第27話
ぽこん。
真中と裸で、くっついた。
彼が目を見張る。
「真中、ってじょ、男子?」
キスまがいの件もある。
私はあのフリーターを嫌悪する時のような仏頂面で、彼の理解とメッセージの反応への消化を待つ。
「なんでそんなことになるの」
「わからない。暑くて、はしゃいでて、子供みたい服を脱いで、」
それからは言えない。
「浮気した、ってこと?」
「わからない」
これは浮気なの?でも、と言葉を続ける。
「せっくす、したわけじゃないの」
席は予め一番奥の角にしてもらっていた。
呟く。
彼はスマホをテーブルに置き頭の後ろで両手を組んだ。
飲み物が届く。どうぞ。
メロンソーダ、フロート付き、そして、
真っ赤なチェリーヘタ付き。
「高いの頼んでくれたの?」
彼に聞く。
「払うから気にしなくていいよ」
気まずくなりたくなくて、ストローいただく。
チェリー、童貞。チェリーボーイ。
最近私はなんか変だ。性についての蓄えた漫画での用語もこれまで映画やドラマ他の媒体で得た知識も全部ごっがえしで。それでも講義は受けられる。バイト先ではお客さんと会話もできる。それでも頭の中は艶めいた下品なことばかり。
「アリア」
「イントネーション」
私はアリアのさいごのアは上向きの発音で、在有は下がると思っている。そうじゃないと私の中では、娼婦のアリアなのだ。娼婦がいけないわけじゃない。でもこの先、奨学金が返せなかったら?
ニュース番組で奨学金返済に悩みパパ活、いわゆるP活をするモザイクの、可愛らしさと清楚が混じった服を着た女性のインタビューが頭をよぎる。
「今何を考えてるの」
「色々」
先がスプーン状になったストローでアイスクリーム掬い、口に運ぶ。朝の糖分とはこんなに染み渡り、気持ちのいいものなのか。
彼はコーヒーにたっぷりミルクと砂糖を入れる。
「真中はブラックだった」
呟く。彼が少し反応して。
「その人の事が好きになったの?」
私は眉間に皺を作り大きく首を振る。擦り付けられた事、もう耐えられない。貴方とだってできないかも。赤い食紅で漬けられただろうチェリーを、私は大切にしようか、今すぐ食べて紙ナプキンに種を出そうか、そんなことをよぎらせながら。
「あなたと別れたくない」
ドラマのセリフのような本心を語る。
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