし嫡男を処刑するとなると、内外的にも何かしら納得のいく理由が無いと…」
「そうだな…徳川の内情に不安があると思われるか…」
「そうです… 他国の調略などの工作や侵略の切っ掛けになりかねません」
「民や家臣の信康に対する反感では処刑の理由には、弱いか… 何か無いか?」
「…信康様と築山殿は、徳姫に嫡男が生まれない事で揉めてます…織田家長女の徳姫を利用して織田家から理不尽な要求をされる様に仕向ければ…」
「…織田か、姉様ならやりかねんと世間は思うはず…なんせ姉様は世間で大魔王と恐れられてるからな…上手く仕向けられるか? 余り時間も無いぞ、謀叛が表面化しない内に頼む」
家康は、他国にはあくまで信長の命令で御家を守るためやむ終えず嫡男を殺すと言うシナリオを進める。
竹中半兵衛Wikipedia
松平信康Wikipedia
築山殿Wikipedia
信長公記参照
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます